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プロローグ 「自助努力には限界があります」
第二十五話 「果報は寝て待て」
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結局、秋彦は原因調査のため、様々な精密検査を受けることになった。
そして俺の方はというと、そのまま病院にいてもできることもなく、時間帯もかなり遅い事もあって取りあえず家に帰るようにと言われる。
ちなみに帰り道での階段の昇り降りは、非常にドキドキしてしまった。
何故ならノーパンだからな――。
思わずワンピースのすそを抑えながら、後ろをチラチラ見ちゃったよ。
それに、もし途中でバレて痴女だと思われて襲われでもしようものなら、また相手を殺しちゃうだろうし。
しかし強姦される事よりもむしろ強姦をした相手を殺してしまう事の方が、今の俺にとっては重大っていうのは何とも複雑な心境だよな。
ところで、この体って生理とかはどうなってるんだろう? 日にちが経ってみないと何とも言えないが、改めて考えると妊娠とかマジでちょっと恐怖だな。
そして懐かしのごみ屋敷、もとい自宅に着くなり、精神的にも肉体的にも疲労を感じて思わず大きなため息が出る。
――結局、エロい事して空腹感は収まったが、人を一人殺しかけた。
そしてもしかしたら、この後だって秋彦の容体が急変して死ぬことだってあるかもしれない。
もし仮にそうなったらと思うと、何だか得体のしれない恐怖感に襲われる。
だってその場合、致死率100%ってことだよ? 調査サンプルは確かに2人しかいないけどさ。
いずれにせよ、これから先の人生、生きていくのに俺の体は非常に不便なものであるという事だけは十分に理解した。
今回のような事を、また何度も繰り返せば、いずれは俺に嫌疑がかけられるだろうし、相手の命を奪う可能性があるのが分かっているのなら、エロい事だって簡単にはできない。
「このまま死ぬしかないのかな…」
自暴自棄になって、いっそ死んだ方が楽なのかもしれないと考えてしまう。
正直、俺の精神状態は限界寸前のところまで来ていたし、いつもの不衛生な布団の上に座り込んでしまってから、もう一歩でも動こうという気すら起きなかった。
しばらくそのまま放心状態でいると、普段からつけっぱなしのパソコンからメールの受信を知らせる効果音が鳴る。
メーラーも普段から起動しっぱなしなので、メールが来るとすぐに分かる仕様なのだ。
のろのろとマウスを動かかすと、見慣れない送信元からのメールを開く――差出人は悠翔からだった。
唯一、俺とエロい事をして平気だった男。まあ、ゴムをちゃんとつけてたからだろうけどな。
メールには、どうにか警察の事情聴取を乗り切った旨と、迷惑をかけたと改めて謝罪の内容が書かれていた。チャラい雰囲気のキャラの割には、キチンと事後報告までしてくれて、本当に律儀な奴だと思う。
そしてその時、俺は無性に悠翔に会いたいと思ってしまい、そのままの自分の気持ちに従って、返信のメールを打ってしまう。まぁ不安で仕方なかったからな。
『明日、また会えますか?』
長い謝罪のメールに対する返信にしては、あまりにも短すぎる内容。だが、今の俺にはそれ以上のメールを打つだけの気力も精神的余裕もなかった。
「……シャワーでも浴びるか」
色々な意味で、今日は想定外の運動をして疲れたし、汗もたくさん掻いたと思う。それに、シャワーでも浴びれば、きっと気分転換にもなるだろうからな。
取りあえず、着ていたワンピースを脱いで鏡を見る。
するとそこには、ノーパンキャミソールでニーソ姿をした美少女が、少しだけ疲れた表情で映し出されていた。
(うん。無駄にエロイな、この服装)
だって一番大事なところにだけ、何も付けていないんだもの。
それにしても、疲れた表情でもこんなに可愛いって…一体どんだけなんだよ…。
あと、やはり自分の裸を見ても、別段興奮もしないし、全く楽しくもない。よしよし、相変わらず平常運転だ……なんだかなぁ…はぁ。
そしてシャワーを浴び終え、男物の下着に着替える。やっぱり昔から穿き慣れたトランクスの方が、なんだか落ち着くんだよね。
そうそう。それと秋彦の家に置いてきたショーツも、いつか回収しないとね……はっきり言ってズリネタとかにされるのは正直嫌だ。
そして再びパソコンのメールを確認する。すると早速そこには、悠翔から返信が来ていた。
それによると明日は大学の講義があるらしく、それが終わる夕方以降であれば会えるという事。
それと、夕食でも一緒にどうかという、デートっぽい内容のお誘いだった。
女の子からの誘いならともかく、男からの誘いに対して内心ホッとしている自分に居心地の悪い戸惑いを覚える。
以前の俺なら、ぼっちでいることがあんなに得意だったのにな。
あまりにも現実離れしている現状に、誰かと話でもしてないと本当に気が狂ってしまいそうなのだから、仕方の無い事ではあるんだが。
……よし、今日はもう寝てしまおう。そうだ、こういう時は寝るに限るよ。
そう思って、寝床の準備を始めると、ふと一通の簡易書留の封筒に目が留まる。
封筒には赤字で通知カード、個人番号カード交付申請書在中とある。
そう言えばこの前役所に相談に行ったときに、マイナンバーがどうとか言ってたな……ん、これって身分証にも使えるんだよな確か。
お、もしかしたら……取りあえず中でも確かめてみるか。
俺は封書をビリビリと破くと、中の冊子状の案内を開いて確認する。
何々、スマホで撮った写真でもOK? 意外と軽い感じのノリだな。
それで、受け取り時に必要な書類は、ん? もしかして、年金手帳と、貯金通帳でいけるのか?
