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77話 ニース、魔力を溜めて奇跡を起こし オルウェン、オルリア城を包囲される
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その出来事は真夜中に突然起きた。
「!? なんじゃ! 今の強大な魔力は!」
「ひっ!?」
シロッコやアリマ、亜人のルミナ達は当然それに気付いたが、
「......今の感覚は何かしら」
「なんだろう? 変な感じが......」
「強大な魔力をすぐ近くで感じたぞ婿殿!」
幸依や正和すら気付かせるほどの力は自然とその場所へと彼等を導き寄せる。
「あらあら。 皆さんお揃いで」
「幸依さんや正和君まで感じたとはのぅ」
「じいちゃん。 でもなんでここなんだろう」
一同の視線の先には『ニースの不思議なダンジョン』と書かれた札のかかる扉があった。
「うーむ。 この札の通り部屋の中が本当のダンジョンになったとかじゃなかろうか」
「ええ!?」
「それ位の魔力を感じたという訳じゃが」
「ニ、ニース!」
正和はニースを心配し、シロッコが言い終わらないうちに扉を開けて部屋に飛び込む。
だが部屋は正和の入室を拒んだ。
「ぶふっ!?」
「む、婿殿!」
「痛くないし大丈夫。 ......けど」
アリマは本来あるはずのない何かに弾かれ尻餅をついた正和に駆け寄る。
他の者は正和が見上げる視線の先を追う。
「なんで部屋から毛が生えてるの?」
入口は塞がれており、塞いでいるそれはフサフサとした触り心地の良さそうな毛が全面を覆っていた。
~オルウェンの居城・オルリア城~
度重なる敗戦でオルウェンは遂に本城をキョウレイ軍に囲まれてしまっていた。
元々のキョウレイ軍の兵数では城を囲んでもその包囲網は厚みのあるものではない。
キョウレイもそれは分かっていて城を囲むような事はしなかった。
そこでオルウェンは夜陰に乗じてキョウレイ軍の補給物資集積所を狙ったが、これは相手に読まれており空の陣営を襲っただけで空振りに終わる。 しかもキョウレイ側はオルウェン達に追撃をかけず見逃した。
その後、キョウレイに媚を売ろうと考える近隣の領主が兵を率いてオルウェン討伐に参加した事で兵力が増加し、城を包囲される形に至ったのである。
「......ここまで全てキョウレイの計画通りという訳か」
憎々しげにタッカーが言う。
「この後の筋書きも出来ているのでしょう。 私が力不足なばかりに......」
オルウェンは弱気だ。 度重なる敗戦の疲労から顔も少しやつれて見える。
「有利になっても偽の陣営を置いたり空の陣営で惑わしてきたりと隙も見せない。 キョウレイがここまで戦の手腕に長けていたとは」
オルウェンに協力して支えてきた領主の一人、カーク=バートランドも予想外な事態に困惑の表情だ。
「いや、謎の兵器や我が配下の将ゼムオールの件もある。 以前のキョウレイ軍とは明らかに得体がしれなくなっているのだ。 ......まぁそれが分かったからと言ってこちらにいい考えが浮かぶ訳ではないんだが」
タッカーが悔しがりながら続ける。
「いっそ大将めがけて突撃するか! 多少なりとも目にもの見せてくれるわ!」
「それは通用しないでしょう。 相手は将の質も上がっています。 それ位の事に対処してないとは思えません」
「私もオルウェン様と同じ意見です。 それを行うにはすでに兵を失いすぎました」
本陣に到達する前に他の部隊に囲まれて全滅するからとオルウェンとカークはタッカーを説得した。
「ぐ...... 調略の方は進展ないのか! なぜキョウレイの様な暴挙に皆憤りを感じないのか! 忠義の心は何処に行った!」
タッカーは机をバンと叩く。 オルウェンは形勢が不利と判断した際に近隣の領主へ援軍の要請を出していたのだ。 だが、それも最初から僅かな望みと分かっていた。
