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23話 第二次境界線会談
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ルミナ、キエル、ヒラリエ、ダランの亜人四人はシロッコにより簡単に結界を越えて人間領へと移動した。
呆然としている四人の目の前で今度は朋広が木の輪切りテーブル(大)をアイテムボックスから取り出して配置し、周囲に木の輪切り椅子を並べていく。ここでオーシンが朝の出来事はこういう事だったのかと呆気にとられ、呆然としているメンバーに加わった。
さらに朋広はその場で人数分の木製コップを作製し、よく冷えた水を注いで振る舞う。亜人の四人は水の冷たさと質に驚きつつも、一息つけたのか各々思った事を口にする。
「この朋広という人物は素晴らしい工芸の腕前を持っているな。儂と同じ生産職なのかもしれん」
「アイテムボックスもかなり性能がいいもののようね。魔力が桁違いというだけでは性能について理由がつかないような気がしなくもないけど」
「アタイ達のアイテムボックスじゃこんにゃ冷たくて美味しい水は飲めにゃいにゃん」
「これだけの力を持った方々が、誰もわたくし達亜人を見下さずに接していただけるのはすごく喜ばしい事です」
「見下すもなにも、亜人の方々の存在を知っている人間が稀なので、そういう感情を持っている者はほぼいないと思います。私も友人から聞かねばあなた方の地を目指してここまで来なかったでしょう」
オーシンは素直に自身の身に起きた事と、朋広達の協力を得てここへ来た経緯を話した。
「なるほど......オーシンさんの事情には同情するけど、私達の所で暮らすっていうのは無理ね。理由は言わずとももうわかっていると思うけれど」
「ええ、あの蟻があちこちにいて、どこから出現するかわからないとなれば母の身が危険になります。とても安心して暮らせる場所とは言えません。追っ手がこないとしても危険度の方が高いですからね」
「儂らも奴等が現れてからは皆故郷を追われ、各地に点在して暮らしていたからな。むしろ安全に住める場所を探しているのは儂らの方だ」
「そうにゃ! 奴等のおかげでにゃかまも散り散りばらばらにゃ! 奴等をアタイの爪で引き裂いてやりたいけど、悔しい事に爪がたたにゃいにゃあ」
「私達の魔法も通じないから少人数で固まって暮らし、襲撃を受けたら各パーティーで散り散りに逃げる方法をとるしかなかったのよ。あ、それで思い出したんだけどね」
ルミナは正和を見て質問する。
「貴方......正和さんは私達が襲われている所を目撃した時に、なぜ私達にもう一人仲間がいるとわかったのかしら?」
「あ、それ俺も気になってたんだ。正和、始めから俺と華音に蟻は無視するように言ったもんな。何か理由があるんだろ?」
朋広もルミナに便乗する。
「うーん、簡単に言うとパーティー編成に違和感があったからそう推測しただけなんだけど」
「パーティー編成?」
「あー、特殊な知識からの引用と言えばいいかなぁ。それに当てはめると、戦闘においてはダランさんとヒラリエさんが前衛担当で、ルミナさんが中衛で魔法や弓で支援じゃないかって。だとするとパーティー編成としてはバランスが良くないんだよ。継戦能力を考えるなら後衛にもう一人、できれば回復役が欲しい。だけど実際にはいなかったから、もしかしたら逃げられない状況に置かれているんじゃないかって」
「え、ええ、私が逃げるのに足を引っ張ってしまい、振りきれないので全滅するよりはと皆を逃がす為に囮になりました。皆は反対しましたが、わたくしが強くおしきったのです」
正和の説明に辛うじて答える事の出来たキエルと、正和の考えを予測していたシロッコ、深く考えずに話を聞いていた華音以外はぽかんとした表情をしている。同じ表情ではあるが、意味するところは全然違った。亜人メンバーは、その場にいなかった正和がまるで現場を見てきたかのように状況を言い当て、さらに自分達の特性まで見抜いていた事に呆然とした。朋広とオーシンは正和が何を言っているのかがさっぱり理解出来ずにただ呆然としたのである。
ちなみにオーシンには前衛=槍隊、騎馬隊。中衛=弓隊。後衛=補給部隊に置き換えて説明したら納得して感心していた。元近衛騎士団五万の武芸指南役だけあって根っからの軍人だった。
「け、賢者と言う人種は皆そこまで物事を見抜くものなのかしら?」
「い、いえ、僕は賢者じゃないですよ。たまたま知っていた知識で考えただけで、むしろ世界については知らない事の方が多いのです。もっと色々知らなければいけないな、と」
「まぁ、彼は賢者と言われるのは時間の問題な気がするがの」
「お兄ちゃんすでに家では知恵袋だもんね」
「......すごいのかすごくないのかよくわからなくなるわね」
「ま、まぁ知恵者なのは確かなんだろう」
何もかも見透かされているのではないかと半分怯えているルミナの疑問を正和は否定するが、シロッコが補足し、華音がグレードの下がるフォローをする。
「でもにゃんでこっち側には蟻がいにゃいにゃ?」
「すみません。それを判断するにはまだ情報が少なすぎて......現時点ではいないと言い切れる訳ではなく、見たことがないとしか」
「......その事でひとつご相談があるのですが......」
「なんでしょうキエルさん」
「オーシン様の話ではないのですが、もしわたくし達亜人の皆がこちらに来て住むとしたら何か問題が発生するでしょうか?」
