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黒光りのゴキリンが空を飛ぶ
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――んっ?
コンッ
コンッ
何かが壁に当たるような音がした。
「ん。こんな朝早くから何なの?」
窓に小石のようなものが当てられたようなそんな音だ。布団に包まってまだ寝ていたい気持ちを引きずりながら、重たい瞼を開ける。 あたりはまだ少し薄暗い。
また、コンッと小さな音がする。私は何が起きてるのか気になり窓から外の様子を見ることにした。
東の窓にかけられたカーテンを開くと、眩しかった。早朝の太陽ってこんなに輝いてたんだ。ぼやけた視界で、下を覗くと、マイが小石を掴んで手を振ってる姿が見えた。
「えっ、マイっ?」
マイは顔が赤くなっている。昨日一晩中ユウキの事で泣いたのかもしれない。
マイはいつもは堂々としてるようで実は精神的に弱いとこがある。人前で弱いとこを見せないようにしてるだけ。それは綺麗に研いだ刃物のような性格で、硬いものに当たれば簡単に欠けてしまうような繊細な性格。そんなことを思っていたら。
「早くあけてくれ! 朝から二人で作戦練れば、今日中に終わるだろ。ユウキの助けなんていらないから私たちだけでいくぞ」
私が窓を開けるとマイは助走をつけて、大きくジャンプする。2階の屋根まで大きく飛び上がり部屋の中に突入してきた。
こらこら、土足禁止だよ家は。とも思ったけど、マイだから何となく許してしまう。
「お待たせー! 待たせて悪かったな」
「マイッ、待ってないし。それより早すぎるし。何時だと思ってるの? 寝起きなんだから髪もボサボサになってるし、勘弁してよね」
「私振られたのか?」
突然、マイは目に涙を溜めるとボソリと言いながら私を見つめる。そしてだらりと力無く腕を垂らしている。こんな弱気なマイ見たことない。
マイは本気でユウキのことが好きらしい。でもユウキの気持ちがよく分からないから何か言って欲しいのかもしれない。
「振られてもないし、大体マイ、告白してもないよね?」
「まあね」
「いつもなら積極的に動いてるのに肝心な時になると自分のことはダメなんだね?」
「それ言われると傷付くんだけど」
「これだけ伝えとくね。ユウキはあなたのことが好きみたい。でも人助けもしたいんだって」
私は言葉を濁して伝えるしかなかった。どこまで話していいのか分からないからだ。
「そう。わかったわ」
ユウキがマイのこと思ってる気持ちがあるって知ったのが嬉しかったのか、マイは「ふうーっ」と言いながら、大きく伸びをした。表情の陰りが取れ、パッと少し明るくなったようなそして、照れくさそうに笑い始めた。
そうかと思えば少し考えてる素振りで真っ赤になるマイ。まさか嫉妬してないよね? 助けたい人ってキョウコのことだろうし。
マイは私のベッドに大の字に寝転ぶと。
「もう、恋愛とかそんなのいいわ。私らしくないよな。ユウキよりいい男なんて沢山いるだろ。世界は広いんだから。ツグミの次の素材集め手伝ってやるよ」
「どうしてそれを?」
「ツグミのことは何でもお見通しなんだよ。アキラだっけ? 早く石化をといてあげたいしな」
マイは自分に得があるわけじゃないのに、なんでいつも助けてくれるんだろう。それだけが不思議だ。大抵無料で何かしてくれるってことはそれ相応の報酬、もしくはその後なんかの狙いがあるとしか思えない。
友達だから安心と考えるのは浅はかな気もするし。もちろん友達だから小さなことは許せるのが当たり前と言う気もするけど。
エリクサーの素材集めもあと少し、後半になればなるほど手に入れるのが厳しい素材になっていく。
「次は龍の瞳なの。ここからはるか100キロもある龍極の崖地に生息する黒色のドラゴンからドロップするアイテムで、ドラゴンの肌は鋼でできていてその辺の刀では刃を突き刺すことすらできないって言われてる。
ピンクの髪のお姉さんの本によれば、軟体動物クラーゴンの粉を振りかけると少しやらかくなるみたい。そこにオリハルコンの剣が刺さればなんとかなるらしいよ」
