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第二部
チェント男爵令息side④
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「これは決定事項だ。もう一度言う。エドガー殿との婚約は白紙。リリアは修道院に行き人間として一から学び直すことだ。これは絶対に覆らない。許可が下り次第出発してもらう。いつでも旅立てるように準備しておきなさい。いいね」
「イヤ。なんで。あたしはエドガーと結婚するの。約束したのに。お義父様、お願い。それだけはイヤよ。あたしはエドガーと一緒になるんだから」
声が震え、ぽろぽろと涙をこぼしながら必死に訴えるリリア。悲痛ともいえる叫び声ではあるが、もう遅い。
「だったら、努力をすればよかったのだ」
「した、したわ。あたしだって頑張ってた」
「それで、その努力の結果が王族への不敬と無礼な態度だったというわけか?」
「ち、違う。ちょっと、舞い上がっていて、だから……」
悪気はなかったのかもしれないが、だからと言って悪気がなければ何をしてもいいわけではないし、許される行為ではない。今回はお咎めはなかったが、次回同じようなことをすれば、無事でいられるはずはない。
「だから、反省したとでもいうのか」
リリアは涙を流しながらこくこくと大きく首を縦に振った。
「はい。深く深く反省してもっと努力しますから、許してください。お願いします。お義父様」
ギリギリ崖っぷちに立たされてやっと反省するなどと言っているが、喉元過ぎればなんとやらだろう。
また、同じことを繰り返すことは目に見えている。
「言っただろう。これは決定事項で覆らないと。反省し努力することは大いに結構なことだ。存分にやりなさい。修道院の中でな。三年ほど真面目に励めば生きていくための最低限のものは身に着くだろう。選んだところは職業訓練も担っている。そこで、手に職をつけて市井で暮らしていける仕事を探すことだ」
「お義父様……どういう意味? 手に職? 市井って……」
「そのままの意味だよ。リリア、お前を貴族籍から外すことにした。平民として生きていく方が幸せだと思ってな。貴族の世界は窮屈だろう? 身分制度に囚われるし社交だって色々と駆け引きもある難しい世界だ。マナーにも厳しい。教養も試される。力がなければ簡単に蹴落とされるところだ。そんな世界にリリアは相応しくないだろうし、生きていけないだろう。それよりも広くて自由な世界で生きていく方がリリアのためだ」
「エドガーは?」
「彼は侯爵家の嫡男だ。住む世界が違う。次期当主のエドガー殿と平民のリリアでは身分が違いすぎる。これから先、交わることはないだろう。貴族の間でも、侯爵家と男爵家では身分が違うんだ。本来なら、結ばれるはずのない婚約だったんだよ」
冷静に諭すように父は丁寧に説明をした。どこまで理解してくれただろうか。
「あたしはエドガーと結婚するの。エドガーしかいないのに。エドガーにもあたししかいないの。どうして、どうして。イヤ。イヤだ。修道院なんて行きたくない。エドガーのそばにいる。エドガーの所に行くー」
髪を振り乱して泣きじゃくるリリアに冷めた目を向ける。父は聞き分けのない彼女に呆れたのか白けた目で見ていた。
そんなに離れたくないなら、侯爵夫人教育を真剣に受ければよかったのだ。
真剣に貴族社会に溶け込めるように努力すべきだったのだ。今頃になって、心を入れ替える、なんて遅い。
卒業時にはある程度のマナーも教養も習得しておかなければいけなかったのに。そのために、どれだけ侯爵夫人が心を砕いてくれたのか。
教育に費やした時間を無駄にしてしまったのだ。本当に侯爵家に申し訳ない。
「マギー、サント。すまないがリリアを部屋へ連れていってくれるか」
父は壁際で待機していた二人に声をかけた。
「それとマギー、リリアの荷物の準備を頼む」
「承知いたしました」
テーブルに突っ伏したまま、動かずいやいやをするリリアを力ずくで立たせると二人に両脇を抱えられるようにして出て行った。
ドアが閉まるのを見届けるとドッと疲れが押し寄せた。
これで一仕事終わったのか。やれやれだ。修道院へ送り出すまで監視を強化しなくてはいけないな。引っ越しを進めている最中だから、人が手薄になることも考えられる。最後まで、気を抜けないな。
