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初めて新幹線に乗り東京へ来た。人も建物も全然違う。
(都会ってすごい。全然違う国みたい)
地図と目の前の景色を見比べながら、人を掻き分け歩き続けると星空出版が見えてきた。
なんとか無事にたどり着いた。
「天野真琴さん?」
スーツを着た三十半ばくらいの女性が声をかけてきた。
「もしかして」
「祝井です。この度は受賞おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「応募要項で見たけど、学生さんなのよね。東京まで来るの大変だったでしょう」
「いえ、そんなこと……ありました、です」
なに正直に言っちゃってんの私。しかも日本語変だし。
祝井さんは口元に手をあてて笑った。
「ふふ、今時珍しい素直ないい子ね。連絡した通り、授賞式まで書籍化についての打ち合わせを行うので、こちらにどうぞ」
「はい」
応接室まで案内され、私は祝井さんに書籍化進行についての詳細を聞いた。
「【片翼で空は翔べるか】だけど、とても良かったわ。天野さんは小説を書くのは初めてかしら」
「はい、初めてです」
「なにか小説を送ってみようと思うきっかけがあったの?」
「それは」
実琴の姿が脳裏にちらつく。
「……」
私が言葉を詰まらせていると、祝井さんが口を開いた。
「もしかしてこれは実話をモチーフにしていたりする? 例えば、身近にあった出来事や経験したことなんか書いてたり」
「! どうしてですか」
「なんとなく。強いていえば生徒同士の確執やいじめ描写がリアリティーに富んでたから」
「そうですね……身近なところを参考にしました」
「そう。私はこの小説はもっと世に広めてほしい作品だと思うな。最近なかなかここまで思わせてくれる作品に出会わなかったから嬉しい。あなたの作品からは心から……いえ、魂からの叫びが聞こえてきた」
祝井さんにそう言われたことで、私はここで初めて手応えを感じた。
「それで、書籍化にあたって作品の直しをしてほしいの。校正というものね。やはり本にするなら最高の状態で世に出したいから。天野さんにはこれからメールでやり取りさせてもらいます。パソコンのネット環境は大丈夫かしら」
パソコンは父のものがある。
「パソコンは、父に貸してもらえるよう頼んでみます」
「そう。無理なら言ってね。こちらでできることはやるから。じゃあ修正のスケジュールだけど……」
祝井さんは高級そうな皮の手帳にこれまた高級そうなボールペンを滑らせる。
「今年の秋に出版予定だから、直しは六月までには完了してほしいです。進行具合の確認もするからメールボックスはこまめにチェックしてね」
「六月まで」
まだ三ヶ月もある。
修正だけなら余裕そうな気もするけど。
私の考えを察したのか、祝井さんは言った。
「修正といっても本一冊分だからね。それに、これから学校も始まって忙しくなる。天野さんは四月から高校生でしょう。一番楽しめる時期よ。いいなぁ高校生活。戻れるものなら私も戻りたいくらい」
「そうですかね」
高校を謳歌している自分が想像できない。
「その青春の真っ只中作業をしてもらうのは忍びないけれど、修正作業頑張ってね」
祝井さんはスケジュール帳を閉じると、左手の腕時計に目をやる。
「……さあ、授賞式が始まるわ。難しい話は一旦置いといて、今からは楽しんでください」
私は肩を軽く叩かれた。すでに肩は強ばっていた。
何もかも知らない世界だ。
私はとんでもないところに足を踏み入れてしまった。
(それでも、進まなきゃ)
私の作品が、姉の人生が認められたんだから。
私は一度大きく息を吸い授賞式の会場へ足を向けた。
(都会ってすごい。全然違う国みたい)
地図と目の前の景色を見比べながら、人を掻き分け歩き続けると星空出版が見えてきた。
なんとか無事にたどり着いた。
「天野真琴さん?」
スーツを着た三十半ばくらいの女性が声をかけてきた。
「もしかして」
「祝井です。この度は受賞おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「応募要項で見たけど、学生さんなのよね。東京まで来るの大変だったでしょう」
「いえ、そんなこと……ありました、です」
なに正直に言っちゃってんの私。しかも日本語変だし。
祝井さんは口元に手をあてて笑った。
「ふふ、今時珍しい素直ないい子ね。連絡した通り、授賞式まで書籍化についての打ち合わせを行うので、こちらにどうぞ」
「はい」
応接室まで案内され、私は祝井さんに書籍化進行についての詳細を聞いた。
「【片翼で空は翔べるか】だけど、とても良かったわ。天野さんは小説を書くのは初めてかしら」
「はい、初めてです」
「なにか小説を送ってみようと思うきっかけがあったの?」
「それは」
実琴の姿が脳裏にちらつく。
「……」
私が言葉を詰まらせていると、祝井さんが口を開いた。
「もしかしてこれは実話をモチーフにしていたりする? 例えば、身近にあった出来事や経験したことなんか書いてたり」
「! どうしてですか」
「なんとなく。強いていえば生徒同士の確執やいじめ描写がリアリティーに富んでたから」
「そうですね……身近なところを参考にしました」
「そう。私はこの小説はもっと世に広めてほしい作品だと思うな。最近なかなかここまで思わせてくれる作品に出会わなかったから嬉しい。あなたの作品からは心から……いえ、魂からの叫びが聞こえてきた」
祝井さんにそう言われたことで、私はここで初めて手応えを感じた。
「それで、書籍化にあたって作品の直しをしてほしいの。校正というものね。やはり本にするなら最高の状態で世に出したいから。天野さんにはこれからメールでやり取りさせてもらいます。パソコンのネット環境は大丈夫かしら」
パソコンは父のものがある。
「パソコンは、父に貸してもらえるよう頼んでみます」
「そう。無理なら言ってね。こちらでできることはやるから。じゃあ修正のスケジュールだけど……」
祝井さんは高級そうな皮の手帳にこれまた高級そうなボールペンを滑らせる。
「今年の秋に出版予定だから、直しは六月までには完了してほしいです。進行具合の確認もするからメールボックスはこまめにチェックしてね」
「六月まで」
まだ三ヶ月もある。
修正だけなら余裕そうな気もするけど。
私の考えを察したのか、祝井さんは言った。
「修正といっても本一冊分だからね。それに、これから学校も始まって忙しくなる。天野さんは四月から高校生でしょう。一番楽しめる時期よ。いいなぁ高校生活。戻れるものなら私も戻りたいくらい」
「そうですかね」
高校を謳歌している自分が想像できない。
「その青春の真っ只中作業をしてもらうのは忍びないけれど、修正作業頑張ってね」
祝井さんはスケジュール帳を閉じると、左手の腕時計に目をやる。
「……さあ、授賞式が始まるわ。難しい話は一旦置いといて、今からは楽しんでください」
私は肩を軽く叩かれた。すでに肩は強ばっていた。
何もかも知らない世界だ。
私はとんでもないところに足を踏み入れてしまった。
(それでも、進まなきゃ)
私の作品が、姉の人生が認められたんだから。
私は一度大きく息を吸い授賞式の会場へ足を向けた。
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