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出会いは必然?!
歩夢side 1
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「歩夢―。いる―?」
バスルームから声がした。
「いるよー」
僕、木原歩夢は声が聞こえるように、大きめに返事をした。
ここは彼女の家で、ちょうど彼女がお風呂に入っている時間。
僕は少し前に来て、リビングのソファでくつろいでいたところ。
少し経ってから、パジャマ姿で洗ったばかりの髪をぐちゃぐちゃにしたまま、ほんのり赤みがさし上気した顔に、ほこほことした表情をのせ、彼女、町田陽菜が出てきた。
乾いたタオルを腕にかけて両手にはドライヤーとブラシを持って、僕のもとへと歩み寄ってくると、目の前にすっと差し出したのはドライヤー。
ソファを背にして床に座った陽菜の髪を後ろからタオルでふいてあげて、ブラシで髪を整えながら、ドライヤーで、乾かしてあげるその間、陽菜は黙ったまま。
でも、気持ちよさそうにしているのは後ろからでもわかるから、僕の腕にも力が入る。
「陽菜の方が年下みたいね」
僕たちの様子を見ていたおばさんが声をかける。少し呆れたような声。
「はい。どうぞ」
テーブルに二つのカップを置くと、しばらく僕たちの様子見ていた。
部活でバドミントンをしているせいか、髪は肩にも満たないショートカット。
すぐにでも乾いてしまいそうだけど、陽菜って不精なところがあるから、乾く前に寝てしまうことも多いんだよね。
だから次の日の髪は完全に寝ぐせがついてしまってて、直すのも一苦労のひどい状態になっちゃってる。
それを知っているから、僕が乾かしてあげるようになったんだ。
「歩夢くん。陽菜を甘やかしたらダメよ。なーんにもしなくなっちゃうから。陽菜もよ。いつまでも、歩夢くんに甘えないの」
「えー。そんなぁー。やだよー。歩夢に乾かしてもらうのって、すっごく気持ちいいんだもん」
陽菜が唇を尖らせる。
気持ちがいいのは、ぼくの思いが入っているからだと思うんだけど。
愛だよね。
「いいよね。歩夢?」
後ろにいる僕に同意を求めるように見上げた陽菜。
彼女の視線と重なる。
お願い光線が出ている瞳がキラキラしている。
断っちゃだめだよって瞳が言っている。
陽菜って、かわいい。
こういう時って、陽菜の方が年下に見えちゃうからね。
なんでも叶えてあげようって、気になっちゃう。
それに、僕だって、陽菜の髪に触るの好きだし。
「うん。陽菜の髪を乾かすくらい、構わないよ」
「よかった。ほら、お母さん。歩夢だっていいって言ってるし」
「わかったわよ。お母さんはね、髪のことだけ言っているわけではないのよ。でも……まっ、いいわ。あなたたちの仲がいいのは、今に始まったことではないしね。昔は陽菜の方が、歩夢くんの面倒を見ていたのにね。いつの間に逆転しちゃったのかしらね?」
おばさんは僕たちを見て、軽く肩をすくめた。
まだ何か言いたそうだったけど、言葉が見つからなかったのか、そのままリビングを出ていった。
「ごめんね、歩夢。今日のお母さん、小言が多くて」
「別に気にしてないよ。陽菜のこと、心配して言ったんじゃないのかな?」
僕が言うと、
「心配? 何を心配してるんだろ?」
訳が分からないという感じで、キョトンとする陽菜に、思わず吹き出してしまった。
年下の男の子にあれこれと世話を焼かれているなんて、反対ならまだしも、母親として心配するのは無理もないと思うんだけどね。
でも、しょうがないよね。これは僕が望んでやっていること。
陽菜にいつでも必要とされるように、いつも一緒にいられるわけではないから。
僕にしかできないことって何?
考えた末思いついたのは、小さい頃、陽菜が僕の世話をしてくれたように、今度は僕がやってあげること。
小学四年生から始めた色々な行為は、今では習慣化していて当たり前で、陽菜もすっかり気を許しちゃってる。
作戦は成功ってところかな?
