転生した俺、金髪美少女に拾われて旅を始めます

ピコサイクス

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第6話 リリアの怒りとカイの土下座

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宿に戻った途端、リリアがドアを勢いよく閉めた。
 バーン! という音が夜の静寂に響く。

「……リリア?」
「座ってください」
「え?」
「座・っ・て・く・だ・さ・い」

 逃げ場はなかった。
 俺は素直に椅子に腰を下ろす。
 向かいに立つリリアの顔は、昼の笑顔とはまるで別人だった。
 目が笑ってない。怖い。

「まずは確認です」
「はい」
「あなた、セレスさんを旅に誘いましたね?」
「……はい」
「どういうつもりですか?」
「えっと、助けたし……仲間になれば安心だし……」
「ほう。つまり、見た目に惚れたとか、そういうわけではなく?」
「いや、それは……ちょっと……違うような……」
「ちょっとって何ですか!!」

 机をドンと叩く音が部屋に響いた。
 俺は完全に正座状態。
 リリアの説教は、まるで上官の訓練みたいに厳しい。

「あなたはいつもそうです! 優しくするのは良いことですが、誰にでもそうするのは違います!」
「う、うん……」
「“助けたい”という気持ちは分かります。でも、それは自分の身を削ることじゃない!」
「……」
「それに、女の人を見るたびに惚れた顔をして!」
「してないよ!? 俺の顔がそんなに分かりやすいの!?」
「ええ、分かりやすいです!」

 あまりの勢いに、俺は思わず土下座した。
「ごめんなさいでしたぁぁぁ!!」
「土下座!? いや、そこまでしなくても――」

 勢い余って頭を下げすぎ、机の角にゴンッ。
「いったぁ!」
「だから言いましたよ、もう……!」

 リリアが呆れたように近寄る。
 その手が俺の頭を押さえた瞬間、
 ――バランスを崩して二人で倒れた。

 ドサッ!

 気づけば、俺の膝の上にリリアが座っている。
 至近距離。目が合う。
 時間が止まった。
 リリアの顔が真っ赤になり、俺も息が詰まる。

「ち、ちが……!」
「違わないです!!」
 彼女が真っ赤なまま立ち上がり、ばたばたと距離を取った。
「こ、こんなときに何してるんですか!」
「いや、物理的事故! 純粋に物理だって!」
「またですか、その言い訳!」
「ほんとなんだってばー!」

 俺の必死の言い訳をよそに、リリアは深呼吸をして落ち着こうとしていた。
 それでも頬の赤みは消えない。

 少し沈黙が流れる。
 やがてリリアがぽつりと言った。

「……あの人、助けられて本当に嬉しそうでしたね」
「うん。俺も、見てて嬉しかった」
「……そうでしょうね」

 彼女が窓の外を見る。
 夜風がカーテンを揺らした。

「カイさんは、優しすぎるんです。
 たぶん、誰かが泣いてたら放っておけない。
 それがあなたのいいところでもあり、危なっかしいところでもあります」
「うん……俺もそう思う」
「だから――」

 リリアがこちらを振り向いた。
 その瞳は、ほんの少し潤んで見えた。

「だから、私がそばにいます。
 あなたが変な方向に突っ走らないように、見張ってあげます」

「見張るって……護衛みたいだな」
「違います。……相棒です」

 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
 リリアは照れ隠しのように髪を耳にかけた。
 その仕草に、思わず見惚れてしまう。

「……また見てますね」
「いや、これは違っ――」
「違わないです!」
「すみません!!」

 再び土下座。
 今日二度目。俺の額はもはや床と仲良し。
 リリアが呆れ笑いを漏らした。

「もう……本当に、しょうがない人です」

 翌朝。
 宿を出ようとしたところで、セレスが現れた。
 昨日とは違い、薄い布の旅装に着替えている。
 背中には小さな荷袋。
 その立ち姿がやけに絵になっていた。

「……おはよう」
「おはよう、セレス。体調どう?」
「ミーナはぐっすり寝てる。しばらくは大丈夫みたい。――で、お願いがあるの」

 セレスは真剣な目で俺を見る。
「私を、連れて行って」
「え?」
「あんたたちの旅に。あの子を置いて行くのは怖いけど……少しでも稼いで薬を買いたいの。
 それに、昨日のあなたの土下座、見てて笑っちゃったけど……あれ、少しだけカッコよかったわ」

 頬を掻く俺。
 後ろでリリアが小さく咳払いをする。

「リリアさんもそれでいい?」
「……私の意見、聞くんですね?」
「もちろん」
「……はあ。好きにしてください」
「ありがとう!」
「ただし、私は認めてませんからね。セレスさんのこと」
「ええ、構わないわ」
 セレスがにっこり微笑む。
 リリアの頬がぴくぴくと引きつる。

 俺はその間に入って、苦笑いを浮かべた。
「まぁまぁ、みんな仲良く――」
「仲良く? 誰と?」
「え、あ、その……」
「ふふ。カイって、ほんとに面白い男ね」

 セレスがくすくす笑う。
 リリアは睨む。
 俺は冷や汗をかく。

(これ、旅の前から修羅場の予感しかしない……!)

 昼下がり、三人で街を出た。
 石畳を抜けると、草原の道が続いている。
 遠くで鳥が鳴き、雲がゆっくり流れていた。

「ねえ、リリア」
「なんですか」
「もし次に誰か助けようとしたら……また怒る?」
「怒ります」
「……即答か」
「でも、きっと一緒に助けに行きます」
「え?」
「あなたが放っておけないなら、私も放っておけませんから」

 リリアの言葉に、思わず笑みがこぼれた。
 セレスが後ろから呆れたように言う。
「……あんたたち、恋人でもないのに息ぴったりね」
「え、こ、恋人じゃ――」
「じゃあ、何?」
「その……仲間、かな」

 言った瞬間、リリアの顔が少し柔らいだ。
 風が吹き抜け、髪が揺れる。
 セレスはその様子を横目で見て、ふっと笑った。

「ま、しばらくはついて行くわ。よろしくね、カイ」
「こちらこそ」
「――ただし、私を口説いたら容赦しないわよ」
「え、えぇっ!?」
 リリアがすかさず腕を組む。
「その前に私が許しません」
「えっ、いや、俺そんなつもり……」
「知ってます。でも一応、先に釘を刺しておきます」

 結局、三人の掛け合いは草原中に響き渡った。
 セレスが笑い、リリアが呆れ、俺が慌てる。
 空は高く、旅はまだ始まったばかりだ。
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