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第二部
新たな思いⅣ
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芝生が敷き詰められた広い庭園。青々とした芝は刈り取られ綺麗に整えられています。所々にこんもりと盛り上がった山と樹木が植栽されています。全体的に見晴らしの良い庭園はブランコや滑り台にハンモックなどが設置されている。東の宮の庭園は子供の遊び場所に特化した仕様になっているようです。
語学学習が終わったあと庭園へと移動してお茶を頂いているところです。
「母上ー。ローラおねえちゃーん」
滑り台の上で手を振って、名前を呼ぶ大きな声が聞こえました。
アンジェラ様と私はリッキー様に手を振り返して、滑り台から繰り返し滑り降りる姿を木陰から眺めていました。時折、エイブも後ろにつき一緒に滑らされている様子に目を細めます。
リッキー様の笑い声が庭園に響き渡って穏やかで和やかな光景に心が安らぎます。
「子供って元気ねえ。特に男の子なんてじっとしていないものね」
手を振りつつ、リッキー様に無茶なことはしないようにと注意をするアンジェラ様。エイブもあちらこちらと走り回る子供の相手は大変そうです。半面、楽しそうにも見えますが。
「そうですね。でも、健康な証拠ですから」
「そうね。男の子だし、ちょっとやんちゃな方がよいのかもしれないわね」
そう言ってリッキー様を愛おし気に見つめるアンジェラ様は母親の顔をしていました。
「のどが渇いたー」
ひとしきり遊んだリッキー様がアンジェラ様に抱き着きます。
「まあ、まあ。汗びっしょり。まずは汗を拭きましょう」
汗で金髪が額に張り付いていて頬も紅潮して夢中で遊んだ様子が窺えます。
アンジェラ様がタオルで顔や首を拭ったあと飲み物が出されると、椅子にちょこんと座ったリッキー様はレモン水を飲み始めました。
さわさわと擦れた木の葉の影が頭上でゆれています。リッキー様の乾いた髪が風になびいているのを眺めながら、穏やかなひと時は今のわたしにとって至福の時間です。
「ごくごく」
二杯目のお代わりをして、喉を鳴らしてレモン水を飲むリッキー様。あれだけ汗だくで遊べば喉も乾くでしょう。
飲み終えるとコップを置いて肩で息をつきました。やっと人心地ついたのでしょう。
「楽しかった?」
「うん」
アンジェラ様に満面な笑みを向けて頷くリッキー様。
学習が終わったあと、アンジェラ様とお茶会をするのが恒例になってきつつある今日この頃。リッキー様が外で遊びたいとのことだったので、今日は庭園でのお茶会となりました。
あれだけ運動すればすぐに眠たくなるのではないかしら。
また気まぐれにレイ様の宮へと連れていかれるのではないかとヒヤヒヤしていたのですが、ここ二回ほどはお昼寝の時間だったので、それも杞憂に終わっています。
「母上は、ぼくのこと好き?」
唐突に、それこそ唐突に、リッキー様がアンジェラ様に聞きました。カップを持っていたアンジェラ様の手が揺れました。紅茶を零さずに留めた所作は見事です。
見上げるリッキー様の顔を見つめて
「大好きよ。愛しているわ」
ニコッと微笑んだアンジェラ様。
「ぼくも母上のこと、大好きー」
満足そうに満面の笑顔で答えるリッキー様。
あの日と同じ問答が繰り返されるなんて、実は親子の儀式みたいなものだったのかしら? もしかして、おなじみのやり取りとかなのかしら?
同じ場面が繰り広げられる光景に半ば他人事のように感じていると
「あのね。レイおにいちゃんはローラおねえちゃんのことが大好きなんだって。愛してるって、言ってたよ」
突然放たれた爆弾発言にガタッと椅子から落ちそうになりました。
ど、動揺が半端ではなく、心拍数も一気に上がって動悸は激しくなるし、どうしたらよいのかプチパニックです。
「ね? ローラおねえちゃん」
ねって……天真爛漫な天使の微笑みを向けられても、答えようがありません。熱が駆け巡って、全身が真っ赤に染まっていきました。
どうして、ここで? そんなことを?