「何処も動きません。 本質は侵略戦争ですが、表向きは向こうが官軍でこちらは賊軍なのです。 手を貸せばキョウレイに侵攻の口実を与えてしまう」
「我々の敗戦の状況も伝わっているでしょうから尚更慎重になっているだろう」
「むう。 反対に利にさとい輩ばかりがキョウレイにすり寄りおって!」
タッカーは更に机をバンバンと叩く。
「ええ。 ですからこの手の輩はこちらが有利にならない限り寝返りは期待できないでしょうね」
「では打つ手がないではないか! このまま座して討たれるのを待つのか!」
オルウェンは自嘲気味に笑い、
「せめてもの救いは参じた者達とキョウレイ軍との連携がうまくいっていない事でしょう」
と推測を口にした。 カークが後へ続く。
「参じた者達の本心と器量を見るために好きにやらせているものと考えます。 キョウレイはその者達を信用していない。 陣を合流していない事からも明らかかと」
「では我々は?」
「動くならその隙を突くしかないでしょう」
とは言ってもこの戦い、すでに勝ち目が薄い事はオルウェン達にも分かっていた。
オルウェンは思う。
(父上...... 私が未熟なせいで領土と民を守りきれぬ事。 どうかお許しください)
「時を稼げば奇跡が起きるやもしれません。 全力でこの城を守り抜きましょうぞ!」
カークはオルウェンとタッカーを励ますように声をかけた。
「キョウレイ様、城の包囲は完成しました。 後に合流した各陣営ごとに配置してあります」
「うむ」
ショウホがキョウレイに報告する。
側近のミークはそのやり取りを黙って見ていた。
「......なんだミーク。 何か言いたそうだな?」
不意にキョウレイに尋ねられてミークは思っている疑問を口にする。
「い、いえ。 そうではないのですが、こちらには戦車もありますし城は完全に包囲できました。 なぜすぐに総攻撃しないのか、と」
キョウレイはショウホに視線を移し伝える。
「ショウホよ。次の準備を進めておけ」
「はっ」
ショウホが退室し、キョウレイはミークに視線を戻す。
「ミークよ。 仕掛け時のタイミングを見誤ってはならん」
キョウレイはミークを近くに呼び机の上の図面を指し示し説明する。
「オルリア城は堅城だ。 確かにミークの言う通りこちらには戦車もあるし、兵力も多いが、余は覇王を目指しておる。 戦いはこれで終わりではないので避けれる消耗は避けなければならん。 とすれば、今動けば得をするのは余ではなかろう?」
「? というと?」
「尻尾を振ってきた者共よ。 何もせずに余から信頼されると思うには虫がよすぎろう?」
「......」
「陣を分けた事でまだ余から信じられておらぬと気付く者もおろうが...... 使える駒なら抱き込む。 そうでなければ利用する。 わかるな?」
ミークは自分なりの答えを出すため口を開く。
「つまり...... 今総力戦を挑めば勝っても損害が出るため、功を見せねばと焦る味方が勝手に仕掛けて両者が消耗するのを待っている...... と?」
「そうだ。 功を焦らずこちらと動きをあわせようとする軍の大将は大局を見る目があるだろうな。 余の狙いは他にもあるが...... まぁ、城を落とす算段はすでにつけてある」
「!! キョウレイ様の大計、お見事でございます。 このミーク、感服致しました!」
ミークは片膝をついて忠誠を示す。
「よい。 敵は乱れの隙を突いてまた物資集積所を狙うかもしれん。 警戒は怠るなよ」
「はっ!」
ミークは退室していった。
部屋はキョウレイ一人になる。
「ふ...... 警戒は怠るな、か。 誰に向けての言葉なのだろうな」
呟いたキョウレイは軽く首を振った。
「まずは目の前だな。 オルウェンよ、奇跡は簡単には起こらぬぞ?」
~開拓村~
「......」
村の面々は困惑している。
ニースの部屋はなにかでぎゅうぎゅうだった。
やむなく外壁を壊して部屋の中に『詰まっていた』なにかを外へと引っ張り出したのだが......
