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第3章:【世界で一番働き者の爪の垢】
16.薬剤師、漫画家アシスタントになる
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「俺は週刊少年誌の連載をしててな。締切四日前なのにネームに時間かかっちまって清書ができてない。四日後の締切に間に合うようにお前らにも漫画原稿の仕上げを手伝ってほしいわけだ」
結局ディルの連載原稿を手伝うことになったダミ子たちは早速作業机に座らされていた。
アシスタントたちも興味津々で新入りの机周辺に集合している。おい締切間近。
「ネームとは?」
「んだよそこからかよ」
呆れたように腹をかきながら答える。
「ネームっつーのは漫画の物語ストーリーの流れとコマ割りを大まかに記したもののこと。それを軸に原稿へ清書してくんだ」
「なるほど下書きのようなものか」
「まァそんな感じだ。で、今からお前らにはアシとしてどれくらい使えるか試させてもらう」
「アシとは?」
「たぶんアシスタントのことですよ……」
こそっと耳打ちするマースに「なんでも略せば職人ぽいと思いやがって」と毒づくダミ子に「あ?」と舌打ちで返すディル。「ん?」と微笑むダミ子。相性悪めだ。
「んじゃ課題内容を発表するぞ」
デデドン! とディルが出した課題はこちら。
~これで君も名アシスタント!~
【課題】
・ベタ塗り
・トーン貼り(削り含む)
・人物のデッサンと背景のパース
……以上。ファイトだおd=(^o^)=b
端に描かれたイラストが無駄に上手くて気が散る。
「前に来た魔法使いの連中は天を仰ぐほど不器用でトーンは削れないベタははみ出すデッサンもパースもド下手くその最低な連中だったからな」
「酷い言われようだな」
「手伝ってくれたのに……」
「アレを更新しないように期待するぞ」
各作業机に原稿用紙とペン、その他諸々の道具(用途不明)が置かれる。
「ペンの使い分け具合も見たいから、人物デッサンはGペン、背景は丸ペンで描くように」
よーい……、
ストップウォッチを片手にディルが合図をかけようとするも、
「「なあ(あの)」」
「あんだよ?」
「「Gペンって何?」」
「あっさり更新したーッ!!」
結論から言うと二人とも酷い出来だった。
特にダミ子。
「…………」
ディルは絵を前に固まっていた。
「……」
原稿用紙にはミミズのようにうねった何かが描かれていた。手足は第三関節までありバランス悪く、上の丸い部分(顔!)には震える筆圧の軟弱なへのへのもへじが。
「……!」
ベタは完全にはみ出していて髪の毛から顔にインクが垂れ目も瞳孔どころか全て真っ黒でホラーそのもの。ご丁寧に口にもベタが塗られ登場人物はもれなくお歯黒。
「……!」
背景のパースは家が傾いていた。
お決まりの三角屋根に煙突付きの家は斜めになっており何故か奥にいくほど窓が大きくなっている。
「……!」
他にも諸々あったが省略。
原稿用紙を掴む手がわなわなと震えディルはついに叫んだ。
「こんな世界住めるかーッ!!」
「いいじゃん自分が住むわけでもあるまいし」
しれっとダミ子が言うと「そういうもんじゃねェー!」と机を叩く。
「俺のキャラを案山子にしてんじゃねェ! 欠陥住宅に住ませるな! 俺のキャラをお歯黒おばけにしやがって貴様ァ!」
「ま、まあまあディルさん」
たしなめるマースだが彼の絵も相当酷い。
彼の原稿用紙にはマッチ棒みたいな人(?)が数人転がっていた。
「僕たちド素人なんで。上手くなるよう練習しますし、今は多目に見てもらえませんか」
「週刊は前の週と質クオリティを比べられるんだよ。絵はとくにな。少しでも絵に差ができたら読者は混乱する」
「読者もそんなに真剣に読んでないって」
「貴様あああぁ!」
「二人とも落ち着いて~っ!」
ダミ子に掴みかかろうとするディルをマースとスタッフ一同で止め、とりあえず二人は基礎から学ぶため漫画を読むことにした。
もちろんディルの連載している漫画である。
「なんだこの漫画は」
単行本の一巻を渡され二人で読む。
