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小さな郵便局
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心に深い傷を負い、それを消したいと思う者の前に現れる案内人がいるという。その案内人に出会いついて行くと、小さな郵便局へ辿り着く。それはどこにでもあるような郵便局ではない。
『伝えたいもの』を『伝えたい人』へ配達する。
それが、心傷配達屋──その郵便局の役割だ。
先週、その郵便局に新しい局員が入った。案内人が適性のある者を探し出し、働いてくれるよう頼むのが郵便局の仕組みだ。
そしてその局員は新人にして、心傷配達屋の唯一の局員だ。
「ねぇねぇ、今日は水色と黄色どっちがいいかなぁ?」
「うーん、水色の方が似合う気が……って」
局員、唯は嘆く。
「夢じゃないよね!?」
先週、心傷配達屋の案内人であるミユと出会った唯。出会うなりいきなり勧誘されたのだが、誰だってまずは説明を聞いてから働くものだろう。
突然現れた謎の小さな郵便局の中へ案内され、見学させられた。そして、現在局員は一人もいないこと、ミユは案内人としての役割を果たすうえに不便なので、案内すると決めた相手以外には姿が見えないことを知った。
いきなりの事でもちろん唯の頭はパンクし、混乱もした。そんな唯にミユは言った。
『心傷配達屋は、自分の心の傷と向き合いたい人に、向き合うためのお手伝いをする場所なの』
当然唯は戸惑った。朝から知らない少女に知らない場所に案内され、ここで働いてくださいと勧誘される。きっとその日地球上で一番頭が混乱していたのは唯だろう。違いない。
最初は断ろうとしたが、出会った時から何故か懐かしい感じがするミユの存在は、不思議と唯には離れ難いものだった。
結局訳の分からないまま働くことになったのだ。既にその日から三日経っている。
「一体私ここで何をすればいいんだろう……」
唯は未だにこの郵便局での自分の役割を掴めていない。郵便局も案内人と同じらしく、案内する相手以外には見えず、空気のように触れることも出来ないらしい。しかもその中では時間が止まっているので、通常の生活には全く困らないと言う。
「とにかくミユちゃんが案内してきた人の話を聞いて、その人の伝言とかを、伝えたい相手に届ける……って事だよね?」
「そうだよ!」
「でも今は仕事ないんだね」
「すぐに案内できるわけじゃないから」
水色のワンピースを着たミユが無邪気に窓の外を眺めている。
「心に傷のある人皆を案内出来たら、誰も悲しい思いなんてしないんだよ」
「そうだよね……確かに」
唯はこのドタバタの三日間で幾つかわかったことがある。一つは、今自分が置かれている状況は、誰にも話さない方が良いということ。話せばきっとたくさんの人が唯に詰め寄るだろう。誰にだって傷はあるのだ。
そしてもう一つは、ミユは見た目に反し中身が少女ではないということ。たった今のように、幼い見た目からは想像のつかない寂しげで大人びた表情を見せることが多い。行動は無邪気な小学生そのままなのだが。
「でも今日はお仕事、あるよ」
「え?」
ミユが振り返り、ふふっと微笑む。
「待ってて」
そう言ってミユは出かけていった。
数十分後、一人残された唯の元へ、一人のサラリーマンを連れたミユが帰ってきた。
そしてこれが唯の、配達屋としての初の仕事となる。
『伝えたいもの』を『伝えたい人』へ配達する。
それが、心傷配達屋──その郵便局の役割だ。
先週、その郵便局に新しい局員が入った。案内人が適性のある者を探し出し、働いてくれるよう頼むのが郵便局の仕組みだ。
そしてその局員は新人にして、心傷配達屋の唯一の局員だ。
「ねぇねぇ、今日は水色と黄色どっちがいいかなぁ?」
「うーん、水色の方が似合う気が……って」
局員、唯は嘆く。
「夢じゃないよね!?」
先週、心傷配達屋の案内人であるミユと出会った唯。出会うなりいきなり勧誘されたのだが、誰だってまずは説明を聞いてから働くものだろう。
突然現れた謎の小さな郵便局の中へ案内され、見学させられた。そして、現在局員は一人もいないこと、ミユは案内人としての役割を果たすうえに不便なので、案内すると決めた相手以外には姿が見えないことを知った。
いきなりの事でもちろん唯の頭はパンクし、混乱もした。そんな唯にミユは言った。
『心傷配達屋は、自分の心の傷と向き合いたい人に、向き合うためのお手伝いをする場所なの』
当然唯は戸惑った。朝から知らない少女に知らない場所に案内され、ここで働いてくださいと勧誘される。きっとその日地球上で一番頭が混乱していたのは唯だろう。違いない。
最初は断ろうとしたが、出会った時から何故か懐かしい感じがするミユの存在は、不思議と唯には離れ難いものだった。
結局訳の分からないまま働くことになったのだ。既にその日から三日経っている。
「一体私ここで何をすればいいんだろう……」
唯は未だにこの郵便局での自分の役割を掴めていない。郵便局も案内人と同じらしく、案内する相手以外には見えず、空気のように触れることも出来ないらしい。しかもその中では時間が止まっているので、通常の生活には全く困らないと言う。
「とにかくミユちゃんが案内してきた人の話を聞いて、その人の伝言とかを、伝えたい相手に届ける……って事だよね?」
「そうだよ!」
「でも今は仕事ないんだね」
「すぐに案内できるわけじゃないから」
水色のワンピースを着たミユが無邪気に窓の外を眺めている。
「心に傷のある人皆を案内出来たら、誰も悲しい思いなんてしないんだよ」
「そうだよね……確かに」
唯はこのドタバタの三日間で幾つかわかったことがある。一つは、今自分が置かれている状況は、誰にも話さない方が良いということ。話せばきっとたくさんの人が唯に詰め寄るだろう。誰にだって傷はあるのだ。
そしてもう一つは、ミユは見た目に反し中身が少女ではないということ。たった今のように、幼い見た目からは想像のつかない寂しげで大人びた表情を見せることが多い。行動は無邪気な小学生そのままなのだが。
「でも今日はお仕事、あるよ」
「え?」
ミユが振り返り、ふふっと微笑む。
「待ってて」
そう言ってミユは出かけていった。
数十分後、一人残された唯の元へ、一人のサラリーマンを連れたミユが帰ってきた。
そしてこれが唯の、配達屋としての初の仕事となる。
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