出てきたのは巨大なニース。
......かと皆が錯覚したほどニースにそっくりな生き物。 なのでそれが聖獣である事はすぐに理解できた。
巨大な聖獣は弱っている感じがあるものの、ニースはその周囲を尻尾を振って駆け回っている。
「ま、正和君。 これはどういう事じゃろうか?」
シロッコの質問には『聖獣はどこから来たのか』『聖獣とニースとの関係』という、二つの意味がある事を正和は理解した。
「う、うーん...... ニースの部屋に居たって事は」
ある意味密閉されていた訳だから、外部からの侵入ではない。
だが、ニースの召喚の特徴は地球にあるなにかをこちらに運んでくる事。 しかしこんな生物が地球にいたらどこかしらでニュースになっていただろう。
もちろん、人類未踏の地にひっそり、という可能性はある。
「地球にいたって事にするには無理があるかな。 関係性は......」
だが意外な人物が関係性を指摘した。 幸依である。
「この子(?)はニースの母親だと思うわ」
幸依は確信めいて言う。
「この子(?)のニースを見る目はとても優しいわ。 私と同じだもの」
確かにそんな雰囲気はあるのか、妙な説得力があった。
「でもこの衰弱は......」
幸依が話を続けようとしたがそこにはアリマが割って入る。
「母上殿。 それは多分魔力切れじゃな。 スッカラカンになっておる。 命に別状はないようじゃが、それが要因の一つなのは間違いないと思うのぞよ」
アリマは複眼で確認していた。
「アリマちゃんやるわね! じゃああのスープあげればいい訳じゃない」
「ガシュイイィン、ワォン!」
ニースがそれに反応し、幸依はその聖獣にスープを差し出すと聖獣は警戒もせずに舌を出す。 ちなみに皿では小さいので容器は桶だ。
その後その聖獣はみるみる元気を取り戻した。
「さすが幸依様のお料理ね」
ルミナ達はこんな感じで様子を見守っていたが意外な事が起きる。
「全ての謎は本人に聞くのが一番じゃろ」
シロッコは今までやってきた様に、その聖獣に言葉の概念を与えようとした。
「......クゥン クゥン?」
「な、なんじゃと!?」
「な、なんだって!?」
シロッコと正和が驚く。
「正和、言葉がわかるの?」
「違うよ母さん。 わからないから。 そうじゃなくて聖獣が言葉を話せてないって事は......」
「この犬ころの方が神である妾より力が強いというのかや!? じょ、冗談ではないのじゃ!」
幸依と正和の会話の途中でアリマが顔を青くして騒ぎ出す。
「ア、アリマさんも落ち着いて!」
「婿殿がアリマと呼び捨てにしてくれんと嫌じゃ!」
「......アリマ様余裕にゃりね」
「分かっててやってるんじゃないかしら」
ヒラリエとルミナは呆れている。
「おそらく抵抗力が強力なんじゃな。 儂にも予想外じゃった。 これはしばし保留じゃなぁ」
「あれ? って事はじいちゃん。 ニースもまさかそんな感じなんじゃ? 今まで気にしてなかったけど」
「「......」」
「? ガシュウイイィン!」
二人に見つめられたニースがくしゃみをした。
~オルリア城~
「オルウェン殿! オルウェン殿!」
タッカーが挨拶もそこそこにオルウェンの部屋へ飛び込んできた。
「どうしまし」
「急ぎ! 急いでこちらへ!」
タッカーが城の外が見える場所までオルウェンを引っ張っていく。 そこにはすでにカークも居た。
「おお、オルウェン様、あれを!」
「二人していったい何事ですか」
示された南門の敵陣を見る。 敵陣からは土煙が上がり、剣戟の音もわずかながら聞こえてきた。
「あれは戦闘!? 誰が戦っているのですか!」
オルウェンは目を凝らしてヒントを探す。
「あの旗は叔父上! 叔父上が来てくださったのか!」
「おお! オルドゥーク様ですか! 敵を押しておりますな! こちらも打って出て蹴散らし、城へ合流してもらいましょう!」