マイの武器は皮のムチだし、ゆうきのはその辺の安物の鉄の剣。オリハルコンの剣なんてどこにあるのよ。
「オリハルコンの剣? 聞いことあるな。盗賊仲間によればこないだの勇者の剣がオリハルコンの剣らしいぞ。でもさすがにあの勇者から奪うのは難しいだろうし」
「もしかしたらオリハルコンって、採掘できるんじゃない? まさかこの世界に1本しかないなんてことありえないし」
「勇者の剣はどうやって手に入れたんだろう?」
マイは首を傾げて腕を組む。そんなこと知ってるわけないよね。
「噂だとどこかのダンジョンに潜って宝箱から取ってきたらしいぞ。どこかは分からない」
「また図書館いってみる? もしかしたらオリハルコンについて何かわかるかもしれないし」
私たちはアップル学園の図書館に向かうことにした。
そこである1冊の文献を見つけた。オリハルコンの剣は神の剣。地中深く眠るとされ、100階の地下ダンジョンのある古の洞窟内にあると記載されていた。
下のダンジョンに潜るほどモンスターが強くなるらしい。
私が潜って最下層にたどり着けるのかな? でもいけるところまで行くしかないよね。
私たちは装備を整えることにした。
防具屋に入り、店員に古の洞窟の話をするとうちの防具ではもたないと言われてしまう。国一番の防具屋の装備品でもダメならもうどうしようもない。
公園で途方に暮れるマイと私。
10階層までしかあの国1番の防具屋の装備でももたないらしい。
ピンクの髪のお姉さんどうやって潜ったのよ。
明日は月曜日。公園に行けばって、場所はここなんだけど。会えるかもしれない。そんなことを考えていたら。
公園の入口の街路樹の方からピンクの髪の女性が杖を付いて歩いてくるのが見えた。途端に私の頬は熱くなる。
「ツグミ! ひさしぶり。あなたと待ち合わせするのが習慣になってたまに来てたの。ここって、日向ぼっこにちょうどいいわね」
公園の桜の木は満開で風が吹き、綺麗なピンクの花びらが舞い落ちる。串に刺さった団子を頬張りながら、私たちの方に向かってくるお姉さん。
「オリハルコンの剣を作りたいんですけど、どうしたらいいのです?」
「オリハルコンなんて懐かしいじゃない。早速取りに行くの?」
「あの古の洞窟ってダンジョンに潜るには透明粉で行けるわよ!
あとは瞬足の粉かな。全てのモンスターをかわして最深部に潜るのよ。あとなんだったかしら、
昔だから、何か大事なことを忘れているような気がするわ」
俊足の粉はやばっ。私の嫌いな黒光りのゴキリンからドロップする粉だ。
ゴキリンは辛い思い出がある。
子供の頃かくれんぼで小さな洞窟内に隠れた時にゴキリンに誘拐されて食べられそうになったのだ。
今でも忘れられない。
ゴキリンが手に巨大なナイフとフォークを持ってガシャガシャとして、皿の上には私が手足を縛られた状態で身動き取れなかった。あんなのは二度とごめんだよ。
もしあの時駆けつけたアキラが松明でおいはらってなかったら今頃私はゴキリンの排泄物になっていたかもしれないのだ。
そう、ゴキリンの弱点は炎だ。
トラウマだけどやるしかないよね。気合いをいれたいけど、足がガクガクしてくる。実際あの背中の黒光りの羽や小刻みに動く羽音を聞いて正気でいられるのか分からない。
大丈夫だよ。もうあれから10年は経ってる。私は大丈夫。きっと大丈夫なはず。
「ツグミいくよ! アタシがムチでブッ倒してやるから安心しなさいよ」
「お姉さんありがとう。今から行ってくるね」
「頑張ってね! いつもツグのこと、応援してるから。もし困ったらこの玉使いなさい」
ピンクの髪のお姉さんは私のスカートのポケットに銃の玉を3玉押し込んだ。
ニコッとして、
「本当は私も行きたいんだけど。今日は花見をしないといけないから、満開だからね!」
片手に団子、もう片方はアルコールのあるチューハイを持っている。少し顔が赤く今日は無理そう。
「いつもありがとうございます。これってなんの玉なんです?」
「もしゴキリンに遭遇して倒せなかったらその玉を撃てばいいよ! マイちゃんに撃てば分かるから!」
「強化系の玉なんですね。早速行ってきますね」
