婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

きさらぎ

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こんなつもりでは……Ⅳ

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「決まったようね。夕食はわたくしたちだけで頂きましょうか?」

「いいですね。それなら東の宮にいらっしゃいませんか? サンルームから見える星や月がとてもきれいなんです。夕食を頂くにもぴったりだと思いますわ」

「確かにそうね。あそこは昼も夜も絶景なのよね。懐かしいわ、ありがとう招待してくれて、とても嬉しいわ」

「喜んで頂けて光栄ですわ。料理もお任せください。うちのシェフたちも張り切って腕を披露してくれるでしょう」

「星と月を眺めながら食事ってなんてロマンティックなの。東の宮は久しぶりだから楽しみだわ、アンジェラ」

「楽しみにしていてね」

 お三方で盛り上がっているけれど、私はついていけるのかしら? 場違いではないかしら? 和気あいあいとしている空気の中、帰るわけにはいかないでしょうし。はあ、緊張してきたわ。

「話は決まったわね。さあ、帰りましょう。あっ、レイニー、申し訳ないけれど、あなたは参加できませんからね」

 レイ様になぜか釘をさす王妃陛下。

「はい、はい。わかってますよ」

 不貞腐れたようにも見えるレイ様は諦めたように返事をしましたが、若干肩が落ちているように見えました。怒涛の展開にお疲れなのかもしれません。

「ねえ、ローラおねえちゃん、お泊りするの?」

「そうよ。私の部屋に泊まるのよ」

「ねえ、ねえ。ディーおねえちゃん。僕も泊ってもいい? ローラおねえちゃんとねんねしたい」

「ニャーン」

 状況を把握したらしいリッキー様が話に加わりました。リッキー様の肩にちょこんと乗っているマロンもですね。この子とてもタイミングが良すぎて人間の言葉が理解できているように感じるわ。本当に猫なのでしょうか?
 ディアナは『ディーおねえちゃん』なのね。親しみがあって二人とも仲がいいのね。

「ディアナ、フローラちゃん。申し訳ないけれど、リチャードとマロンのわがまま聞いてくれるかしら?」

「OKよ」

 ディアナは人差し指と親指で丸を作ってフランクな返事。日頃の親密さが窺えます。

「はい。私でよろしければリッキー様とマロンをお預かりいたします。リッキー様、マロンも一緒に寝ましょうね」

「やったー。ははうえ、ありがとう」

「ニャン」

 至れり尽くせりでもてなしてくださるのに、これ以上お断りできませんものね。それに私もリッキー様は大好きですから。あっ、マロンもです。
 ものは考えようですね。王宮に泊まるなんてもう二度とないかもしれませんから精一杯楽しみましょう。

「さあ、帰りましょう」

 王妃陛下の声掛けで私たちは歩き出しました。
 そういえば、レイ様にお礼を言うのを忘れていました。明日は会えないでしょうからここでお礼とあいさつをしなければと思っていると

「フローラ様」

 ちょうどエルザに呼び止められました。
 皆さんに待ってもらえるように声をかけてからエルザの元へと行きました。

「お靴が届いておりますので」

 トレイの上には私の靴とストッキングが置かれています。脱ぎ散らかしだったであろうストッキングはきちんと折りたたまれていました。すぐ履くつもりだったから乱雑に扱ってしまっていたわ。これも恥ずかしい。いついかなる時でもきちんとしなきゃだめね。
 
「エルザ、ありがとう。すっかり忘れていたわ」

 室内履きのまま外へ出るところでした。さっきまで座っていたソファに座り靴を履かせてもらいました。皆さんは隣室で待ってくださっているみたいで、靴を履くところを見られないでよかったです。

「この室内履きはこちらでお預かりしておきますので、明日お帰りになる時にお寄りくださいませ」

「いいのですか?」

「はい。お手間を取らせることにはなりますが、その方がいいかと思いましたので」

 手荷物になるので持っていくのもちょっと気が引けますね。

「それでは、明日までよろしくお願いします」

 私は素直に好意を受けることにしました。

「レイ様」

 王妃陛下や他の方たちに圧倒されていたのか、立ちつくして壁の花になっていたレイ様に近づいて声をかけました。

「ローラ」

 レイ様の表情が和らぎ、やっと笑顔が見れました。心が和みます。やはりレイ様は笑っているときの方がかっこいいですし、好きですわ。

「レイ様、私を助けて下さりありがとうございました」

 カーテシーをして礼を取りました。

「いや、どういたしまして。堅苦しい礼はいらないけれど、明日、待ってるから」

「はい。お手数をおかけしますがよろしくお願いします」

 少し照れているようなはにかんだ顔のレイ様はちょっぴりかわいいです。

「フローラ様、明日お待ちしております。行ってらっしゃいませ」

 エルザやほかの侍女たちが一斉に深くお辞儀をしました。
 畏まりすぎなのでは?
 不思議に思いつつも

「行ってまいります」

 と返事をして部屋を後にしました。
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