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22話 第一次境界線会談
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正和は朋広が背負ってきた亜人の女性を地面に降ろし、介抱を他の亜人に任せた。猫耳少女が喜びによる泣き顔で名前を呼びながら手を握り、エルフの女性が怪我などをチェックし、ドワーフの男性が見守っている。
「良かったねお兄ちゃん。これで隠しルートとやらが開放なんでしょ?」
「華音と父さんのおかげだよ。これで向こうの硬かった態度が一気に軟らかくなると思う」
「パパはあの亜人さん背負って運んだだけだけどねー。破壊神の大暴れする姿をみてただけ」
「うぐっ。まだパパをいじめるかー。パパだってなぁ......あ、途中でこんな物拾っておいたぞ」
朋広は杖のような物をアイテムボックスから出して正和に渡す。
「あ、華音もオーシンさんにペンダント返さなきゃ」
華音もポケットからペンダントを取り出す。ペンダントは四人の亜人の方向を指し示していた。
「それはそのままどなたか持っていてください。私が持っていても役に立ちそうもありませんから」
「じゃあ......お兄ちゃん、はい」
「なんで皆僕に渡すのかな? あ、杖の先端とペンダントになってる部分、なんだか似てるかも」
「やっぱこの手のアイテムは正和が持つのが似合うな」
「ゲームアイテムっぽいのが似合うよね」
「ほめられてる気がしないんだけど」
「う......」
正和がペンダントをアイテムボックスにしまうとキエルと呼ばれた女性が気付いた。ネコ・ミミさんなのかネコミーさんなのかは分からないが、猫耳少女が泣きながら抱き付く。
「キエル! キエル! 良かったにゃあ。助かったにゃあ!」
「え......ヒラリエ? ......ルミナに……ダランも?」
「お前さんのおかげで儂らは無事だ」
「そう。......でもみんなが無事ならわたくしは無事な訳が......」
「それが本当なのよ。信じられないけど結界を越えてきた人族のおかげでね」
エルフのルミナがそう言い視線を移すと、他の亜人も正和達を見る。正和は改めて自己紹介する。
「皆さんご無事でなによりです。僕は人族の正和。こちらが父と妹の朋広と華音、こちらがオーシンさんにシロッコじいちゃんです。よろしくお願いしますね、エルフのルミナさんに、ドワーフのダランさん。猫人族のヒラリエさんにフォックスリング、もしくは狐人族のキエルさん。でよろしいですか?」
「私達の種族まで知っている!? はぁ......それじゃこんな偽名なんて名乗った瞬間にばれてたって事じゃない」
「だ、だからアタイは最初から騙すのよくにゃいっていったにゃん!」
「そんな事一言だって」
「ルミナ、ヒラリエ。まずはわたくしにお礼を言わせていただけないでしょうか?」
ダランに手を借りて立ち上がったキエルが正和達の前に進み出る。
「お初にお目にかかります人族の方。わたくしはフォックスリングのキエルと申します。この度は仲間だけではなく、わたくしまで助けていただき深く感謝いたしております」
そう言ってキエルは正和達の前に跪く。正和達はキエルの丁寧な物言いと上品で優雅な仕草に言葉を失う。
「はー。対応がさっきの亜人さん達とは全く違うねー」
「こ、こら華音。妹が失礼しました。ご丁寧にありがとうございます。皆さんを助けたかったのは僕達全員の意思なので気にしないで下さい。それより父さんがこれを拾ってきたのですが、キエルさんの物ではありませんか?」
正和は赤くなりながら杖を渡す。
「まぁ、これは確かにわたくしの杖です。まさか愛用の杖まで無事だなんて。これも神のご加護ですわね」
「神? 亜人の神は神族......今の呼び方は魔族でしたね。その魔族に討たれて存在していないときいていましたが......」
「ちょっ! そんな事までどうして人族の貴方が知っているの!? 伝承として私達の一部には伝わっているけど、人族が誕生する遥か以前の話なのに」
「人族と亜人が手を取り合っていた時代もあったのでしょう? 人族の方にそういう言い伝えが残っていても不思議ではないですよね? もちろん、その後に人族と争いが起きた事も知っています」
正和はルミナの疑問にすぐさま辻褄を合わせて答える。正しくは人族には伝承をほとんど残せてなどおらず、自分達の神すらいないという考えが主流なのだが亜人のルミナがそれを知るはずもない。正和もこの時点ではこの事を知らないのだが、説得力を持たせる事には成功した。成り行きを見守っていたシロッコは、正和が困るようなら助け船を出そうとしていたが感心しながらも提案する。
「よろしいかな? 話が長くなりそうじゃから、一度向こう側に移動してからゆっくり話してはいかがかの? ここじゃとまたさっきの蟻が現れんとも限らん。大賢者と呼ばれる儂なら結界を越える事など造作もない事じゃからな」