確か通帳は今も使っているやつがあるし、年金手帳はここに引っ越してきた時のダンボール箱の奥の方に入ったままっだったような…。
俺は部屋の奥のホコリをかぶったダンボール箱を引っ張りだすと、梱包を空けて中から年金手帳を探し当てる。
「くくくっ…これでいける! 俺は勝った!」
思わずこみ上げる達成感に、震えるこぶしでガッツポーズを決めて勝利宣言する。いやーマジ助かったわ、マイナンバー最高。俺の個人情報なんて、別にだだ漏れでも気にしないしな。
いや、逆にみんな、俺の事を知ってくれっ!
頼むから存在そのものを無視しないでくれっ!
宗教の勧誘でも詐欺でもいいから俺に声をかけてくれっ!
そうだ、落ち込んでてもしょうがないっ! きっとそのうち何とかなるさ。やっぱり何事も前向きに考えないとね☆
という事で、気分も良くなったし、今日はもう寝るかな。
そして俺は嫌なことは一切忘れて、そのままホコリで薄汚れた布団をかぶって深い眠りに落ちた。
そして俺の方はというと、そのまま病院にいてもできることもなく、時間帯もかなり遅い事もあって取りあえず家に帰るようにと言われる。
ちなみに帰り道での階段の昇り降りは、非常にドキドキしてしまった。
何故ならノーパンだからな――。
思わずワンピースのすそを抑えながら、後ろをチラチラ見ちゃったよ。
それに、もし途中でバレて痴女だと思われて襲われでもしようものなら、また相手を殺しちゃうだろうし。
しかし強姦される事よりもむしろ強姦をした相手を殺してしまう事の方が、今の俺にとっては重大っていうのは何とも複雑な心境だよな。
ところで、この体って生理とかはどうなってるんだろう? 日にちが経ってみないと何とも言えないが、改めて考えると妊娠とかマジでちょっと恐怖だな。
そして懐かしのごみ屋敷、もとい自宅に着くなり、精神的にも肉体的にも疲労を感じて思わず大きなため息が出る。
――結局、エロい事して空腹感は収まったが、人を一人殺しかけた。
そしてもしかしたら、この後だって秋彦の容体が急変して死ぬことだってあるかもしれない。
もし仮にそうなったらと思うと、何だか得体のしれない恐怖感に襲われる。
だってその場合、致死率100%ってことだよ? 調査サンプルは確かに2人しかいないけどさ。
いずれにせよ、これから先の人生、生きていくのに俺の体は非常に不便なものであるという事だけは十分に理解した。
今回のような事を、また何度も繰り返せば、いずれは俺に嫌疑がかけられるだろうし、相手の命を奪う可能性があるのが分かっているのなら、エロい事だって簡単にはできない。
「このまま死ぬしかないのかな…」
自暴自棄になって、いっそ死んだ方が楽なのかもしれないと考えてしまう。
正直、俺の精神状態は限界寸前のところまで来ていたし、いつもの不衛生な布団の上に座り込んでしまってから、もう一歩でも動こうという気すら起きなかった。
しばらくそのまま放心状態でいると、普段からつけっぱなしのパソコンからメールの受信を知らせる効果音が鳴る。
メーラーも普段から起動しっぱなしなので、メールが来るとすぐに分かる仕様なのだ。
のろのろとマウスを動かかすと、見慣れない送信元からのメールを開く――差出人は悠翔からだった。
唯一、俺とエロい事をして平気だった男。まあ、ゴムをちゃんとつけてたからだろうけどな。
メールには、どうにか警察の事情聴取を乗り切った旨と、迷惑をかけたと改めて謝罪の内容が書かれていた。チャラい雰囲気のキャラの割には、キチンと事後報告までしてくれて、本当に律儀な奴だと思う。
そしてその時、俺は無性に悠翔に会いたいと思ってしまい、そのままの自分の気持ちに従って、返信のメールを打ってしまう。まぁ不安で仕方なかったからな。