「なんで笑うの?」
「別になんでもないよ」
くすくすと笑う僕を見て、
「何でもなくないでしょ。笑ってるもん」
頬をぷくっと膨らませて怒る陽菜。
どっちが年上なんだか。
陽菜の表情はどれもかわいいからね。もっと見せてって思ってしまう。
「それより、髪をちゃんと乾かさないと。もう少しだから」
「ああ、そうだったね」
陽菜は本来の目的を思い出して座りなおした。すっかり機嫌は直っている。
僕はドライヤーを当てて乾かしていく。
ホント、陽菜が不精な性格でよかった。堂々と陽菜に触れるからね。
髪を触るのだってホントは勇気がいる。
洗い立ての髪はいい匂いがしてさらさらしていて、触り心地がいい。
これも、弟だからできること。
バスルームから声がした。
「いるよー」
僕、木原歩夢は声が聞こえるように、大きめに返事をした。
ここは彼女の家で、ちょうど彼女がお風呂に入っている時間。
僕は少し前に来て、リビングのソファでくつろいでいたところ。
少し経ってから、パジャマ姿で洗ったばかりの髪をぐちゃぐちゃにしたまま、ほんのり赤みがさし上気した顔に、ほこほことした表情をのせ、彼女、町田陽菜が出てきた。
乾いたタオルを腕にかけて両手にはドライヤーとブラシを持って、僕のもとへと歩み寄ってくると、目の前にすっと差し出したのはドライヤー。
ソファを背にして床に座った陽菜の髪を後ろからタオルでふいてあげて、ブラシで髪を整えながら、ドライヤーで、乾かしてあげるその間、陽菜は黙ったまま。
でも、気持ちよさそうにしているのは後ろからでもわかるから、僕の腕にも力が入る。
「陽菜の方が年下みたいね」
僕たちの様子を見ていたおばさんが声をかける。少し呆れたような声。
「はい。どうぞ」
テーブルに二つのカップを置くと、しばらく僕たちの様子見ていた。
部活でバドミントンをしているせいか、髪は肩にも満たないショートカット。
すぐにでも乾いてしまいそうだけど、陽菜って不精なところがあるから、乾く前に寝てしまうことも多いんだよね。
だから次の日の髪は完全に寝ぐせがついてしまってて、直すのも一苦労のひどい状態になっちゃってる。
それを知っているから、僕が乾かしてあげるようになったんだ。
「歩夢くん。陽菜を甘やかしたらダメよ。なーんにもしなくなっちゃうから。陽菜もよ。いつまでも、歩夢くんに甘えないの」
「えー。そんなぁー。やだよー。歩夢に乾かしてもらうのって、すっごく気持ちいいんだもん」
陽菜が唇を尖らせる。
気持ちがいいのは、ぼくの思いが入っているからだと思うんだけど。
愛だよね。
「いいよね。歩夢?」
後ろにいる僕に同意を求めるように見上げた陽菜。
彼女の視線と重なる。
お願い光線が出ている瞳がキラキラしている。
断っちゃだめだよって瞳が言っている。
陽菜って、かわいい。
こういう時って、陽菜の方が年下に見えちゃうからね。
なんでも叶えてあげようって、気になっちゃう。
それに、僕だって、陽菜の髪に触るの好きだし。
「うん。陽菜の髪を乾かすくらい、構わないよ」
「よかった。ほら、お母さん。歩夢だっていいって言ってるし」
「わかったわよ。お母さんはね、髪のことだけ言っているわけではないのよ。でも……まっ、いいわ。あなたたちの仲がいいのは、今に始まったことではないしね。昔は陽菜の方が、歩夢くんの面倒を見ていたのにね。いつの間に逆転しちゃったのかしらね?」
おばさんは僕たちを見て、軽く肩をすくめた。
まだ何か言いたそうだったけど、言葉が見つからなかったのか、そのままリビングを出ていった。
「ごめんね、歩夢。今日のお母さん、小言が多くて」
「別に気にしてないよ。陽菜のこと、心配して言ったんじゃないのかな?」
僕が言うと、
「心配? 何を心配してるんだろ?」
訳が分からないという感じで、キョトンとする陽菜に、思わず吹き出してしまった。
年下の男の子にあれこれと世話を焼かれているなんて、反対ならまだしも、母親として心配するのは無理もないと思うんだけどね。
でも、しょうがないよね。これは僕が望んでやっていること。
陽菜にいつでも必要とされるように、いつも一緒にいられるわけではないから。
僕にしかできないことって何?
考えた末思いついたのは、小さい頃、陽菜が僕の世話をしてくれたように、今度は僕がやってあげること。
小学四年生から始めた色々な行為は、今では習慣化していて当たり前で、陽菜もすっかり気を許しちゃってる。
作戦は成功ってところかな?
「なんで笑うの?」
「別になんでもないよ」
くすくすと笑う僕を見て、
「何でもなくないでしょ。笑ってるもん」
頬をぷくっと膨らませて怒る陽菜。
どっちが年上なんだか。
陽菜の表情はどれもかわいいからね。もっと見せてって思ってしまう。
「それより、髪をちゃんと乾かさないと。もう少しだから」
「ああ、そうだったね」
陽菜は本来の目的を思い出して座りなおした。すっかり機嫌は直っている。
僕はドライヤーを当てて乾かしていく。
ホント、陽菜が不精な性格でよかった。堂々と陽菜に触れるからね。
髪を触るのだってホントは勇気がいる。
洗い立ての髪はいい匂いがしてさらさらしていて、触り心地がいい。
これも、弟だからできること。
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