大人だったら怒ることも出来るのでしょうが、子供相手ではそんなことも出来ません。
「あの、リッキー様。そのお話はなさらないようにしてくださいね」
注意するだけで精一杯なのですが、本人は意味が分からないのかキョトンとしています。
アンジェラ様は口を押えてキラキラなびっくり眼で私を見ていらっしゃるし、どうしましょう。
「ローラおねえちゃんもレイおにいちゃんのこと好きなんだよね。いってたもんね」
また、さらに爆弾発言が飛び出してきました。これ以上ないくらい全身真っ赤だわ。身の置き所がない。そばにいる侍女達の表情は変わりませんが、それでも恥ずかしいの一言です。
悪びれることなく話すリッキー様の顔は何故だか自慢げです。
「アンジェラ様」
ここは助けを求めるしかありません。
「ああ、そうね」
私の窮地を察してくださったようで、平静を取り戻したアンジェラ様ですが、嬉々とした表情は隠し切れていませんでした。
「そんなことを人前で話してはダメよ。わかった?」
アンジェラ様が注意して下さり、リッキー様もちゃんと理解できたのか分かりませんが、頷いて下さいました。王子殿下のプライベートな事を話しては問題になることもあるでしょうから。
「ぼく、ブランコで遊んでくるね。エイブ、後ろから押してー」
椅子から下りたリッキー様はまっすぐにブランコめがけて走っていきました。エイブも後を追います。
あの時のように、言い逃げですか? 残された私はどうすればいいのでしょうか。リッキー様がいなくなるとしんとした空気に包まれました。
雰囲気を変えようにも話題の一つも出て来ず、何も発することも出来なくて、間を取り繕うようにアイスティーに手をつけました。ストローで下に沈んだ紅茶をかき回して一口飲み喉を潤します。
語学学習が終わったあと庭園へと移動してお茶を頂いているところです。
「母上ー。ローラおねえちゃーん」
滑り台の上で手を振って、名前を呼ぶ大きな声が聞こえました。
アンジェラ様と私はリッキー様に手を振り返して、滑り台から繰り返し滑り降りる姿を木陰から眺めていました。時折、エイブも後ろにつき一緒に滑らされている様子に目を細めます。
リッキー様の笑い声が庭園に響き渡って穏やかで和やかな光景に心が安らぎます。
「子供って元気ねえ。特に男の子なんてじっとしていないものね」
手を振りつつ、リッキー様に無茶なことはしないようにと注意をするアンジェラ様。エイブもあちらこちらと走り回る子供の相手は大変そうです。半面、楽しそうにも見えますが。
「そうですね。でも、健康な証拠ですから」
「そうね。男の子だし、ちょっとやんちゃな方がよいのかもしれないわね」
そう言ってリッキー様を愛おし気に見つめるアンジェラ様は母親の顔をしていました。
「のどが渇いたー」
ひとしきり遊んだリッキー様がアンジェラ様に抱き着きます。
「まあ、まあ。汗びっしょり。まずは汗を拭きましょう」
汗で金髪が額に張り付いていて頬も紅潮して夢中で遊んだ様子が窺えます。
アンジェラ様がタオルで顔や首を拭ったあと飲み物が出されると、椅子にちょこんと座ったリッキー様はレモン水を飲み始めました。
さわさわと擦れた木の葉の影が頭上でゆれています。リッキー様の乾いた髪が風になびいているのを眺めながら、穏やかなひと時は今のわたしにとって至福の時間です。
「ごくごく」
二杯目のお代わりをして、喉を鳴らしてレモン水を飲むリッキー様。あれだけ汗だくで遊べば喉も乾くでしょう。
飲み終えるとコップを置いて肩で息をつきました。やっと人心地ついたのでしょう。
「楽しかった?」
「うん」
アンジェラ様に満面な笑みを向けて頷くリッキー様。
学習が終わったあと、アンジェラ様とお茶会をするのが恒例になってきつつある今日この頃。リッキー様が外で遊びたいとのことだったので、今日は庭園でのお茶会となりました。
あれだけ運動すればすぐに眠たくなるのではないかしら。
また気まぐれにレイ様の宮へと連れていかれるのではないかとヒヤヒヤしていたのですが、ここ二回ほどはお昼寝の時間だったので、それも杞憂に終わっています。
「母上は、ぼくのこと好き?」
唐突に、それこそ唐突に、リッキー様がアンジェラ様に聞きました。カップを持っていたアンジェラ様の手が揺れました。紅茶を零さずに留めた所作は見事です。
見上げるリッキー様の顔を見つめて
「大好きよ。愛しているわ」
ニコッと微笑んだアンジェラ様。
「ぼくも母上のこと、大好きー」
満足そうに満面の笑顔で答えるリッキー様。
あの日と同じ問答が繰り返されるなんて、実は親子の儀式みたいなものだったのかしら? もしかして、おなじみのやり取りとかなのかしら?
同じ場面が繰り広げられる光景に半ば他人事のように感じていると
「あのね。レイおにいちゃんはローラおねえちゃんのことが大好きなんだって。愛してるって、言ってたよ」
突然放たれた爆弾発言にガタッと椅子から落ちそうになりました。
ど、動揺が半端ではなく、心拍数も一気に上がって動悸は激しくなるし、どうしたらよいのかプチパニックです。
「ね? ローラおねえちゃん」
ねって……天真爛漫な天使の微笑みを向けられても、答えようがありません。熱が駆け巡って、全身が真っ赤に染まっていきました。
どうして、ここで? そんなことを?
大人だったら怒ることも出来るのでしょうが、子供相手ではそんなことも出来ません。
「あの、リッキー様。そのお話はなさらないようにしてくださいね」
注意するだけで精一杯なのですが、本人は意味が分からないのかキョトンとしています。
アンジェラ様は口を押えてキラキラなびっくり眼で私を見ていらっしゃるし、どうしましょう。
「ローラおねえちゃんもレイおにいちゃんのこと好きなんだよね。いってたもんね」
また、さらに爆弾発言が飛び出してきました。これ以上ないくらい全身真っ赤だわ。身の置き所がない。そばにいる侍女達の表情は変わりませんが、それでも恥ずかしいの一言です。
悪びれることなく話すリッキー様の顔は何故だか自慢げです。
「アンジェラ様」
ここは助けを求めるしかありません。
「ああ、そうね」
私の窮地を察してくださったようで、平静を取り戻したアンジェラ様ですが、嬉々とした表情は隠し切れていませんでした。
「そんなことを人前で話してはダメよ。わかった?」
アンジェラ様が注意して下さり、リッキー様もちゃんと理解できたのか分かりませんが、頷いて下さいました。王子殿下のプライベートな事を話しては問題になることもあるでしょうから。
「ぼく、ブランコで遊んでくるね。エイブ、後ろから押してー」
椅子から下りたリッキー様はまっすぐにブランコめがけて走っていきました。エイブも後を追います。
あの時のように、言い逃げですか? 残された私はどうすればいいのでしょうか。リッキー様がいなくなるとしんとした空気に包まれました。
雰囲気を変えようにも話題の一つも出て来ず、何も発することも出来なくて、間を取り繕うようにアイスティーに手をつけました。ストローで下に沈んだ紅茶をかき回して一口飲み喉を潤します。
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