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街へ出かけましょうⅡ
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乗せた手を優しく握られてクリスティアはちょっと照れてしまったが、シフォナードに先を促されてついて行く。花屋に寄ったり、服を見てみたり、その都度手を離したり、つないだり。繰り返すうちに自然とお互い手が触れあうようになった。
「ここに入ってみないかい?」
立ち止まったのは一目で高級店とわかる宝石店だった。
「いらっしゃいませ」
店員の丁寧なあいさつに迎えられ、一歩足を踏み入れる。
様々なアクセサリーがガラスのショーケースに飾られている。比較的安価なものは手に取りやすいように周りの棚にも置かれている。
「まあ、きれいねえ」
キラキラとした宝石の世界に来たようでクリスティアは小さく感嘆の息を漏らした。シフォナードはそんな彼女を見つめて目を細める。
ショーケースの中の商品を店員が取り出して説明をしてくれた。街に出るので華美な服装はしていないのだが外見や物腰、纏う空気などで一目で上級貴族だとわかるのだろう。おすすめされるのはどれも一級品ばかりで見事なものだった。
「すみません。あちらの方を見てもいいですか?」
一通り眺めたクリスティアが尋ねた先には、新入荷の宣伝文字。店内に入った瞬間、目に飛び込んできて気になっていたのだった。
「ええ、どうぞ。実は今日入荷したばかりで、新人のデザイナーさんの作品なんですよ」
店員がにこやかに説明してくれた。
指輪やネックレス、ブレスレットが並んでいる。小ぶりの宝石をあしらっているから、普段使いにも重宝しそうなデザインである。
「これはどうかしら?」
クリスティアが手に取ったのは薔薇に蝶が止まっているモチーフのブレスレットだった。
「かわいらしいデザインだね。つけてみてもいいのかな?」
シフォナードが店員に聞くとどうぞと返事が返ってきたので、さっそく試してみようと思っていると、
「ちょっと待って、こっちがいいよ」
と、手渡されたのは紫色の薔薇に若草色の蝶のブレスレット。
これは? 薔薇はクリスティアの瞳の色、蝶はシフォナードの瞳の色。
「つけてあげるよ」
なんとなく気恥ずかしさに固まっているとシフォナードが留め金を外して左手につけてくれた。
白い華奢な手首にブレスレットのデザインがよく映える。身に着けてみると色合いもよくことのほかしっくりとなじんでいる。
「似合っている」
美しい薔薇に惹かれてとどまる蝶って、深読みすると意味深なモチーフだけど、クリスティアはどう思ったのだろう。手首に輝くブレスレットをかざしながら、嬉しそうに眺めている彼女をシフォナードは喜色満面で見つめていた。
「すごく、お似合いですわ。これはそれぞれ一点ものなのです。デザインは同じでも同じ色のものはないのですよ。ですから、こちらはお嬢様お一人だけのものになります」
「そうなのですね。それじゃ、これを包んで……いえ、このままつけてもいてもよいかしら?」
せっかくシフォナードがつけてくれたのだから、外すのももったいないと思って聞いてみた。店員はこころよく了承してくれたのでそのままブレスレットはクリスティアの手におさまった。
「ここに入ってみないかい?」
立ち止まったのは一目で高級店とわかる宝石店だった。
「いらっしゃいませ」
店員の丁寧なあいさつに迎えられ、一歩足を踏み入れる。
様々なアクセサリーがガラスのショーケースに飾られている。比較的安価なものは手に取りやすいように周りの棚にも置かれている。
「まあ、きれいねえ」
キラキラとした宝石の世界に来たようでクリスティアは小さく感嘆の息を漏らした。シフォナードはそんな彼女を見つめて目を細める。
ショーケースの中の商品を店員が取り出して説明をしてくれた。街に出るので華美な服装はしていないのだが外見や物腰、纏う空気などで一目で上級貴族だとわかるのだろう。おすすめされるのはどれも一級品ばかりで見事なものだった。
「すみません。あちらの方を見てもいいですか?」
一通り眺めたクリスティアが尋ねた先には、新入荷の宣伝文字。店内に入った瞬間、目に飛び込んできて気になっていたのだった。
「ええ、どうぞ。実は今日入荷したばかりで、新人のデザイナーさんの作品なんですよ」
店員がにこやかに説明してくれた。
指輪やネックレス、ブレスレットが並んでいる。小ぶりの宝石をあしらっているから、普段使いにも重宝しそうなデザインである。
「これはどうかしら?」
クリスティアが手に取ったのは薔薇に蝶が止まっているモチーフのブレスレットだった。
「かわいらしいデザインだね。つけてみてもいいのかな?」
シフォナードが店員に聞くとどうぞと返事が返ってきたので、さっそく試してみようと思っていると、
「ちょっと待って、こっちがいいよ」
と、手渡されたのは紫色の薔薇に若草色の蝶のブレスレット。
これは? 薔薇はクリスティアの瞳の色、蝶はシフォナードの瞳の色。
「つけてあげるよ」
なんとなく気恥ずかしさに固まっているとシフォナードが留め金を外して左手につけてくれた。
白い華奢な手首にブレスレットのデザインがよく映える。身に着けてみると色合いもよくことのほかしっくりとなじんでいる。
「似合っている」
美しい薔薇に惹かれてとどまる蝶って、深読みすると意味深なモチーフだけど、クリスティアはどう思ったのだろう。手首に輝くブレスレットをかざしながら、嬉しそうに眺めている彼女をシフォナードは喜色満面で見つめていた。
「すごく、お似合いですわ。これはそれぞれ一点ものなのです。デザインは同じでも同じ色のものはないのですよ。ですから、こちらはお嬢様お一人だけのものになります」
「そうなのですね。それじゃ、これを包んで……いえ、このままつけてもいてもよいかしら?」
せっかくシフォナードがつけてくれたのだから、外すのももったいないと思って聞いてみた。店員はこころよく了承してくれたのでそのままブレスレットはクリスティアの手におさまった。
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