亜人に対して神の立場をまだ伏せておきたいシロッコが、それとなく自身の設定を加えて提言した。
「良かったねお兄ちゃん。これで隠しルートとやらが開放なんでしょ?」
「華音と父さんのおかげだよ。これで向こうの硬かった態度が一気に軟らかくなると思う」
「パパはあの亜人さん背負って運んだだけだけどねー。破壊神の大暴れする姿をみてただけ」
「うぐっ。まだパパをいじめるかー。パパだってなぁ......あ、途中でこんな物拾っておいたぞ」
朋広は杖のような物をアイテムボックスから出して正和に渡す。
「あ、華音もオーシンさんにペンダント返さなきゃ」
華音もポケットからペンダントを取り出す。ペンダントは四人の亜人の方向を指し示していた。
「それはそのままどなたか持っていてください。私が持っていても役に立ちそうもありませんから」
「じゃあ......お兄ちゃん、はい」
「なんで皆僕に渡すのかな? あ、杖の先端とペンダントになってる部分、なんだか似てるかも」
「やっぱこの手のアイテムは正和が持つのが似合うな」
「ゲームアイテムっぽいのが似合うよね」
「ほめられてる気がしないんだけど」
「う......」
正和がペンダントをアイテムボックスにしまうとキエルと呼ばれた女性が気付いた。ネコ・ミミさんなのかネコミーさんなのかは分からないが、猫耳少女が泣きながら抱き付く。
「キエル! キエル! 良かったにゃあ。助かったにゃあ!」
「え......ヒラリエ? ......ルミナに……ダランも?」
「お前さんのおかげで儂らは無事だ」
「そう。......でもみんなが無事ならわたくしは無事な訳が......」
「それが本当なのよ。信じられないけど結界を越えてきた人族のおかげでね」
エルフのルミナがそう言い視線を移すと、他の亜人も正和達を見る。正和は改めて自己紹介する。
「皆さんご無事でなによりです。僕は人族の正和。こちらが父と妹の朋広と華音、こちらがオーシンさんにシロッコじいちゃんです。よろしくお願いしますね、エルフのルミナさんに、ドワーフのダランさん。猫人族のヒラリエさんにフォックスリング、もしくは狐人族のキエルさん。でよろしいですか?」
「私達の種族まで知っている!? はぁ......それじゃこんな偽名なんて名乗った瞬間にばれてたって事じゃない」
「だ、だからアタイは最初から騙すのよくにゃいっていったにゃん!」
「そんな事一言だって」
「ルミナ、ヒラリエ。まずはわたくしにお礼を言わせていただけないでしょうか?」
ダランに手を借りて立ち上がったキエルが正和達の前に進み出る。
「お初にお目にかかります人族の方。わたくしはフォックスリングのキエルと申します。この度は仲間だけではなく、わたくしまで助けていただき深く感謝いたしております」
そう言ってキエルは正和達の前に跪く。正和達はキエルの丁寧な物言いと上品で優雅な仕草に言葉を失う。
「はー。対応がさっきの亜人さん達とは全く違うねー」
「こ、こら華音。妹が失礼しました。ご丁寧にありがとうございます。皆さんを助けたかったのは僕達全員の意思なので気にしないで下さい。それより父さんがこれを拾ってきたのですが、キエルさんの物ではありませんか?」
正和は赤くなりながら杖を渡す。
「まぁ、これは確かにわたくしの杖です。まさか愛用の杖まで無事だなんて。これも神のご加護ですわね」
「神? 亜人の神は神族......今の呼び方は魔族でしたね。その魔族に討たれて存在していないときいていましたが......」
「ちょっ! そんな事までどうして人族の貴方が知っているの!? 伝承として私達の一部には伝わっているけど、人族が誕生する遥か以前の話なのに」
「人族と亜人が手を取り合っていた時代もあったのでしょう? 人族の方にそういう言い伝えが残っていても不思議ではないですよね? もちろん、その後に人族と争いが起きた事も知っています」
正和はルミナの疑問にすぐさま辻褄を合わせて答える。正しくは人族には伝承をほとんど残せてなどおらず、自分達の神すらいないという考えが主流なのだが亜人のルミナがそれを知るはずもない。正和もこの時点ではこの事を知らないのだが、説得力を持たせる事には成功した。成り行きを見守っていたシロッコは、正和が困るようなら助け船を出そうとしていたが感心しながらも提案する。
「よろしいかな? 話が長くなりそうじゃから、一度向こう側に移動してからゆっくり話してはいかがかの? ここじゃとまたさっきの蟻が現れんとも限らん。大賢者と呼ばれる儂なら結界を越える事など造作もない事じゃからな」
亜人に対して神の立場をまだ伏せておきたいシロッコが、それとなく自身の設定を加えて提言した。
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