『明日、また会えますか?』
長い謝罪のメールに対する返信にしては、あまりにも短すぎる内容。だが、今の俺にはそれ以上のメールを打つだけの気力も精神的余裕もなかった。
「……シャワーでも浴びるか」
色々な意味で、今日は想定外の運動をして疲れたし、汗もたくさん掻いたと思う。それに、シャワーでも浴びれば、きっと気分転換にもなるだろうからな。
取りあえず、着ていたワンピースを脱いで鏡を見る。
するとそこには、ノーパンキャミソールでニーソ姿をした美少女が、少しだけ疲れた表情で映し出されていた。
(うん。無駄にエロイな、この服装)
だって一番大事なところにだけ、何も付けていないんだもの。
それにしても、疲れた表情でもこんなに可愛いって…一体どんだけなんだよ…。
あと、やはり自分の裸を見ても、別段興奮もしないし、全く楽しくもない。よしよし、相変わらず平常運転だ……なんだかなぁ…はぁ。
そしてシャワーを浴び終え、男物の下着に着替える。やっぱり昔から穿き慣れたトランクスの方が、なんだか落ち着くんだよね。
そうそう。それと秋彦の家に置いてきたショーツも、いつか回収しないとね……はっきり言ってズリネタとかにされるのは正直嫌だ。
そして再びパソコンのメールを確認する。すると早速そこには、悠翔から返信が来ていた。
それによると明日は大学の講義があるらしく、それが終わる夕方以降であれば会えるという事。
それと、夕食でも一緒にどうかという、デートっぽい内容のお誘いだった。
女の子からの誘いならともかく、男からの誘いに対して内心ホッとしている自分に居心地の悪い戸惑いを覚える。
以前の俺なら、ぼっちでいることがあんなに得意だったのにな。
あまりにも現実離れしている現状に、誰かと話でもしてないと本当に気が狂ってしまいそうなのだから、仕方の無い事ではあるんだが。
……よし、今日はもう寝てしまおう。そうだ、こういう時は寝るに限るよ。
そう思って、寝床の準備を始めると、ふと一通の簡易書留の封筒に目が留まる。
封筒には赤字で通知カード、個人番号カード交付申請書在中とある。
そう言えばこの前役所に相談に行ったときに、マイナンバーがどうとか言ってたな……ん、これって身分証にも使えるんだよな確か。
お、もしかしたら……取りあえず中でも確かめてみるか。
俺は封書をビリビリと破くと、中の冊子状の案内を開いて確認する。
何々、スマホで撮った写真でもOK? 意外と軽い感じのノリだな。
それで、受け取り時に必要な書類は、ん? もしかして、年金手帳と、貯金通帳でいけるのか?
確か通帳は今も使っているやつがあるし、年金手帳はここに引っ越してきた時のダンボール箱の奥の方に入ったままっだったような…。
俺は部屋の奥のホコリをかぶったダンボール箱を引っ張りだすと、梱包を空けて中から年金手帳を探し当てる。
「くくくっ…これでいける! 俺は勝った!」
思わずこみ上げる達成感に、震えるこぶしでガッツポーズを決めて勝利宣言する。いやーマジ助かったわ、マイナンバー最高。俺の個人情報なんて、別にだだ漏れでも気にしないしな。
いや、逆にみんな、俺の事を知ってくれっ!
頼むから存在そのものを無視しないでくれっ!
宗教の勧誘でも詐欺でもいいから俺に声をかけてくれっ!
そうだ、落ち込んでてもしょうがないっ! きっとそのうち何とかなるさ。やっぱり何事も前向きに考えないとね☆
という事で、気分も良くなったし、今日はもう寝るかな。
そして俺は嫌なことは一切忘れて、そのままホコリで薄汚れた布団をかぶって深い眠りに落ちた。
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