五仕旗 Primal Generation

旋架

文字の大きさ
21 / 32

#9 慎重と深読み Part1

しおりを挟む
「モンスターが人間に変わるなんて聞いたことがない。
だが、目の前でそれが起こっていた。
そのモンスターをどうするか、しばらく悩んだが、そんな特異なモンスターが他人の手に渡れば、どんな目にあうか、大方予想はできた。
…結局、俺はそのモンスターを自分の弟として育てることを選んだ。
周囲にはモンスターであった事実を隠したまま」

「まさか、そのモンスターというのが…」

「ああ。
それが風瓜だ」

「俺、兄ちゃんに助けてもらったんだ…」

「そして、俺がヒグマを倒した村で…」

**********

<回想>

村人からもらった資料を読み込む繁風。

「!?
(これは…)」

**********

「そこに描かれていた七掌陣の一体の姿は、俺があの日見た風瓜の姿そのものだった」

「その時点で、君は風瓜が七掌陣であることに気づいていたのか」

「そうだ。
お前が俺に悪意があると疑った時も、正直焦ったよ。
風瓜の持つ力を感じ取っているのではないかと思ったからだ」

「では本当に風瓜は何も…」

「ああ。知らない。
風瓜、驚かせたな。
今まで黙っていて悪かった」

「ビックリしたけど、大丈夫。
でも、何で今までヴォーテは俺の悪意を感じ取れなかったの?」

「おそらく普段は、七掌陣としてお前が持つ悪意は抑えられている。
だからヴォーテも分からなかった。
でも今日の勝負。
お前は勝つために必死だった。
それでお前の中に眠る悪意が一時的に高まったんじゃないか?」

「俺、悪いことするつもりなんてないよ…」

「大丈夫。それは俺もヴォーテも分かっていることだ」

「風瓜、繁風。すまない。
私のせいでこんなことに」

ヴォーテが謝罪する。

「…いいよ。
ヴォーテは正義感強いから。
俺が七掌陣だって気づいたから、言わずにはいられなかったんだよね?
ヴォーテがいつもみんなのこと思ってるって、俺は知ってるよ」

「風瓜…」

その時、三人の背後から声がした。

「見つけたぞ」

振り返るとライト片手にオースが立っていた。

「うわっ!」

オースが風瓜をつかむ。

「風瓜!」

オースが龍のようなモンスターを召喚する。
それは風瓜を抱えると、上空へ飛び去った。

「お前!」

「兄ちゃん!」

声は小さくなっていく。

「繁風、君はあのモンスターを追え」

「ヴォーテ…」

「こいつは私が相手をする。
私は君達に迷惑をかけた。
私が余計なことを口にしなければ、こんなことには…」

「…」

「君の風瓜に対する思いは分かった。
だから…」

繁風が頷く。

「頼んだぞ。
来い、【電光蜻蛉スパークリング・ドラゴンフライ】!」

繁風は【電光蜻蛉スパークリング・ドラゴンフライ】を召喚し、敵を追う。

オースが話し出す。

「あんな奴がホントに七掌陣なのか?
全く力を感じないが」

「お前、開闢ドーンか?」

「今頃気づいても遅い」

「お前は最初から、私達を調べるために風瓜と勝負したのだな」

「さてと、お前が七掌陣を所持していることは知っている。
渡してもらおうか」

オースが起動スターターをオンにする。

「よくやった。
ここからは私が行く」

オースではない別の声が聞こえる。

「(何だ?)」

「お前では奴を倒すことはできないだろう」

「何だと?」

「所詮、出世のために七掌陣を手に入れようと企んでいる者の実力などたかが知れている」

「貴様…」

オースが気を失う。

「おい!」

彼は再び立ち上がると口を開いたが、その様子は先ほどとは何かが異なる。

「お前の相手は私がしてやる。
私は果地繁風の弟のように無力な七掌陣ではないぞ」

「(ということは、こいつが六体目の…)」

「さて、始めようか」

「五仕旗…」

「Primal Generation!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...