「俺の代表作【デビルハーベスト!】だ。初連載にして大ヒット作なんだぜ!」
「なになに……」
【デビルハーベスト!】
《人々に芽生える悪の芽・デビルハーブを刈り取るため実家の農家を継ぐはずだった主人公“ハタケ”が天使の“タウエ”とバディを組みハーブハンターを目指すバトルアクションファンタジー!!》
「なっ。王道で燃えるだろ!?」
自信満々なディルに対しダミ子は冷めた目でパラパラページをめくり、
「草刈るだけなんて地味な漫画じゃん」
「草じゃない! デビルハーブだ! すっごく粗悪で凶暴なんだぞ!」
「ふぅん」
確かに怖そうな顔をした人面葉っぱが人々の頭に潜伏し暴走するのは怖さを感じる。
「なんか野蛮」
「少年漫画ってのはこういうもんだよ。少女漫画ばかり読むお嬢には刺激が強かったか?」
「いや私漫画自体読まないし……マースくんもだろ? って、マースくん?」
隣を見るとマースは夢中でコミックスを読んでいた。
目はきらきらといつになく輝いている。
「面白いですねこれ!」
マースが叫ぶ。
「戦う場面も迫力があってワクワクしちゃいますよ!」
瞳を煌めかせ興奮気味に喋るマースにダミ子は意外に思った。
「へえ意外。君もこういうのが好きなのか」
「あはは。僕、子供の頃から漫画は読んだことなかったもので……こんなに面白いものがあったんですね」
「へーお前見る目あんじゃん」
ディルがマースの肩を組む。
自分の作品が褒められたか心を許したそうだ。
「チュー太は将来有望だな」
「ちゅ、チュー太?」
「なんとなく小動物、ネズミっぽいからお前」
マースがネズミに変身することをディルは知らない。
勘が鋭いのは創造力豊かな漫画家故か。
「……それに比べてダミ公は」
「おいダミ公ってなんだ公って」
「お前もさァ、チュー太の人を素直に認める気持ちを見習えよ。デッサンだってお前よりはるかにマシだし。レベル段違いだぜ?」
「……なんだって?」
「だって本当のことじゃーん?」
意地悪そうに目を細め、
「ていうかお前がまずチュー太の爪の垢を煎じて飲んだ方がいいんじゃね?」
ブチッ。
頭の血管が切れる音がした。
「ああそうかね。じゃあ私いなくても問題ないんじゃない? 愛しのチュー太くんがさぞ働いてくれるだろうし」
「ちょ、ダミ子さんっ」
ダミ子は踵を返し作業場を出ていった。
結局ディルの連載原稿を手伝うことになったダミ子たちは早速作業机に座らされていた。
アシスタントたちも興味津々で新入りの机周辺に集合している。おい締切間近。
「ネームとは?」
「んだよそこからかよ」
呆れたように腹をかきながら答える。
「ネームっつーのは漫画の物語ストーリーの流れとコマ割りを大まかに記したもののこと。それを軸に原稿へ清書してくんだ」
「なるほど下書きのようなものか」
「まァそんな感じだ。で、今からお前らにはアシとしてどれくらい使えるか試させてもらう」
「アシとは?」
「たぶんアシスタントのことですよ……」
こそっと耳打ちするマースに「なんでも略せば職人ぽいと思いやがって」と毒づくダミ子に「あ?」と舌打ちで返すディル。「ん?」と微笑むダミ子。相性悪めだ。
「んじゃ課題内容を発表するぞ」
デデドン! とディルが出した課題はこちら。
~これで君も名アシスタント!~
【課題】
・ベタ塗り
・トーン貼り(削り含む)
・人物のデッサンと背景のパース
……以上。ファイトだおd=(^o^)=b
端に描かれたイラストが無駄に上手くて気が散る。
「前に来た魔法使いの連中は天を仰ぐほど不器用でトーンは削れないベタははみ出すデッサンもパースもド下手くその最低な連中だったからな」
「酷い言われようだな」
「手伝ってくれたのに……」
「アレを更新しないように期待するぞ」
各作業机に原稿用紙とペン、その他諸々の道具(用途不明)が置かれる。
「ペンの使い分け具合も見たいから、人物デッサンはGペン、背景は丸ペンで描くように」
よーい……、
ストップウォッチを片手にディルが合図をかけようとするも、
「「なあ(あの)」」
「あんだよ?」
「「Gペンって何?」」
「あっさり更新したーッ!!」
結論から言うと二人とも酷い出来だった。
特にダミ子。
「…………」