私とマイはお姉さんに手を振り別れた。
私たちは一度準備するために家に向かうことにした。
コンッ
コンッ
何かが壁に当たるような音がした。
「ん。こんな朝早くから何なの?」
窓に小石のようなものが当てられたようなそんな音だ。布団に包まってまだ寝ていたい気持ちを引きずりながら、重たい瞼を開ける。 あたりはまだ少し薄暗い。
また、コンッと小さな音がする。私は何が起きてるのか気になり窓から外の様子を見ることにした。
東の窓にかけられたカーテンを開くと、眩しかった。早朝の太陽ってこんなに輝いてたんだ。ぼやけた視界で、下を覗くと、マイが小石を掴んで手を振ってる姿が見えた。
「えっ、マイっ?」
マイは顔が赤くなっている。昨日一晩中ユウキの事で泣いたのかもしれない。
マイはいつもは堂々としてるようで実は精神的に弱いとこがある。人前で弱いとこを見せないようにしてるだけ。それは綺麗に研いだ刃物のような性格で、硬いものに当たれば簡単に欠けてしまうような繊細な性格。そんなことを思っていたら。
「早くあけてくれ! 朝から二人で作戦練れば、今日中に終わるだろ。ユウキの助けなんていらないから私たちだけでいくぞ」
私が窓を開けるとマイは助走をつけて、大きくジャンプする。2階の屋根まで大きく飛び上がり部屋の中に突入してきた。
こらこら、土足禁止だよ家は。とも思ったけど、マイだから何となく許してしまう。
「お待たせー! 待たせて悪かったな」
「マイッ、待ってないし。それより早すぎるし。何時だと思ってるの? 寝起きなんだから髪もボサボサになってるし、勘弁してよね」
「私振られたのか?」
突然、マイは目に涙を溜めるとボソリと言いながら私を見つめる。そしてだらりと力無く腕を垂らしている。こんな弱気なマイ見たことない。
マイは本気でユウキのことが好きらしい。でもユウキの気持ちがよく分からないから何か言って欲しいのかもしれない。
「振られてもないし、大体マイ、告白してもないよね?」
「まあね」
「いつもなら積極的に動いてるのに肝心な時になると自分のことはダメなんだね?」
「それ言われると傷付くんだけど」
「これだけ伝えとくね。ユウキはあなたのことが好きみたい。でも人助けもしたいんだって」
私は言葉を濁して伝えるしかなかった。どこまで話していいのか分からないからだ。
「そう。わかったわ」
ユウキがマイのこと思ってる気持ちがあるって知ったのが嬉しかったのか、マイは「ふうーっ」と言いながら、大きく伸びをした。表情の陰りが取れ、パッと少し明るくなったようなそして、照れくさそうに笑い始めた。
そうかと思えば少し考えてる素振りで真っ赤になるマイ。まさか嫉妬してないよね? 助けたい人ってキョウコのことだろうし。
マイは私のベッドに大の字に寝転ぶと。
「もう、恋愛とかそんなのいいわ。私らしくないよな。ユウキよりいい男なんて沢山いるだろ。世界は広いんだから。ツグミの次の素材集め手伝ってやるよ」
「どうしてそれを?」
「ツグミのことは何でもお見通しなんだよ。アキラだっけ? 早く石化をといてあげたいしな」
マイは自分に得があるわけじゃないのに、なんでいつも助けてくれるんだろう。それだけが不思議だ。大抵無料で何かしてくれるってことはそれ相応の報酬、もしくはその後なんかの狙いがあるとしか思えない。
友達だから安心と考えるのは浅はかな気もするし。もちろん友達だから小さなことは許せるのが当たり前と言う気もするけど。
エリクサーの素材集めもあと少し、後半になればなるほど手に入れるのが厳しい素材になっていく。
「次は龍の瞳なの。ここからはるか100キロもある龍極の崖地に生息する黒色のドラゴンからドロップするアイテムで、ドラゴンの肌は鋼でできていてその辺の刀では刃を突き刺すことすらできないって言われてる。
ピンクの髪のお姉さんの本によれば、軟体動物クラーゴンの粉を振りかけると少しやらかくなるみたい。そこにオリハルコンの剣が刺さればなんとかなるらしいよ」
マイの武器は皮のムチだし、ゆうきのはその辺の安物の鉄の剣。オリハルコンの剣なんてどこにあるのよ。
