22 / 166
第二十二回 北京大名府への潜入
しおりを挟む
楊志は北京大名府にいた。それも牢の中に。
なぜこんな事になったのかと言えばそう仕向けたからだ。
朱貴から生辰網の話を聞かされた梁山泊の面々はそれを強奪するため画策する。まずは腕の立つ者という事で林冲と楊志が候補に挙がったが、林冲はお尋ね者になっているのでそうはならなかった楊志が潜り込む事になった。
北京大名府に到着した楊志と部下達はまず別々に酒屋に入り騒動を起こす。店にいちゃもんをつけ暴れ始める部下十二名。誰かが役人を呼びに走っている間、それを『たまたま』店にいた楊志が止めに入り打ちのめした。
部下達を追い払い店に迷惑料だと金子を渡し、駆けつけた役人に事情を聞かれるため暫し牢に拘留される。
役人にも賄賂を渡し、店の者からの陳情もあり後は武勇伝がある人物の耳に入るのを待つ。
果たして……その人物は楊志の前に現れた。
北京大名府の司令官、梁世傑その人である。
ならず者を一人で蹴散らしたという報告を聞き、直接会ってみようという気になった。一定の手順を踏むより早いだろうと楊志に興味を持たせる為の芝居が功を奏したのだ。
その後楊志の出自や経緯(開封府から放浪している設定)を聞いた梁世傑は、どうしても楊志を部下に加えたくなった。そこで御前試合を開き、武官の一人、周謹(しゅうきん)と戦わせたところ楊志はこれを軽く破り梁世傑を大いに喜ばせる。
余りに喜び、相手をした周謹の就いていた役職にそのまま任命しようとしたのだが、ぽっと出の楊志を良く思わない男が一人待ったをかけた。
男の名は索超(さくちょう)。周謹の上官であり武芸の師でもあった索超はこれを不服として楊志に戦いを挑んだ。大名府では急先鋒(きゅうせんぽう)と渾名される程短気で、金蘸斧(きんさんぷ)という金色の大きな斧を得物としていた。
楊志と索超は梁世傑の目の前で好勝負を繰り広げ、楊志を認めた索超の薦めもあり、彼は索超と同じ提轄使(ていかつし・憲兵の長)に任命される。
やや話が上手く行き過ぎた感はあったが、まずは官職を得て大名府に留まる事に成功した楊志。
そしてその幸運は続き、狙い通り生辰網運搬の為の計画立案とその護送を任される事になった。楊志の本当の目的はこれの強奪なので、いかに梁山泊のせいに見せかけずに奪わせるかを考えなければならない。まともに軍で周囲を固めて梁山泊付近を通れば必ず双方に被害が出るし梁山泊が敵視されるのは確実だ。
ゆえに梁山泊軍には空振りをさせて、謎の一団として編成した梁山泊の別働隊にでも生辰網を奪わせるのが矛先をこちらに向けない最上の展開だろうと楊志は考えた。
「護送部隊は囮?」
「そうです。護送部隊は梁山泊近くを通り、そこで賊の部隊を引き付けます。その間に少数編成の運搬部隊がその地を一気に抜けてしまうのです。梁山泊さえ抜けてしまえば生辰網は無事に蔡京様のもとへと届きましょう」
梁世傑はなるほどと考える。
「囮の指揮官は誰が良いと考える?」
「周謹がよろしいかと。私は商隊の振りをした少数の部隊を率いて囮の部隊と梁山泊の賊どもが睨みあっている間に裏道を一気に抜けてしまいます」
「ふむふむ。いけそうだな」
だがそこに待ったをかけた男がいた。索超である。
「待て楊志」
「なんだ索超」
「俺は考えるのは苦手だから方法は任せる。だがそこには俺の出番がないではないか」
「……いや、索超は大名府を守るという重要な仕事があるだろう」
「それはつまらん。そうだ、周謹の役目を俺とかえてくれ」
「な、なに?」
索超は楊志と引き分けた腕前の男。梁山泊の楊志としては周謹相手の方がやりやすいがここで拘り疑念を抱かれては元も子もない。結局押し切られる形で囮部隊を率いるのは索超となってしまった。
多少目論見が狂った楊志。大名府に潜んでいる部下にその旨も加えて梁山泊へと伝えさせた。
果たして、梁山泊の面々による生辰網強奪計画の結末は……
