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第6章:【スカピー火山のドラゴンの逆鱗】
36.友達
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「……う、」
「あ、目、覚めた?」
ダミ子は膝の上に乗せたタイムの顔を覗きこんだ。
「薬剤師……どうして……俺はいったい……?」
「殴り合いの果てに気を失ったんだ。まったくとんだ泥試合だったよ君たち」
「そうだ……マースは……? ッ……!」
「まだ動くな。治療中だから」
タイムの頬に消毒をあてる。痛みに顔をしかめつつも二の腕に貼られたそれに気づき、さらに顔をしかめた。
「なんか、身体中にダサいシールが貼られてるんだが……」
「私の開発したスペシャル絆創膏【トンでも絆創膏】だ。これを貼れば傷の治りが早まる」
腕と足、今顔に貼られた。身体のいたるところに微妙に可愛くないブタの絵が描かれた絆創膏が貼られている。
「こんな恥ずかしいもの貼ってられるか……とる」
腕に貼られた絆創膏を剥がそうとすると、
ブギィィィ……
ブタの嫌な悲鳴みたいなものが絆創膏から鳴った。
「う、なんて不快指数の高い音」
「剥がし対策だ」
「……そんなことよりマースは?
アイツはどうなった」
「無事だよ~。兄さんといいとこ競るくらいのブタさんの数」
オレガノが歩いてきた。傍らには同じくブタの絆創膏まみれのマースが立っていた。先に治療を終えていたらしい。
「でも兄さんの方が重症かな? 倒れたのも先だったし」
「オレガノ……俺は負けたのか」
「ほんの僅差だよ。運良く僕の倒れる時間が遅かっただけだ」
タイムの問いにマースが答えた。
「私が魔法で治すって言ったんだけどマースが拒んだんだよね。これはただのすれ違いの喧嘩。反省を含めて自然治癒で治すって」
ね、と隣のマースに目配せをする。「……ああ」
「友達同士の喧嘩なら両成敗だろ」
「え……」
横たわるタイムの側にマースはしゃがみこむ。
「悪かったな。お前の気持ちに気づけなくて。僕、学院で友達もいなかったから喧嘩の仕方もわからなかったんだよ」
「マース……」
「お前の本音が聞けてよかった。タイムはあの頃から僕の友達でいてくれたんだな」
そう言ってマースはタイムに手を差し出した。
「フン。なんのことだか」
そう言いながらも差し出された手をとる。
取り合う手には、キャッチーなブタの絵。
「「ダセーペアルック」」
互いの姿を見て二人は吹き出すように笑った。
「……」
「タイム?」
タイムは白目を剥いていた。
「また気絶かよ!」
「勝負ありだな」
ドラゴンは交互に二人を見て勝敗を言い渡した。
「勝負の結果から、逆鱗は勝者マースに渡す。異論はないかね」
「ああ」
タイムの同意を聞きドラゴンは首肯くと、逆鱗をマースの手に渡した。
【スカピー火山のドラゴンの逆鱗を手に入れた!】
「たしかに」
「これで、残すは【イバラの森の魔女の涙】のみ……」
「あーあ。これでミッション失敗かあ」
「ネムーニャ皇帝がさぞ不機嫌になるだろうな」
「あー憂鬱~」
そうか。
逆鱗が手に入らなかったということは、もう秘薬を作ることは不可能。自動的にタイムたちのミッションはここで終わりを迎えるということだ。
なんともいえない気持ちになるダミ子の心情を読み取ったのかオレガノは大袈裟に手を挙げて言った。
「わーウッザ。もしかして私らに同情してる? 言っとくけど全然嬉しくないから。私たちに同情なんておこがましいのよ」
「まったくだ。おいグゥスカの薬剤師。俺たちに後ろめたい感情があるなら必ず秘薬【メザメール】を完成させることだな」
「タイム……オレガノも、二人とも、ありがとう」
「元気でな」
「ああ。タイムとオレガノも元気で」
「マース~! また会いに行くからね! 今度はミッションじゃなくプライベートで会おうね~!」
「近い。近いよオレガノ……うん。また会おう」
名残惜しそうにいつまでもハグをするオレガノを引き剥がし、タイムたちは火山から上空へ飛び立っていった。
「……行ってしまったな。騒がしいが、なかなか愉快な兄妹だった」
「はい。いなくなるとちょっと淋しいや」
「私たちの旅も最終局面だな」
残すのは一つ。
「【イバラの森の魔女の涙】……か。ここからが難解なんだよな」
「地図にも載ってないから後回してしまいましたもんね。どうやって探すか……」
「ん? イバラの森と言ったか?」
ドラゴンがその名前に反応した。
「【イバラの森】ならここからずっと奥へ行った北の森の更に奥にある森がそうだぞ」
「知ってるのか!?」
「ああ。塔までは行けなかったが」
「塔?」
「イバラの森の先に塔がある。そこに魔女は住んでるらしい。らしいというのも、イバラの森が出現した数十年前からワシは魔女の姿を一回も見たことがない。本当にいるのかも疑わしい。そういう意味では得体の知れない相手だ。用心しといた方がいい」
「なんだか怖いですね」
「世の中得体の知れないものが一番怖いからな」
最後の材料もこれまでと同様、きっと一筋縄ではいかないだろう。
それでも自分たちは何とか材料を手に入れた。乗り越えてきた。
「ここまで来たんだ。あともう少し、頑張ろう」
「はい。最後までダミ子さんをサポートします!」
いよいよ、最後の材料集めが始まる。
「あ、目、覚めた?」
ダミ子は膝の上に乗せたタイムの顔を覗きこんだ。
「薬剤師……どうして……俺はいったい……?」
「殴り合いの果てに気を失ったんだ。まったくとんだ泥試合だったよ君たち」
「そうだ……マースは……? ッ……!」
「まだ動くな。治療中だから」
タイムの頬に消毒をあてる。痛みに顔をしかめつつも二の腕に貼られたそれに気づき、さらに顔をしかめた。
「なんか、身体中にダサいシールが貼られてるんだが……」
「私の開発したスペシャル絆創膏【トンでも絆創膏】だ。これを貼れば傷の治りが早まる」
腕と足、今顔に貼られた。身体のいたるところに微妙に可愛くないブタの絵が描かれた絆創膏が貼られている。
「こんな恥ずかしいもの貼ってられるか……とる」
腕に貼られた絆創膏を剥がそうとすると、
ブギィィィ……
ブタの嫌な悲鳴みたいなものが絆創膏から鳴った。
「う、なんて不快指数の高い音」
「剥がし対策だ」
「……そんなことよりマースは?