「うむ。 急がねば他に気付かれ挟撃されてしまう! 今ならこちらが挟撃できる!」
「ええ! 急げ! 打って出るぞ!」
オルウェン達は南門を包囲していた敵部隊を蹴散らし、無事にオルドゥークと合流、共に城へと帰還した。
「!? なんじゃ! 今の強大な魔力は!」
「ひっ!?」
シロッコやアリマ、亜人のルミナ達は当然それに気付いたが、
「......今の感覚は何かしら」
「なんだろう? 変な感じが......」
「強大な魔力をすぐ近くで感じたぞ婿殿!」
幸依や正和すら気付かせるほどの力は自然とその場所へと彼等を導き寄せる。
「あらあら。 皆さんお揃いで」
「幸依さんや正和君まで感じたとはのぅ」
「じいちゃん。 でもなんでここなんだろう」
一同の視線の先には『ニースの不思議なダンジョン』と書かれた札のかかる扉があった。
「うーむ。 この札の通り部屋の中が本当のダンジョンになったとかじゃなかろうか」
「ええ!?」
「それ位の魔力を感じたという訳じゃが」
「ニ、ニース!」
正和はニースを心配し、シロッコが言い終わらないうちに扉を開けて部屋に飛び込む。
だが部屋は正和の入室を拒んだ。
「ぶふっ!?」
「む、婿殿!」
「痛くないし大丈夫。 ......けど」
アリマは本来あるはずのない何かに弾かれ尻餅をついた正和に駆け寄る。
他の者は正和が見上げる視線の先を追う。
「なんで部屋から毛が生えてるの?」
入口は塞がれており、塞いでいるそれはフサフサとした触り心地の良さそうな毛が全面を覆っていた。
~オルウェンの居城・オルリア城~
度重なる敗戦でオルウェンは遂に本城をキョウレイ軍に囲まれてしまっていた。
元々のキョウレイ軍の兵数では城を囲んでもその包囲網は厚みのあるものではない。
キョウレイもそれは分かっていて城を囲むような事はしなかった。
そこでオルウェンは夜陰に乗じてキョウレイ軍の補給物資集積所を狙ったが、これは相手に読まれており空の陣営を襲っただけで空振りに終わる。 しかもキョウレイ側はオルウェン達に追撃をかけず見逃した。
その後、キョウレイに媚を売ろうと考える近隣の領主が兵を率いてオルウェン討伐に参加した事で兵力が増加し、城を包囲される形に至ったのである。
「......ここまで全てキョウレイの計画通りという訳か」
憎々しげにタッカーが言う。
「この後の筋書きも出来ているのでしょう。 私が力不足なばかりに......」
オルウェンは弱気だ。 度重なる敗戦の疲労から顔も少しやつれて見える。
「有利になっても偽の陣営を置いたり空の陣営で惑わしてきたりと隙も見せない。 キョウレイがここまで戦の手腕に長けていたとは」
オルウェンに協力して支えてきた領主の一人、カーク=バートランドも予想外な事態に困惑の表情だ。
「いや、謎の兵器や我が配下の将ゼムオールの件もある。 以前のキョウレイ軍とは明らかに得体がしれなくなっているのだ。 ......まぁそれが分かったからと言ってこちらにいい考えが浮かぶ訳ではないんだが」
タッカーが悔しがりながら続ける。
「いっそ大将めがけて突撃するか! 多少なりとも目にもの見せてくれるわ!」
「それは通用しないでしょう。 相手は将の質も上がっています。 それ位の事に対処してないとは思えません」
「私もオルウェン様と同じ意見です。 それを行うにはすでに兵を失いすぎました」
本陣に到達する前に他の部隊に囲まれて全滅するからとオルウェンとカークはタッカーを説得した。
「ぐ...... 調略の方は進展ないのか! なぜキョウレイの様な暴挙に皆憤りを感じないのか! 忠義の心は何処に行った!」
タッカーは机をバンと叩く。 オルウェンは形勢が不利と判断した際に近隣の領主へ援軍の要請を出していたのだ。 だが、それも最初から僅かな望みと分かっていた。
「何処も動きません。 本質は侵略戦争ですが、表向きは向こうが官軍でこちらは賊軍なのです。 手を貸せばキョウレイに侵攻の口実を与えてしまう」
