一家で異世界に引っ越ししたよ!

シャア・乙ナブル

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26話 正式加入と未知なる存在

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 テーブルの上には色々な物資が積まれている。

「わたくし達は蟻に襲われた際に各パーティーでわかれて逃亡するようになったため、集まる物資のほぼ全ては各人が分担して常に持参しているのです」
「そうなんですか。だからこんなに色々な品物が......」

 突然キエルは朋広の前にきて地面に正座し頭を下げた。

「どうかお願いです! わたくしの仲間を救出するためにその卓越したお力をお貸しください!」

 突然の事に朋広も華音も困惑する。

「こちらの品は全て提供させていただきます! それに亜人は基本的に皆アイテムボックスを所有していますので、救出できれば確実に食材や資材は入手できます! さらにその上で、わたくし達と救出された者は開拓作業にも協力します! なのでどうか! どうか!」

 ......キエルは泣いていた。そんなキエルの姿を見たヒラリエが。ダランが。そしてルミナも同じように朋広達家族を囲んで頭を下げて泣きながら訴えた。皆本心は仲間を助けられる可能性が高い方法を選びたかったのだ。仲間を助けるための亜人達の決意はオーシンにも影響を与えた。

「朋広殿はその様な事情は口にも出さずに私と母を受け入れてくださった。彼等とてこれ程の決意を示しているのに、自分だけが厚意に甘んじられません。朋広殿、どうか彼等の願いを聞き届け、私にもその開拓を手伝わせていただきたい!」

 オーシンもその中に加わる。

「パ、パパ? ど、どうするの?」

 本音は助けたいであろう華音だが、先程の事もあり自分からは言い出せない。朋広もまさかこんな大げさになるとは考えてなかった。

「と、とりあえず皆さん頭を上げてくださ」
「助けると言っていただけるまで上げません!」
「うわー......」

 お願いを即座に否定され、朋広は困った。無言で正和を見る。

「計画だけで言うなら、最初の時は支障がでる確率が高かったから反対したけど、この条件を受け入れた上で計画を実行すると......むしろ色々捗ると思う。皆が幸せになれるなら反対する理由はないかな。父さん達には心配をかけるかも知れないけど、僕が助けに行ってもいいよ」
「! か、華音も力になれるなら協力したい!」
「不確定要素はまだあると思うけど、そこは色々考えてみるよ」
「ま、正和さん!」
「あ、ありがとうにゃ!」

 キエル達も顔を上げて感謝し、今度は全員の視線が朋広に集中する。

「う、うう。......ここで反対したら一人だけ悪者みたいじゃないか」
「ほう? 儂が見る限り別に反対したいようには感じぬのじゃがなぁ?」
「ああ、なるほど。そういう事ね」
「え? お兄ちゃんどういう事?」
「父さん、母さんの説得よろしくね」
「うぐ。......ああもうこうなりゃやけだ! やってやるよ!」

 歓声があがり朋広、正和、華音、シロッコは何度もお礼を言われた。そのまま全員で家へ戻り計画を考える事になったのだが、来たときよりも人数が増えてしまったので背負う訳にもいかず、朋広がその場で何か用意する事になった。テーブルの上の物資に関しては正和が一人だけで全部回収した。

「儂らが分担して持っていた荷物を一人で回収とは......」
「まだ魔法を使っている所は見た事ないけど、あの魔力量なら相当の使い手のはずよ」

 朋広はアイテムボックスの木材を使い、取っ手の付いた枡席(ますせき)のような物を完成させた。この取っ手を朋広、正和、華音、シロッコが持ち、亜人とオーシンを乗せて移動しようという計画だ。接合と耐久強化という、視覚的効果のない力を行使しているため、傍目(はため)には木を並べてはそれらが何故かくっついているようにしか見えなかった。

「はぁ!? 釘も接着剤も使用せずに仕上げただと!? どんな技法だ!」

 ダランが目を丸くして口をあんぐりと開けている。ダランの発言に正和が食いつく。

「接着剤! 接着剤があるのですか? どんなものですか?」
「え? いやそりゃ儂ら的には普通にセメントとかにかわとか松ヤニなんかを利用してるが......」
「セメントキタコレ! 材料あれば作れますかね?」
「あ、ああ、それは可能だが、そんなもの使わずにやってるあの技術の方がすごいだろう」

 正和はその返事を聞いておらずガッツポーズをとっていた。朋広は更に身長差によって傾いてしまう華音の担当する取っ手部分を、やはりなんの道具も使わずに曲げたりして調整している。

「も、木材が粘土みたいに簡単に!? あ、ありえん。......ドワーフが誕生してからの歴史の中でも、こんなでたらめな技法は誰も身につけた事はないと断言できる。ぜ、是非とも教えを乞いたい」
「後日になさいな。彼等に予定外の行動をとらせるんじゃないわよ」
「わ、わかっている......しかし、惜しい」
「さぁ、これでいいかな。男性は前に、女性は後ろに乗ってください」
「こんな厚みで我々全員の重量を支えきれるだと!? わ、儂の職人としての常識が音を立てて崩れていく」
「おお。......我等が神に感謝します」
「ああ……あの地獄に再び赴くのか......」
「にゃ? 行くのは彼等の拠点にゃりよね?」

 念のため華音の持つ飴の中からハッカだけを五人に渡す。気分が悪くなったら食べて貰う為だ。オーシンはすでに色々経験しているので、喜んで受け取っていたが、手に持ち続けると溶けてしまうので、隣のダランのアイテムボックスにしまってもらっていた。華音はハッカは苦手なので減って嬉しいという、WinWinの関係だ。そして亜人達の異世界での絶叫マシーン初体験の結果は......。

「にゃはは! 凄かったにゃあ! 楽しかったにゃあ!」
「......わ、儂は出来れば遠慮したい」
「............」
「この程度、神の試練にもなりません」
「......じ、獣人を基準にしないでもらえる?」

 ヒラリエは楽しみ、キエルは平然としていた。ダランとルミナは疲弊しているのがわかる。オーシンは完全にグロッキー状態だ。個人差もあるだろうが、種族の特性も関係しているかもしれない。ヒラリエとキエル以外は配られたハッカを食べていた。

 家に着いた時には夜も更けていた為、亜人メンバーをログハウスへ、オーシンとオワタには朋広達の家へと移動してもらう。オーシンとオワタは家の構造や妙な形の電気製品や家具などを見て、一家揃って芸術家なのかとも考えた。

 お弁当の一件は幸依が一度用意した事を忘れて再度用意した為、十人分のお弁当になっていた事が判明。洞口家の拠点となるはずだったこの場所は、現地の人間のオーシンとオワタ、亜人のキエル、ルミナ、ヒラリエ、ダランが加わり、ちょっとした集落になりつつ一日の終わりを迎えようとしていた......。


~亜人領のとある場所~

 薄暗いその場所にその者はいた。周囲にはたくさんの巨大な蟻。だがこれだけの蟻に囲まれていてその者は余裕の表情を見せていた。その者の前に一匹の蟻が進み出てくる。ギチギチと大顎を鳴らす蟻にその者は笑みさえ浮かべ、蟻の触角に手を伸ばす。

「そち達を撃退した亜人......のぅ? その様な亜人がいるなら興味深い。妾も是非その者の顔を見てみたいものじゃ。といっても、妾の邪魔は許さんがな」

 その者......まだ顔に幼さの残る顔立ちの少女は言う。

「この世界の全ては神である妾の物なのだから」

 と。
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