「オリハルコンの剣? 聞いことあるな。盗賊仲間によればこないだの勇者の剣がオリハルコンの剣らしいぞ。でもさすがにあの勇者から奪うのは難しいだろうし」
「もしかしたらオリハルコンって、採掘できるんじゃない? まさかこの世界に1本しかないなんてことありえないし」
「勇者の剣はどうやって手に入れたんだろう?」
マイは首を傾げて腕を組む。そんなこと知ってるわけないよね。
「噂だとどこかのダンジョンに潜って宝箱から取ってきたらしいぞ。どこかは分からない」
「また図書館いってみる? もしかしたらオリハルコンについて何かわかるかもしれないし」
私たちはアップル学園の図書館に向かうことにした。
そこである1冊の文献を見つけた。オリハルコンの剣は神の剣。地中深く眠るとされ、100階の地下ダンジョンのある古の洞窟内にあると記載されていた。
下のダンジョンに潜るほどモンスターが強くなるらしい。
私が潜って最下層にたどり着けるのかな? でもいけるところまで行くしかないよね。
私たちは装備を整えることにした。
防具屋に入り、店員に古の洞窟の話をするとうちの防具ではもたないと言われてしまう。国一番の防具屋の装備品でもダメならもうどうしようもない。
公園で途方に暮れるマイと私。
10階層までしかあの国1番の防具屋の装備でももたないらしい。
ピンクの髪のお姉さんどうやって潜ったのよ。
明日は月曜日。公園に行けばって、場所はここなんだけど。会えるかもしれない。そんなことを考えていたら。
公園の入口の街路樹の方からピンクの髪の女性が杖を付いて歩いてくるのが見えた。途端に私の頬は熱くなる。
「ツグミ! ひさしぶり。あなたと待ち合わせするのが習慣になってたまに来てたの。ここって、日向ぼっこにちょうどいいわね」
公園の桜の木は満開で風が吹き、綺麗なピンクの花びらが舞い落ちる。串に刺さった団子を頬張りながら、私たちの方に向かってくるお姉さん。
「オリハルコンの剣を作りたいんですけど、どうしたらいいのです?」
「オリハルコンなんて懐かしいじゃない。早速取りに行くの?」
「あの古の洞窟ってダンジョンに潜るには透明粉で行けるわよ!
あとは瞬足の粉かな。全てのモンスターをかわして最深部に潜るのよ。あとなんだったかしら、
昔だから、何か大事なことを忘れているような気がするわ」
俊足の粉はやばっ。私の嫌いな黒光りのゴキリンからドロップする粉だ。
ゴキリンは辛い思い出がある。
子供の頃かくれんぼで小さな洞窟内に隠れた時にゴキリンに誘拐されて食べられそうになったのだ。
今でも忘れられない。
ゴキリンが手に巨大なナイフとフォークを持ってガシャガシャとして、皿の上には私が手足を縛られた状態で身動き取れなかった。あんなのは二度とごめんだよ。
もしあの時駆けつけたアキラが松明でおいはらってなかったら今頃私はゴキリンの排泄物になっていたかもしれないのだ。
そう、ゴキリンの弱点は炎だ。
トラウマだけどやるしかないよね。気合いをいれたいけど、足がガクガクしてくる。実際あの背中の黒光りの羽や小刻みに動く羽音を聞いて正気でいられるのか分からない。
大丈夫だよ。もうあれから10年は経ってる。私は大丈夫。きっと大丈夫なはず。
「ツグミいくよ! アタシがムチでブッ倒してやるから安心しなさいよ」
「お姉さんありがとう。今から行ってくるね」
「頑張ってね! いつもツグのこと、応援してるから。もし困ったらこの玉使いなさい」
ピンクの髪のお姉さんは私のスカートのポケットに銃の玉を3玉押し込んだ。
ニコッとして、
「本当は私も行きたいんだけど。今日は花見をしないといけないから、満開だからね!」
片手に団子、もう片方はアルコールのあるチューハイを持っている。少し顔が赤く今日は無理そう。
「いつもありがとうございます。これってなんの玉なんです?」
「もしゴキリンに遭遇して倒せなかったらその玉を撃てばいいよ! マイちゃんに撃てば分かるから!」
「強化系の玉なんですね。早速行ってきますね」
私とマイはお姉さんに手を振り別れた。
私たちは一度準備するために家に向かうことにした。
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