「我々の敗戦の状況も伝わっているでしょうから尚更慎重になっているだろう」
「むう。 反対に利にさとい輩ばかりがキョウレイにすり寄りおって!」
タッカーは更に机をバンバンと叩く。
「ええ。 ですからこの手の輩はこちらが有利にならない限り寝返りは期待できないでしょうね」
「では打つ手がないではないか! このまま座して討たれるのを待つのか!」
オルウェンは自嘲気味に笑い、
「せめてもの救いは参じた者達とキョウレイ軍との連携がうまくいっていない事でしょう」
と推測を口にした。 カークが後へ続く。
「参じた者達の本心と器量を見るために好きにやらせているものと考えます。 キョウレイはその者達を信用していない。 陣を合流していない事からも明らかかと」
「では我々は?」
「動くならその隙を突くしかないでしょう」
とは言ってもこの戦い、すでに勝ち目が薄い事はオルウェン達にも分かっていた。
オルウェンは思う。
(父上...... 私が未熟なせいで領土と民を守りきれぬ事。 どうかお許しください)
「時を稼げば奇跡が起きるやもしれません。 全力でこの城を守り抜きましょうぞ!」
カークはオルウェンとタッカーを励ますように声をかけた。
「キョウレイ様、城の包囲は完成しました。 後に合流した各陣営ごとに配置してあります」
「うむ」
ショウホがキョウレイに報告する。
側近のミークはそのやり取りを黙って見ていた。
「......なんだミーク。 何か言いたそうだな?」
不意にキョウレイに尋ねられてミークは思っている疑問を口にする。
「い、いえ。 そうではないのですが、こちらには戦車もありますし城は完全に包囲できました。 なぜすぐに総攻撃しないのか、と」
キョウレイはショウホに視線を移し伝える。
「ショウホよ。次の準備を進めておけ」
「はっ」
ショウホが退室し、キョウレイはミークに視線を戻す。
「ミークよ。 仕掛け時のタイミングを見誤ってはならん」
キョウレイはミークを近くに呼び机の上の図面を指し示し説明する。
「オルリア城は堅城だ。 確かにミークの言う通りこちらには戦車もあるし、兵力も多いが、余は覇王を目指しておる。 戦いはこれで終わりではないので避けれる消耗は避けなければならん。 とすれば、今動けば得をするのは余ではなかろう?」
「? というと?」
「尻尾を振ってきた者共よ。 何もせずに余から信頼されると思うには虫がよすぎろう?」
「......」
「陣を分けた事でまだ余から信じられておらぬと気付く者もおろうが...... 使える駒なら抱き込む。 そうでなければ利用する。 わかるな?」
ミークは自分なりの答えを出すため口を開く。
「つまり...... 今総力戦を挑めば勝っても損害が出るため、功を見せねばと焦る味方が勝手に仕掛けて両者が消耗するのを待っている...... と?」
「そうだ。 功を焦らずこちらと動きをあわせようとする軍の大将は大局を見る目があるだろうな。 余の狙いは他にもあるが...... まぁ、城を落とす算段はすでにつけてある」
「!! キョウレイ様の大計、お見事でございます。 このミーク、感服致しました!」
ミークは片膝をついて忠誠を示す。
「よい。 敵は乱れの隙を突いてまた物資集積所を狙うかもしれん。 警戒は怠るなよ」
「はっ!」
ミークは退室していった。
部屋はキョウレイ一人になる。
「ふ...... 警戒は怠るな、か。 誰に向けての言葉なのだろうな」
呟いたキョウレイは軽く首を振った。
「まずは目の前だな。 オルウェンよ、奇跡は簡単には起こらぬぞ?」
~開拓村~
「......」
村の面々は困惑している。
ニースの部屋はなにかでぎゅうぎゅうだった。
やむなく外壁を壊して部屋の中に『詰まっていた』なにかを外へと引っ張り出したのだが......
