一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

文字の大きさ
22 / 84

21話 異種族コミュニケーション

しおりを挟む
 正和は困っていた。エルフ、ドワーフ、猫人の亜人三人を巨大な蟻から救うため、生まれて初めてゲームではないリアルな戦闘を経験した。蟻の攻撃力を上回る防御力を持って戦い方を出来るだけ学び、最後は蟻にやられた突進を意趣返しする事で蟻を吹っ飛ばし、そのまま後退させる事に成功する。

 戦闘が終了したなら、流れとしては亜人とのコミュニケーションをとらねばならない場面となる訳であり。正和は人見知りで内向的なタイプだと自分の性格を自覚している。目の前にはゲームや映画などでしか知らない種族がいるうえ、さらに、エルフ=美人。猫耳少女=可愛い。ドワーフ=渋い? とくれば、なんと話しかければいいのか悩むのは当然で、正和にはハードルが高い問題だった。

 正和はシロッコとオーシンを横目で見るが、話を進めてくれる様子はなさそうだ。亜人の三人の視線は友好的なものとは言い難く、むしろ警戒&観察の意味合いが強い。猫耳少女からは好奇の視線も感じる。

 正和の脳裏には、なぜか自分以外が異世界で同じ場面に遭遇したら敵を無慈悲に殲滅しただけで、エルフと猫耳少女には問答無用でとんでもなく惚れられ、ドワーフは下僕に近い関係になっている理不尽な映像が浮かんだ。

「危ないところでしたね」
「......ええ。一応助けてもらった事にはお礼を言わせていただくわ」
「あ、僕は正和といいます。こちらがオーシンさんにこちらがシロッコじいちゃんです」
「......私はエル・フよ。こっちがド・ワーフにそっちがネコ・ミミ」
「おうふ」
(はい、どう考えても偽名です。本当にありがとうございました)

 エル・フと名乗ったエルフの女性がこういう場では権限があるのか、他の亜人の二人は一瞬ぎょっとしてエルフの女性を見たが特に何も言わなかった。とりあえず静観するつもりなのだろう。正和がさてどうしたものかと頭を悩ませた時、森から何かが空に向かってとんでいった。速度が速く正和には黒い塊のようなものにしか見えなかった。

「え!? 今蟻がとんでいったにゃりよ!」
「蟻でしたか。蟻は空も飛べる能力も持っているんですか?」
「そんな訳にゃいにゃ! 奴等に空まで飛ばれたら、アタイ達にゃあもうどうしようもにゃくにゃるにゃ!」

 ネコ・ミミがにゃーにゃーにゃーにゃーと捲し立てる。

「あー、じゃあ多分あれをやったのは僕の家族だと思います」
「そういえば儂らの横を誰かが駆けて行ったな」
「僕の父さんと妹です」
「き、君の家族はみんにゃあんにゃに強いのにゃ?」
「彼等はちと特別でな。お主らが人族についてどれ程の知識を持っているかはわからんが、そこのオーシン殿が武術においては人族の最高峰クラスじゃろうな」
「私などまだまだですが恐縮です」

 シロッコが正和の代わりに説明し、オーシンが畏まる。

「おお、あの戦い方は見事だった! あの蟻に何もさせん動きなどは蟻と何度も戦っておらんと身に付くものじゃないぞ!」

 ド・ワーフが感心したように言う。

「いや、私もあのような蟻の魔物と戦ったのは初めてでした。人族領でも蟻の魔物の話などは一度も聞いた事がありません」
「「「え!?」」」

 オーシンの返事はよほど意外だったのだろうか、亜人の三人はお互いの顔を見合わせて固まっている。森からはまた三匹の蟻が空に向かって打ち上がった。それからすぐにお兄ちゃーんという声が聞こえてくる。

「ただいまー。お兄ちゃんの言った通りだったよー......って服ボロボロじゃない!」
「蟻一匹相手にこのザマよ!」
「お兄ちゃんは本来頭使うのが担当だもん、仕方ないねー。ケガはないんでしょ?」
「無傷だね。でもそれなりに学習したよ? 最後は蟻の突進にカウンターで華音タックル真似て吹っ飛ばしたし」
「おー。華音もお兄ちゃんの敵は討っておいたからね♪」
「蟻が空に向かって打ち上げられてたのはやっぱり華音か」
「へっへー♪ 全部で五匹。華音一人で瞬殺だったよ。華音のクンフーサッカーと野球拳の前に敵はいなかったのだ」
「サッカーと野球? どっちもスポーツじゃないか」
「ご......五!?」
「にゃっ瞬殺!?」

 驚いているのは亜人の方々だ。

「やっぱりアタイの言った通りまにゃんでたにゃん」
「そ、そうね。正気を疑うけど」
「蟻を練習相手だとか五匹瞬殺だとかどんなだよ!」

 三人でボソボソ話している。そこへ華音が無邪気に挨拶に行った。

「私は華音です。皆さん無事で良かったですね」
「ひっ!?」
「蟻よりすごいプレッシャーにゃ!」
「こ、これは儂らでは相手にもならん」
「うわー......。挨拶しただけなのにひどい言われよう」
「そ、そうね、ごめんなさい。わ、私はエ・ルフ」
「ド、ドワー・フだ」
「ネコミーにゃ」
「皆さん名前が最初と変わってますね」

 正和は亜人に突っ込みを入れつつ朋広が近付いてくるのを確認していた。

「そ、そうだったかしら?」
「突然結界を越えて僕達が現れたら警戒するのは分かりますが、こちらに悪意はありませんよ」
「......それを信じろ。......と?」
「お互いの真意をまだ話していないですからね。僕達の方には狙いというよりお願いに近いものがあったんですが。加勢したのは善意からです」
「お願い? 人族が私達に?」
「ええ、エルフ族のお姉さん。ですがその前にひとつ。皆さんには一緒に行動していた方がいたんじゃないですか?」
「にゃ、にゃんでそんにゃ事まで知ってるのにゃ!」
「お前さん達と蟻に関係性はないのだろうな?」
 
 正和の質問に反応したのは猫耳少女だ。ドワーフは正和達と蟻に繋がりがあるのかと疑っている。その時正和の隣に朋広が戻ってきた。

「うわ、服ボロボロになってるな」
「お帰り父さん、体は無傷だから。それよりその人が?」
「ああ、お前が予想した通りなんだろ? 華音が瞬く間に救出したよ」
「予想が当たって良かったよ。これで話がこじれずにすみそうかな」

 正和は親子の会話を一旦打ち切って亜人達に向き直る。

「皆さんと一緒に行動していたのはこの方ではありませんか?」
「「「キエル!!」」」

 正和が朋広の背中から亜人を抱きかかえ姿が見える様にすると驚いた亜人三人が駆け寄ってきた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...