一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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25話 真・亜人移住計画

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 強大な力を持つ者で構成された家族すら悩ませる問題が存在する。その事実は亜人達やオーシンの興味を引いた。自然とその場に沈黙が訪れる。その問題の内容を一字一句聞き逃すまいとした皆の思いが場に緊張感を生み出したためだ。

 朋広は正和を見る。正和は仕方ないといった感じで無言で頷いた。朋広は覚悟を決めたのか、大きく一度息を吐きながらしがみついている華音の頭に右手を置き、短く

「食料問題です」

 本当に一言だけそう言った。

 は? え? 数秒間の沈黙の後、返ってきた反応はこの二文字のどちらかだった。細かい内訳を述べれば、は? の反応がオーシンとダラン。え? の反応がキエル、ルミナ、ヒラリエだ。

「ええと......それは食料の備蓄がない、という事でよろしいのでしょうか?」

 キエルが確認する。

「そうですね。他にも細かい問題はいくつかあるにはあるんですが、今のままだとこの問題が発生するのが早いかな、と」

 朋広が答える。
 
「......あれだけ強いのに貧乏にゃのかにゃ?」
「わ、私と母がお世話になっておりますが、この世の物とは思えない程美味しい料理の数々を食べ、王ですら使った事もないのではないかと思える高級な道具をお持ちの方々なのです。人族の一般的階層のように貧困に苦しんでいるとはとても思えません」
「そう言われれば確かに水はすごく美味しかったにゃも......食べ物もすごいにゃ?」
「......それはもう」
「儂も思わず震えて泣いたのぅ」
「......ゴクリにゃ」
「そ、そんなに美味しいの?」
「幸依さんという方の腕前がすごくてですね。そうそう、お酒も飲めば今までのお酒が泥水の如く感じます」
「何!? 酒もか!」
 
 オーシンが全身で溜めをつくってまで肯定し、シロッコまで完全同意した事でヒラリエは喉を鳴らし、ルミナとダランも関心を示した。食料の備蓄がないという点を話したはずなのに、一家がどんな食事をしているか解き明かす場になってしまった。

「父さん、華音、ちょっといいかな?」

 正和が家族にだけ聞こえるように声をかけて近寄ってくる。華音も朋広から離れ三人で家族会議だ。

「食事の話が出たついでにって言うのもなんだけど、どうせなら彼等に士気を高めて貰う為、母さんが持たせてくれたお弁当を振る舞うのはどうかな?」
「お兄ちゃんそれいいよ! 賛成!」
「何も出来ずに死地に送り出すよりましだよな......父さんも賛成だ」

 食事をしながら事情を説明するという、正和の提案は歓声を持って迎え入れられた。食料難なのに私達にまで、という声も当然あったが、最後の晩餐になるかもしれない食事は美味しいものが食べてみたい、という欲求と正和達の厚意もあり、食事会が開催される運びとなった。幸依の用意したお弁当は五人分だったが、まさか現地でメンバーがほぼ倍の九人になっているとは幸依も想像していないだろう。用意されたメニューは、おにぎりにサンドイッチ、鶏の唐揚げにサラダ、お茶という定番メニューではあったが、

「さすが母さん。……これ絶対五人分の量じゃないよね」
「ダメになる事はないからたくさん作っちゃったのかなー」
「て、天然がいい方向に働いたって事でひとつ......」

 余裕で全員に行き渡る量があった。それらをテーブルに広げながらサラダと唐揚げにはマヨネーズを使っても美味しいです、など説明を加える。正和はヒラリエは猫人なので猫舌かもしれないと、お茶は熱いので冷たい水の方が良いかと聞いたりして気を使っていた。

「に、肉うみゃー! 肉うみゃー!」
「こ、これは......初めてみる食べ物もありますがとても美味しい......」
「そうでしょう、そうでしょう。私と母がご馳走になった時も驚きと感動の連続でしたよ!」
「このマヨネーズ......サラダにこんなに合うなんて。是非とも作り方を教わりたいわ......」
「唐揚げにもとっても合うにゃ! 肉うみゃー! 水もうみゃー!」
「パンも恐ろしいほど高品質な上に美味い。このおにぎりという食べ物も儂の好みだ。お、中に......焼き魚か!」
「さ、さかにゃもあるにゃ!? アタイも食べるにゃ! し、幸せにゃあ」
「ほっほ。皆幸依さんの料理に魅せられたようじゃな」
「オーシン様が言っておられた意味が今ならわかります。確かにこのレベルの食事ができる方々が貧困とは思えません」

 キエルが納得したように言う。そこで朋広達が現在拠点を構えている場所での生活の問題点などを説明していく。これらを作る為の食材や生活用品が不足している事、用意する為の場所なども造成中であるがまだ手が回っていない事。

 最終的に自分達の生活水準をもっとあげたいのだが、色々始めたばかりであちこち手をつける余裕がない事も説明した。説明途中で食事も終了し、皆朋広の説明を聞いていた。

「は、はにゃしを聞いただけだけど、生活水準があがるというのはとてもステキにゃ未来に思えるにゃん」
「ふーむ。実現させるための道筋は見えているが、時間、人の手、物資が不足なのか」
「そうですね......次はこれをやろうと予定を立てると予定外の別の案件が舞い込んできたり、という感じです」
「す、すみません。私が母を連れて駆け込んでしまったばかりに......」
「あ、いや! オーシンさんを責めている気は全然ないので!」

 うなだれるオーシンに朋広がフォローをいれる。話を聞きながらずっと考え事をしていたキエルは、その様子をみて笑顔を見せた。

「ふ、ふふふ。......やはりこれはアリア様のお導きだったのです」
「キエル......?」
「ルミナ。......私は貴方達にも決断を強いますよ」

 キエルはルミナの返事も聞かずにその場に立ち上がる。目の前のテーブルの上はすでに片付けられていて何もない。

「朋広様、見ていただきたい物がございます」

 キエルはテーブルの上に自分のアイテムボックスの中身を次々に出して並べていく。その中には食材や布地、細工品などがあった。 

「ルミナ、ヒラリエ、ダラン? 何をぼーっとしているのですか。貴方達の持っている品も出すのです。全部ですよ」

 キエルの有無を言わさぬ態度に、指名された者達は困惑しながらも言われた通りにする。テーブルの上にはさらに果実などの食材や、武器や防具なども加わる。

「あ、パパ、お肉も野菜もあるよ」
「布地もあるな。細工品や武器はパパにはよくわからないけど」

 華音と朋広の会話を聞きながら今度は正和が思案を始める。その様子をみながらシロッコが誰にも聞こえないように呟いた。

「ほっほ。彼等は世界復旧の鍵。キエルという亜人は諦めぬ心と本質を見抜く目は持っておったようじゃな。これで亜人の運命、大きく変わるやも知れぬ」
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