出てきたのは巨大なニース。
......かと皆が錯覚したほどニースにそっくりな生き物。 なのでそれが聖獣である事はすぐに理解できた。
巨大な聖獣は弱っている感じがあるものの、ニースはその周囲を尻尾を振って駆け回っている。
「ま、正和君。 これはどういう事じゃろうか?」
シロッコの質問には『聖獣はどこから来たのか』『聖獣とニースとの関係』という、二つの意味がある事を正和は理解した。
「う、うーん...... ニースの部屋に居たって事は」
ある意味密閉されていた訳だから、外部からの侵入ではない。
だが、ニースの召喚の特徴は地球にあるなにかをこちらに運んでくる事。 しかしこんな生物が地球にいたらどこかしらでニュースになっていただろう。
もちろん、人類未踏の地にひっそり、という可能性はある。
「地球にいたって事にするには無理があるかな。 関係性は......」
だが意外な人物が関係性を指摘した。 幸依である。
「この子(?)はニースの母親だと思うわ」
幸依は確信めいて言う。
「この子(?)のニースを見る目はとても優しいわ。 私と同じだもの」
確かにそんな雰囲気はあるのか、妙な説得力があった。
「でもこの衰弱は......」
幸依が話を続けようとしたがそこにはアリマが割って入る。
「母上殿。 それは多分魔力切れじゃな。 スッカラカンになっておる。 命に別状はないようじゃが、それが要因の一つなのは間違いないと思うのぞよ」
アリマは複眼で確認していた。
「アリマちゃんやるわね! じゃああのスープあげればいい訳じゃない」
「ガシュイイィン、ワォン!」
ニースがそれに反応し、幸依はその聖獣にスープを差し出すと聖獣は警戒もせずに舌を出す。 ちなみに皿では小さいので容器は桶だ。
その後その聖獣はみるみる元気を取り戻した。
「さすが幸依様のお料理ね」
ルミナ達はこんな感じで様子を見守っていたが意外な事が起きる。
「全ての謎は本人に聞くのが一番じゃろ」
シロッコは今までやってきた様に、その聖獣に言葉の概念を与えようとした。
「......クゥン クゥン?」
「な、なんじゃと!?」
「な、なんだって!?」
シロッコと正和が驚く。
「正和、言葉がわかるの?」
「違うよ母さん。 わからないから。 そうじゃなくて聖獣が言葉を話せてないって事は......」
「この犬ころの方が神である妾より力が強いというのかや!? じょ、冗談ではないのじゃ!」
幸依と正和の会話の途中でアリマが顔を青くして騒ぎ出す。
「ア、アリマさんも落ち着いて!」
「婿殿がアリマと呼び捨てにしてくれんと嫌じゃ!」
「......アリマ様余裕にゃりね」
「分かっててやってるんじゃないかしら」
ヒラリエとルミナは呆れている。
「おそらく抵抗力が強力なんじゃな。 儂にも予想外じゃった。 これはしばし保留じゃなぁ」
「あれ? って事はじいちゃん。 ニースもまさかそんな感じなんじゃ? 今まで気にしてなかったけど」
「「......」」
「? ガシュウイイィン!」
二人に見つめられたニースがくしゃみをした。
~オルリア城~
「オルウェン殿! オルウェン殿!」
タッカーが挨拶もそこそこにオルウェンの部屋へ飛び込んできた。
「どうしまし」
「急ぎ! 急いでこちらへ!」
タッカーが城の外が見える場所までオルウェンを引っ張っていく。 そこにはすでにカークも居た。
「おお、オルウェン様、あれを!」
「二人していったい何事ですか」
示された南門の敵陣を見る。 敵陣からは土煙が上がり、剣戟の音もわずかながら聞こえてきた。
「あれは戦闘!? 誰が戦っているのですか!」
オルウェンは目を凝らしてヒントを探す。
「あの旗は叔父上! 叔父上が来てくださったのか!」
「おお! オルドゥーク様ですか! 敵を押しておりますな! こちらも打って出て蹴散らし、城へ合流してもらいましょう!」
「うむ。 急がねば他に気付かれ挟撃されてしまう! 今ならこちらが挟撃できる!」
「ええ! 急げ! 打って出るぞ!」
オルウェン達は南門を包囲していた敵部隊を蹴散らし、無事にオルドゥークと合流、共に城へと帰還した。
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−−−−−−
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会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
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