「父上。話があるのですが、ちょっといいですか?」
「ああ。なんだ?」
疲労の濃い表情を見せる父にある提案をした。
「イヤ。なんで。あたしはエドガーと結婚するの。約束したのに。お義父様、お願い。それだけはイヤよ。あたしはエドガーと一緒になるんだから」
声が震え、ぽろぽろと涙をこぼしながら必死に訴えるリリア。悲痛ともいえる叫び声ではあるが、もう遅い。
「だったら、努力をすればよかったのだ」
「した、したわ。あたしだって頑張ってた」
「それで、その努力の結果が王族への不敬と無礼な態度だったというわけか?」
「ち、違う。ちょっと、舞い上がっていて、だから……」
悪気はなかったのかもしれないが、だからと言って悪気がなければ何をしてもいいわけではないし、許される行為ではない。今回はお咎めはなかったが、次回同じようなことをすれば、無事でいられるはずはない。
「だから、反省したとでもいうのか」
リリアは涙を流しながらこくこくと大きく首を縦に振った。
「はい。深く深く反省してもっと努力しますから、許してください。お願いします。お義父様」
ギリギリ崖っぷちに立たされてやっと反省するなどと言っているが、喉元過ぎればなんとやらだろう。
また、同じことを繰り返すことは目に見えている。
「言っただろう。これは決定事項で覆らないと。反省し努力することは大いに結構なことだ。存分にやりなさい。修道院の中でな。三年ほど真面目に励めば生きていくための最低限のものは身に着くだろう。選んだところは職業訓練も担っている。そこで、手に職をつけて市井で暮らしていける仕事を探すことだ」
「お義父様……どういう意味? 手に職? 市井って……」
「そのままの意味だよ。リリア、お前を貴族籍から外すことにした。平民として生きていく方が幸せだと思ってな。貴族の世界は窮屈だろう? 身分制度に囚われるし社交だって色々と駆け引きもある難しい世界だ。マナーにも厳しい。教養も試される。力がなければ簡単に蹴落とされるところだ。そんな世界にリリアは相応しくないだろうし、生きていけないだろう。それよりも広くて自由な世界で生きていく方がリリアのためだ」
「エドガーは?」
「彼は侯爵家の嫡男だ。住む世界が違う。次期当主のエドガー殿と平民のリリアでは身分が違いすぎる。これから先、交わることはないだろう。貴族の間でも、侯爵家と男爵家では身分が違うんだ。本来なら、結ばれるはずのない婚約だったんだよ」
冷静に諭すように父は丁寧に説明をした。どこまで理解してくれただろうか。
「あたしはエドガーと結婚するの。エドガーしかいないのに。エドガーにもあたししかいないの。どうして、どうして。イヤ。イヤだ。修道院なんて行きたくない。エドガーのそばにいる。エドガーの所に行くー」
髪を振り乱して泣きじゃくるリリアに冷めた目を向ける。父は聞き分けのない彼女に呆れたのか白けた目で見ていた。
そんなに離れたくないなら、侯爵夫人教育を真剣に受ければよかったのだ。
真剣に貴族社会に溶け込めるように努力すべきだったのだ。今頃になって、心を入れ替える、なんて遅い。
卒業時にはある程度のマナーも教養も習得しておかなければいけなかったのに。そのために、どれだけ侯爵夫人が心を砕いてくれたのか。
教育に費やした時間を無駄にしてしまったのだ。本当に侯爵家に申し訳ない。
「マギー、サント。すまないがリリアを部屋へ連れていってくれるか」
父は壁際で待機していた二人に声をかけた。
「それとマギー、リリアの荷物の準備を頼む」
「承知いたしました」
テーブルに突っ伏したまま、動かずいやいやをするリリアを力ずくで立たせると二人に両脇を抱えられるようにして出て行った。
ドアが閉まるのを見届けるとドッと疲れが押し寄せた。
これで一仕事終わったのか。やれやれだ。修道院へ送り出すまで監視を強化しなくてはいけないな。引っ越しを進めている最中だから、人が手薄になることも考えられる。最後まで、気を抜けないな。
「父上。話があるのですが、ちょっといいですか?」
「ああ。なんだ?」
疲労の濃い表情を見せる父にある提案をした。
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