一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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15話 常識知らずの人助け

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 まいった。計画ではまず生活レベルをあげて備蓄などが用意できてから、村なり街なりに出て情報を集めるつもりだったのだが、まさか異世界人の方からこっちにやってくるとは想定してなかった。

 しかも都合の悪い事にどうやら俺達の言語と異世界人の言語は違うようだ。......いや、これが普通だよね? なんで都合よく言葉が通じると思ったのだろう。しかしどうやってコミュニケーションを取ればいいのか。こんな事なら木材でシンセサイザーでも作っておけば良かった。確かレ、ミ、ド、ド、ソだったか? 色々無理があるな。家族の反応は? 

 幸依は異世界人に向けて人差し指を伸ばしている。昔SF映画でそんなシーンあったな。俺が考えたのも別のSF映画のシーンだけどやはり似た者夫婦なのか。だがうろ覚えなのか手の形が違う上に両手でやっているので異世界人に対してゲッツのポーズをとっているようにしか見えない。(σ゚∀゚)σ

「こちらも焦っている事を伝えてみよう」

 その時歴史、じゃなく正和が動いた。なるほど。覚醒した力ですでに現地の言語は習得済みか!? 流石正和! そこに痺れる、憧れるゥ! 頼りになる息子は異世界人の前に歩み出て、

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 さっきの鳥さんを彷彿とさせる言葉を口にした。

「ひぃ!」 

 華音が身構える。異世界人には通じないし俺達にも通じない。

「爺様!」
「もうやっておる。対象はこの範囲、使う魔力はこのぐらいでよかろう。OKじゃ」
「どうしました? 何やらただ事ではない様子ですが」

 伝わるかな。俺はどきどきしながら話しかけてみた。

「すみません旅の者なのですが母が倒れてしまいまして。休める場所をお貸しいただけないでしょうか」

 おお! 会話ができる。やっぱ爺様の力は万能だなぁ。なるほど、背負っているのは母親か。助けたいが自分達の家に招くのは色々問題がある気がする。と、なるとログハウスを使うのが無難か。

 俺は家族に必要そうになる物をログハウスに運んでもらうように頼み、異世界人をログハウスに案内した。ログハウスには暖炉と木の机、木のイスのある部屋に隣接して、ベイマツ風呂とトイレのある計三部屋しかない。そんなに騒がれるものもないはずだ。増築しようとしていた未完成の壁部分はあるが別におかしな点はない。

 まずは異世界人の旅人の母親を木のイスに座らせる。正和が客用の布団を、幸依がタオルとかその他のものを持ってくるはずだ。俺と爺様が現場にいる。

「ご厚意に感謝します。私はオーシンと申しまして、こちらは母のオワタ」

 ......具合が悪くて倒れた母親の名前がオワタ。正直、嫌な予感しかしない。

「いえいえ。困った時はお互い様ですから気になさらないで下さい。私の名は洞......いえ、朋広です。そして......」

 俺は困った。爺様の名前しらない......どう紹介すればいいのだろう? 神様です。は、まずい気がするし、うちの爺様です。で押し通すか? 困った時はお互い様ですとか言いながらこっちもいきなり困った。困ったからオーシンさんに爺様の名前はなんですか? と聴くわけにもいかない。俺は爺様に自分でなんとかしろ! の意味を込めた視線を送る。

「儂は......し、白子、シラコ......そ、そうシ! ロッコじゃ」

 あ、爺様噛んだ。多分シラコって名乗るつもりだったんだろう。 

「朋広殿にシロッコ殿ですね。改めてお礼を」

 爺様は訂正する気はないらしい。そこへ正和が客用の布団を持ってきたので壁際に敷きオワタさんを横たわらせる。

「な、なんです、この寝具は!?」

 あー、布団でカルチャーショックくるのか。説明するのが面倒なのでここは勢いでごまかそう。

「そんな事よりお母様の具合はいかがですか?」
「え、ええ。ここへきて旅の疲れがでたのだと思うのですが......」

 そんなやり取りの中、幸依と華音が入ってきた。華音はなぜかニースが入手した事務用イスを持ってきている。

「妻の幸依と息子の正和に娘の華音です。お母様は妻に任せてこちらにどうぞ」

 俺はオーシンさんを華音の持ってきたイスに座るように促す。もうひとつ木のイスがあるがこっちには爺様でも座らせておこう。

「では失礼いたします。......ずいぶん変わった形ですな」

 オーシンさんが座る。

「え? えええ?」
「え? えええ?」

 二回驚いた。

「こ、この座り心地の良さはなんなんですか! この国の王とてこのようなイスには座っておりませんぞ!? うわわっ」

 オーシンさんは全身で驚きと感動を表現しようとしてイスが回転し、バランスを崩してイスから落下した。その反動でイスが移動する。キャスター付きだからな。

「こ、この仕掛けはなんのために......?」

 おっかなびっくり座り直す。

「助けていただいた恩人の前で見苦しいですよ、オーシン」
「母上! 気がつかれましたか!」
「ええ。あなたとこちらにいる皆様のおかげで」
「まずは皆様にお礼を。私はそこにいるオーシンの母親でオワタと申します」
「これはご丁寧に。私は朋広。目の前にいるのが妻の幸依、息子が正和で、娘が華音。イスに座っている爺様がシロッコです」

 家族の視線がオワタさんではなく爺様に集中する。気持ちはわかるが見るとこ違うぞー。

「どこの誰ともわからぬ者の為にこの様な素晴らしい寝具まで使わせていただき感謝しております。して、オーシン。私はどの位気を失っていたのですか?」
「馬車で母上の意識がなくなり、ここから立ちのぼっていた煙を目指して進みました。途中で馬車が通れる道がなくなり、母上を背負って二時間から三時間は歩いたでしょうか」
「え? 馬車置いてきてるんですか?」
「はい、一応馬は近くの木に繋いであります。あちらの方角です」

 馬車放置か。それはなんかまずそうな気がするな。

「華音、正和。ちょっと探してきてくれないか?」
「「うん、いいよ」」

 さすが素直な子供たちだ。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 オーシンさんは出ていった子供たちを引き留めようと慌てて外にでて......キョロキョロしている。見失ったんだろうな、たぶん。

「この私が見失う? いくらなんでもそれは......」

 ぶつぶつ言いながら戻ってくるオーシンさん。なんか狐につままれたって顔してるな。

「オーシンさん、うちの子供たちなら平気ですから何も気にせず休んでいてください」
「いやしかし、万が一魔物にでも襲われたら......この辺りにでる魔物は決して油断できるような相手ではありませんし。......まぁ、ここに住まわれているぐらいですから当然対策はしてあるのでしょうね」
「え? この辺り魔物がでるんですか? みた事ないんですけど」
「え?」
「え?」

 ......みつめあう俺とオーシンさん。どうやらまずはお互いの常識のすりあわせをしないと、言葉が通じても話は通じないらしい。
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