公爵令嬢の結婚

きさらぎ

文字の大きさ
19 / 21

街へ出かけましょうⅡ

しおりを挟む
 乗せた手を優しく握られてクリスティアはちょっと照れてしまったが、シフォナードに先を促されてついて行く。花屋に寄ったり、服を見てみたり、その都度手を離したり、つないだり。繰り返すうちに自然とお互い手が触れあうようになった。

「ここに入ってみないかい?」

 立ち止まったのは一目で高級店とわかる宝石店だった。

「いらっしゃいませ」

 店員の丁寧なあいさつに迎えられ、一歩足を踏み入れる。
 様々なアクセサリーがガラスのショーケースに飾られている。比較的安価なものは手に取りやすいように周りの棚にも置かれている。

「まあ、きれいねえ」

 キラキラとした宝石の世界に来たようでクリスティアは小さく感嘆の息を漏らした。シフォナードはそんな彼女を見つめて目を細める。
 ショーケースの中の商品を店員が取り出して説明をしてくれた。街に出るので華美な服装はしていないのだが外見や物腰、纏う空気などで一目で上級貴族だとわかるのだろう。おすすめされるのはどれも一級品ばかりで見事なものだった。

「すみません。あちらの方を見てもいいですか?」

 一通り眺めたクリスティアが尋ねた先には、新入荷の宣伝文字。店内に入った瞬間、目に飛び込んできて気になっていたのだった。

「ええ、どうぞ。実は今日入荷したばかりで、新人のデザイナーさんの作品なんですよ」

 店員がにこやかに説明してくれた。

 指輪やネックレス、ブレスレットが並んでいる。小ぶりの宝石をあしらっているから、普段使いにも重宝しそうなデザインである。

「これはどうかしら?」

 クリスティアが手に取ったのは薔薇に蝶が止まっているモチーフのブレスレットだった。

「かわいらしいデザインだね。つけてみてもいいのかな?」

 シフォナードが店員に聞くとどうぞと返事が返ってきたので、さっそく試してみようと思っていると、

「ちょっと待って、こっちがいいよ」

 と、手渡されたのは紫色の薔薇に若草色の蝶のブレスレット。
 これは? 薔薇はクリスティアの瞳の色、蝶はシフォナードの瞳の色。

「つけてあげるよ」

 なんとなく気恥ずかしさに固まっているとシフォナードが留め金を外して左手につけてくれた。
 白い華奢な手首にブレスレットのデザインがよく映える。身に着けてみると色合いもよくことのほかしっくりとなじんでいる。

「似合っている」

 美しい薔薇に惹かれてとどまる蝶って、深読みすると意味深なモチーフだけど、クリスティアはどう思ったのだろう。手首に輝くブレスレットをかざしながら、嬉しそうに眺めている彼女をシフォナードは喜色満面で見つめていた。

「すごく、お似合いですわ。これはそれぞれ一点ものなのです。デザインは同じでも同じ色のものはないのですよ。ですから、こちらはお嬢様お一人だけのものになります」

「そうなのですね。それじゃ、これを包んで……いえ、このままつけてもいてもよいかしら?」

 せっかくシフォナードがつけてくれたのだから、外すのももったいないと思って聞いてみた。店員はこころよく了承してくれたのでそのままブレスレットはクリスティアの手におさまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

処理中です...