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一章

この国は戦わないと生きていけないようです。

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 1869年 春
「我が国はかつて農業で生計を立てていた。しかし、西の連合王国で産業革命が起こった。それにともない良質な肥料が出たため我が国プロイス王国は今まで輸出していた穀物が売れなくなった。結果、失業者が多く出て、税が足りず外から奪う必要があった。そして、戦争の影響で一時期内乱が起こった。」
客観的にこの国の事実を述べているのは僕の社会科の先生、名前はカール今年で60歳だそうだ。
「内乱ですか!」
そりゃそうだ、略奪してその後も続けて統治するんだから反抗されるわと心の中で思いながら合いの手を入れた。
「そうだ、なんとか軍が鎮圧したが反乱の規模が大きいため事態を重く見た王は退位し息子に譲った。王位についた息子はまず工業を重点的に成長させ国を強くした。その息子は君の曽祖父で現在のフリードヴィルヘム4世だ。」
「しかし今は、また戦争を短い期間で定期的に起きていますね。」
「この国は内陸国だから、土地を守るために戦争を仕掛けたり仕掛けられたりするんだ。何より工業製品を売るために港があれば儲けが大幅に増えるんだよ。1864年におきた戦争も港を手に入れるためで現に今年の国家予算は過去最大らしい。国を維持するためには国民を養わないといけない。将来王になる時のためにしっかり学ぶといい。」
農業をやめても工業に変えても昔とあまり変わらないらしい。
「先生、なぜ港があると儲かるんですか?」
「それはね、労力の差だよ。陸上で動かすと人なり馬なりを使って動かす必要がある。けれど船の場合、洋上の風を使って船を動かすんだよ。でも今は蒸気機関が開発されて徐々に蒸気機関の船が普及しているんだけどね。」
「蒸気機関って煙が出るやつだよね」
「よく知ってるね。それはね。―」
――――――――――――――――――

蒸気機関の質問をしたらたくさん話をしてくれたので興味が出て父に蒸気船見に行きたいと言ったら連れて行ってくれることとなった。エルベ川沿いの鉄道を沿ってハンブルク港に着いた。
「でっかっ...」
「外国からくる荷物、商品のほとんどはこの港に卸していてプロイス王国中の工業製品もここから輸出されているぞ。」
父、フリード・フォン・プロイスは1864年の戦争の時にこの港を奪取した際の指揮官であった。
「今からこの港で一番稼いでる人に会いに行くぞ。」

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