なぜこんな事になったのかと言えばそう仕向けたからだ。
朱貴から生辰網の話を聞かされた梁山泊の面々はそれを強奪するため画策する。まずは腕の立つ者という事で林冲と楊志が候補に挙がったが、林冲はお尋ね者になっているのでそうはならなかった楊志が潜り込む事になった。
北京大名府に到着した楊志と部下達はまず別々に酒屋に入り騒動を起こす。店にいちゃもんをつけ暴れ始める部下十二名。誰かが役人を呼びに走っている間、それを『たまたま』店にいた楊志が止めに入り打ちのめした。
部下達を追い払い店に迷惑料だと金子を渡し、駆けつけた役人に事情を聞かれるため暫し牢に拘留される。
役人にも賄賂を渡し、店の者からの陳情もあり後は武勇伝がある人物の耳に入るのを待つ。
果たして……その人物は楊志の前に現れた。
北京大名府の司令官、梁世傑その人である。
ならず者を一人で蹴散らしたという報告を聞き、直接会ってみようという気になった。一定の手順を踏むより早いだろうと楊志に興味を持たせる為の芝居が功を奏したのだ。
その後楊志の出自や経緯(開封府から放浪している設定)を聞いた梁世傑は、どうしても楊志を部下に加えたくなった。そこで御前試合を開き、武官の一人、周謹(しゅうきん)と戦わせたところ楊志はこれを軽く破り梁世傑を大いに喜ばせる。
余りに喜び、相手をした周謹の就いていた役職にそのまま任命しようとしたのだが、ぽっと出の楊志を良く思わない男が一人待ったをかけた。
男の名は索超(さくちょう)。周謹の上官であり武芸の師でもあった索超はこれを不服として楊志に戦いを挑んだ。大名府では急先鋒(きゅうせんぽう)と渾名される程短気で、金蘸斧(きんさんぷ)という金色の大きな斧を得物としていた。
楊志と索超は梁世傑の目の前で好勝負を繰り広げ、楊志を認めた索超の薦めもあり、彼は索超と同じ提轄使(ていかつし・憲兵の長)に任命される。
やや話が上手く行き過ぎた感はあったが、まずは官職を得て大名府に留まる事に成功した楊志。
そしてその幸運は続き、狙い通り生辰網運搬の為の計画立案とその護送を任される事になった。楊志の本当の目的はこれの強奪なので、いかに梁山泊のせいに見せかけずに奪わせるかを考えなければならない。まともに軍で周囲を固めて梁山泊付近を通れば必ず双方に被害が出るし梁山泊が敵視されるのは確実だ。
ゆえに梁山泊軍には空振りをさせて、謎の一団として編成した梁山泊の別働隊にでも生辰網を奪わせるのが矛先をこちらに向けない最上の展開だろうと楊志は考えた。
「護送部隊は囮?」
「そうです。護送部隊は梁山泊近くを通り、そこで賊の部隊を引き付けます。その間に少数編成の運搬部隊がその地を一気に抜けてしまうのです。梁山泊さえ抜けてしまえば生辰網は無事に蔡京様のもとへと届きましょう」
梁世傑はなるほどと考える。
「囮の指揮官は誰が良いと考える?」
「周謹がよろしいかと。私は商隊の振りをした少数の部隊を率いて囮の部隊と梁山泊の賊どもが睨みあっている間に裏道を一気に抜けてしまいます」
「ふむふむ。いけそうだな」
だがそこに待ったをかけた男がいた。索超である。
「待て楊志」
「なんだ索超」
「俺は考えるのは苦手だから方法は任せる。だがそこには俺の出番がないではないか」
「……いや、索超は大名府を守るという重要な仕事があるだろう」
「それはつまらん。そうだ、周謹の役目を俺とかえてくれ」
「な、なに?」
索超は楊志と引き分けた腕前の男。梁山泊の楊志としては周謹相手の方がやりやすいがここで拘り疑念を抱かれては元も子もない。結局押し切られる形で囮部隊を率いるのは索超となってしまった。
多少目論見が狂った楊志。大名府に潜んでいる部下にその旨も加えて梁山泊へと伝えさせた。
果たして、梁山泊の面々による生辰網強奪計画の結末は……
0
あなたにおすすめの小説
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる