心傷配達屋

揺光―yurahikari―

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心傷配達屋

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     何となく見上げた空に、どこからか飛んできた桜の花弁が舞っている。今日の空は雲ひとつなく、春というよりまるで夏の晴天のように透き通っていた。
    のんびりと歩く通学路は同じ学校へ通う生徒で溢れ、まだ大きな制服を持て余している新入生や、義務教育も最後の一年となり気の引き締まった受験生が同じ方向へ進んでいる。
    唯は小さく欠伸をしながらそんな人の流れに紛れ歩いていた。
    
    学校の正門に辿り着いたところで、唯は足を止めた。

    正門を入ってすぐの桜の木の下に、明らかに中学生ではない少女が立っている。小学五、六年生といったところか。小柄な体に薄黄緑色のワンピースを纏い、肩ほどまでの髪が風に靡いていた。
    他の生徒は気付いていないのか、それとも興味が無いのか、まるでその少女がそこにいないかのように通り過ぎていく。少女はふと顔を上げ、振り向いた。
──唯と、目が合う。
    少女は一瞬驚いたような顔をして、すぐさま満面の笑みはと変わる。まるで親しい人を見つけた時のように、嬉しそうに唯へ駆け寄ってきた。
「唯!」
「え……?」
    少女が自分の名前を知っていることに、唯は驚愕する。そして不思議なことに、会ったことの無いその少女が、酷く懐かしく感じた。
「あなたは、日坂唯?」
「そうだけど……あなたは……」
「やっと、やっと会えた……!」
    唯の言葉も聞かず、少女は無邪気に喜ぶ。こちらまで駆け寄り、正門の真ん中で飛び跳ねている少女に、相変わらず他の生徒は見向きもしない。
「ねぇ、私の話を聞いて!こっちへ来て!」
「え、ちょっと待っ──!」
    少女に腕を引かれ、唯も慌てて駆け出す。小さなその子に連れてこられた場所は、人気のない校舎の裏庭だった。
「よし、ここならゆっくり話せる!」
「ねぇ、あなたは本当にどこの誰……?」
    急に走ったことで乱れた息を整え、先程スルーされた問いを繰り返す。少女はパッと笑った。
「私はミユ。あなたにお願いがあって来たの」
「ミユ……ちゃん。初対面だよね、それなのにお願いって……?」
    訝しむ唯とは反対に、ミユの明るい表情は崩れない。唯の手を取ると、やはり嬉しそうに笑った。
「私、ずっとあなたを探していたの」
「私を?」
「心傷配達屋の仕事を、あなたに引き受けて欲しい」
「心傷……配達屋……?」
    聞き慣れない言葉なのに、すっと耳に入ってくる。ミユは唯の手を強く握り直す。
「あなたはきっと、誰よりも向いているから」

    気付けばそこには、小さな郵便局が建っていた。
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