アイツはどうなった」
「無事だよ~。兄さんといいとこ競るくらいのブタさんの数」
オレガノが歩いてきた。傍らには同じくブタの絆創膏まみれのマースが立っていた。先に治療を終えていたらしい。
「でも兄さんの方が重症かな? 倒れたのも先だったし」
「オレガノ……俺は負けたのか」
「ほんの僅差だよ。運良く僕の倒れる時間が遅かっただけだ」
タイムの問いにマースが答えた。
「私が魔法で治すって言ったんだけどマースが拒んだんだよね。これはただのすれ違いの喧嘩。反省を含めて自然治癒で治すって」
ね、と隣のマースに目配せをする。「……ああ」
「友達同士の喧嘩なら両成敗だろ」
「え……」
横たわるタイムの側にマースはしゃがみこむ。
「悪かったな。お前の気持ちに気づけなくて。僕、学院で友達もいなかったから喧嘩の仕方もわからなかったんだよ」
「マース……」
「お前の本音が聞けてよかった。タイムはあの頃から僕の友達でいてくれたんだな」
そう言ってマースはタイムに手を差し出した。
「フン。なんのことだか」
そう言いながらも差し出された手をとる。
取り合う手には、キャッチーなブタの絵。
「「ダセーペアルック」」
互いの姿を見て二人は吹き出すように笑った。
「……」
「タイム?」
タイムは白目を剥いていた。
「また気絶かよ!」
「勝負ありだな」
ドラゴンは交互に二人を見て勝敗を言い渡した。
「勝負の結果から、逆鱗は勝者マースに渡す。異論はないかね」
「ああ」
タイムの同意を聞きドラゴンは首肯くと、逆鱗をマースの手に渡した。
【スカピー火山のドラゴンの逆鱗を手に入れた!】
「たしかに」
「これで、残すは【イバラの森の魔女の涙】のみ……」
「あーあ。これでミッション失敗かあ」
「ネムーニャ皇帝がさぞ不機嫌になるだろうな」
「あー憂鬱~」
そうか。
逆鱗が手に入らなかったということは、もう秘薬を作ることは不可能。自動的にタイムたちのミッションはここで終わりを迎えるということだ。
なんともいえない気持ちになるダミ子の心情を読み取ったのかオレガノは大袈裟に手を挙げて言った。
「わーウッザ。もしかして私らに同情してる? 言っとくけど全然嬉しくないから。私たちに同情なんておこがましいのよ」
「まったくだ。おいグゥスカの薬剤師。俺たちに後ろめたい感情があるなら必ず秘薬【メザメール】を完成させることだな」
「タイム……オレガノも、二人とも、ありがとう」
「元気でな」
「ああ。タイムとオレガノも元気で」
「マース~! また会いに行くからね! 今度はミッションじゃなくプライベートで会おうね~!」
「近い。近いよオレガノ……うん。また会おう」
名残惜しそうにいつまでもハグをするオレガノを引き剥がし、タイムたちは火山から上空へ飛び立っていった。
「……行ってしまったな。騒がしいが、なかなか愉快な兄妹だった」
「はい。いなくなるとちょっと淋しいや」
「私たちの旅も最終局面だな」
残すのは一つ。
「【イバラの森の魔女の涙】……か。ここからが難解なんだよな」
「地図にも載ってないから後回してしまいましたもんね。どうやって探すか……」
「ん? イバラの森と言ったか?」
ドラゴンがその名前に反応した。
「【イバラの森】ならここからずっと奥へ行った北の森の更に奥にある森がそうだぞ」
「知ってるのか!?」
「ああ。塔までは行けなかったが」
「塔?」
「イバラの森の先に塔がある。そこに魔女は住んでるらしい。らしいというのも、イバラの森が出現した数十年前からワシは魔女の姿を一回も見たことがない。本当にいるのかも疑わしい。そういう意味では得体の知れない相手だ。用心しといた方がいい」
「なんだか怖いですね」
「世の中得体の知れないものが一番怖いからな」
最後の材料もこれまでと同様、きっと一筋縄ではいかないだろう。
それでも自分たちは何とか材料を手に入れた。乗り越えてきた。
「ここまで来たんだ。あともう少し、頑張ろう」
「はい。最後までダミ子さんをサポートします!」
いよいよ、最後の材料集めが始まる。
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