キエルの突然の話に朋広達は驚き、キエル以外の亜人達は驚愕した。フォックスリングであり、亜人の神を崇拝するキエルの壮大な計画が語られようとしていた。
呆然としている四人の目の前で今度は朋広が木の輪切りテーブル(大)をアイテムボックスから取り出して配置し、周囲に木の輪切り椅子を並べていく。ここでオーシンが朝の出来事はこういう事だったのかと呆気にとられ、呆然としているメンバーに加わった。
さらに朋広はその場で人数分の木製コップを作製し、よく冷えた水を注いで振る舞う。亜人の四人は水の冷たさと質に驚きつつも、一息つけたのか各々思った事を口にする。
「この朋広という人物は素晴らしい工芸の腕前を持っているな。儂と同じ生産職なのかもしれん」
「アイテムボックスもかなり性能がいいもののようね。魔力が桁違いというだけでは性能について理由がつかないような気がしなくもないけど」
「アタイ達のアイテムボックスじゃこんにゃ冷たくて美味しい水は飲めにゃいにゃん」
「これだけの力を持った方々が、誰もわたくし達亜人を見下さずに接していただけるのはすごく喜ばしい事です」
「見下すもなにも、亜人の方々の存在を知っている人間が稀なので、そういう感情を持っている者はほぼいないと思います。私も友人から聞かねばあなた方の地を目指してここまで来なかったでしょう」
オーシンは素直に自身の身に起きた事と、朋広達の協力を得てここへ来た経緯を話した。
「なるほど......オーシンさんの事情には同情するけど、私達の所で暮らすっていうのは無理ね。理由は言わずとももうわかっていると思うけれど」
「ええ、あの蟻があちこちにいて、どこから出現するかわからないとなれば母の身が危険になります。とても安心して暮らせる場所とは言えません。追っ手がこないとしても危険度の方が高いですからね」
「儂らも奴等が現れてからは皆故郷を追われ、各地に点在して暮らしていたからな。むしろ安全に住める場所を探しているのは儂らの方だ」
「そうにゃ! 奴等のおかげでにゃかまも散り散りばらばらにゃ! 奴等をアタイの爪で引き裂いてやりたいけど、悔しい事に爪がたたにゃいにゃあ」
「私達の魔法も通じないから少人数で固まって暮らし、襲撃を受けたら各パーティーで散り散りに逃げる方法をとるしかなかったのよ。あ、それで思い出したんだけどね」
ルミナは正和を見て質問する。
「貴方......正和さんは私達が襲われている所を目撃した時に、なぜ私達にもう一人仲間がいるとわかったのかしら?」
「あ、それ俺も気になってたんだ。正和、始めから俺と華音に蟻は無視するように言ったもんな。何か理由があるんだろ?」
朋広もルミナに便乗する。
「うーん、簡単に言うとパーティー編成に違和感があったからそう推測しただけなんだけど」
「パーティー編成?」
「あー、特殊な知識からの引用と言えばいいかなぁ。それに当てはめると、戦闘においてはダランさんとヒラリエさんが前衛担当で、ルミナさんが中衛で魔法や弓で支援じゃないかって。だとするとパーティー編成としてはバランスが良くないんだよ。継戦能力を考えるなら後衛にもう一人、できれば回復役が欲しい。だけど実際にはいなかったから、もしかしたら逃げられない状況に置かれているんじゃないかって」
「え、ええ、私が逃げるのに足を引っ張ってしまい、振りきれないので全滅するよりはと皆を逃がす為に囮になりました。皆は反対しましたが、わたくしが強くおしきったのです」
正和の説明に辛うじて答える事の出来たキエルと、正和の考えを予測していたシロッコ、深く考えずに話を聞いていた華音以外はぽかんとした表情をしている。同じ表情ではあるが、意味するところは全然違った。亜人メンバーは、その場にいなかった正和がまるで現場を見てきたかのように状況を言い当て、さらに自分達の特性まで見抜いていた事に呆然とした。朋広とオーシンは正和が何を言っているのかがさっぱり理解出来ずにただ呆然としたのである。
ちなみにオーシンには前衛=槍隊、騎馬隊。中衛=弓隊。後衛=補給部隊に置き換えて説明したら納得して感心していた。元近衛騎士団五万の武芸指南役だけあって根っからの軍人だった。
「け、賢者と言う人種は皆そこまで物事を見抜くものなのかしら?」
「い、いえ、僕は賢者じゃないですよ。たまたま知っていた知識で考えただけで、むしろ世界については知らない事の方が多いのです。もっと色々知らなければいけないな、と」
「まぁ、彼は賢者と言われるのは時間の問題な気がするがの」
「お兄ちゃんすでに家では知恵袋だもんね」
「......すごいのかすごくないのかよくわからなくなるわね」
「ま、まぁ知恵者なのは確かなんだろう」
何もかも見透かされているのではないかと半分怯えているルミナの疑問を正和は否定するが、シロッコが補足し、華音がグレードの下がるフォローをする。
「でもにゃんでこっち側には蟻がいにゃいにゃ?」
「すみません。それを判断するにはまだ情報が少なすぎて......現時点ではいないと言い切れる訳ではなく、見たことがないとしか」
「......その事でひとつご相談があるのですが......」
「なんでしょうキエルさん」
「オーシン様の話ではないのですが、もしわたくし達亜人の皆がこちらに来て住むとしたら何か問題が発生するでしょうか?」
キエルの突然の話に朋広達は驚き、キエル以外の亜人達は驚愕した。フォックスリングであり、亜人の神を崇拝するキエルの壮大な計画が語られようとしていた。
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