ディルは絵を前に固まっていた。
「……」
原稿用紙にはミミズのようにうねった何かが描かれていた。手足は第三関節までありバランス悪く、上の丸い部分(顔!)には震える筆圧の軟弱なへのへのもへじが。
「……!」
ベタは完全にはみ出していて髪の毛から顔にインクが垂れ目も瞳孔どころか全て真っ黒でホラーそのもの。ご丁寧に口にもベタが塗られ登場人物はもれなくお歯黒。
「……!」
背景のパースは家が傾いていた。
お決まりの三角屋根に煙突付きの家は斜めになっており何故か奥にいくほど窓が大きくなっている。
「……!」
他にも諸々あったが省略。
原稿用紙を掴む手がわなわなと震えディルはついに叫んだ。
「こんな世界住めるかーッ!!」
「いいじゃん自分が住むわけでもあるまいし」
しれっとダミ子が言うと「そういうもんじゃねェー!」と机を叩く。
「俺のキャラを案山子にしてんじゃねェ! 欠陥住宅に住ませるな! 俺のキャラをお歯黒おばけにしやがって貴様ァ!」
「ま、まあまあディルさん」
たしなめるマースだが彼の絵も相当酷い。
彼の原稿用紙にはマッチ棒みたいな人(?)が数人転がっていた。
「僕たちド素人なんで。上手くなるよう練習しますし、今は多目に見てもらえませんか」
「週刊は前の週と質クオリティを比べられるんだよ。絵はとくにな。少しでも絵に差ができたら読者は混乱する」
「読者もそんなに真剣に読んでないって」
「貴様あああぁ!」
「二人とも落ち着いて~っ!」
ダミ子に掴みかかろうとするディルをマースとスタッフ一同で止め、とりあえず二人は基礎から学ぶため漫画を読むことにした。
もちろんディルの連載している漫画である。
「なんだこの漫画は」
単行本の一巻を渡され二人で読む。
「俺の代表作【デビルハーベスト!】だ。初連載にして大ヒット作なんだぜ!」
「なになに……」
【デビルハーベスト!】
《人々に芽生える悪の芽・デビルハーブを刈り取るため実家の農家を継ぐはずだった主人公“ハタケ”が天使の“タウエ”とバディを組みハーブハンターを目指すバトルアクションファンタジー!!》
「なっ。王道で燃えるだろ!?」
自信満々なディルに対しダミ子は冷めた目でパラパラページをめくり、
「草刈るだけなんて地味な漫画じゃん」
「草じゃない! デビルハーブだ! すっごく粗悪で凶暴なんだぞ!」
「ふぅん」
確かに怖そうな顔をした人面葉っぱが人々の頭に潜伏し暴走するのは怖さを感じる。
「なんか野蛮」
「少年漫画ってのはこういうもんだよ。少女漫画ばかり読むお嬢には刺激が強かったか?」
「いや私漫画自体読まないし……マースくんもだろ? って、マースくん?」
隣を見るとマースは夢中でコミックスを読んでいた。
目はきらきらといつになく輝いている。
「面白いですねこれ!」
マースが叫ぶ。
「戦う場面も迫力があってワクワクしちゃいますよ!」
瞳を煌めかせ興奮気味に喋るマースにダミ子は意外に思った。
「へえ意外。君もこういうのが好きなのか」
「あはは。僕、子供の頃から漫画は読んだことなかったもので……こんなに面白いものがあったんですね」
「へーお前見る目あんじゃん」
ディルがマースの肩を組む。
自分の作品が褒められたか心を許したそうだ。
「チュー太は将来有望だな」
「ちゅ、チュー太?」
「なんとなく小動物、ネズミっぽいからお前」
マースがネズミに変身することをディルは知らない。
勘が鋭いのは創造力豊かな漫画家故か。
「……それに比べてダミ公は」
「おいダミ公ってなんだ公って」
「お前もさァ、チュー太の人を素直に認める気持ちを見習えよ。デッサンだってお前よりはるかにマシだし。レベル段違いだぜ?」
「……なんだって?」
「だって本当のことじゃーん?」
意地悪そうに目を細め、
「ていうかお前がまずチュー太の爪の垢を煎じて飲んだ方がいいんじゃね?」
ブチッ。
頭の血管が切れる音がした。
「ああそうかね。じゃあ私いなくても問題ないんじゃない? 愛しのチュー太くんがさぞ働いてくれるだろうし」
「ちょ、ダミ子さんっ」
ダミ子は踵を返し作業場を出ていった。
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