バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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35 写真集の秘密②

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 よほど空腹だったのだろう。

 食べ始めると止まらず、あっという間に二人前はあった寿司桶は空になった。

 出してあった急須の中には熱いお茶まで入っており、至れり尽くせりだ。

 少し気分が落ち着いたところで、硝子戸を開け、居間に戻った。

 周囲を見回してみる。

 二人掛けのソファとソファの間に、さっきまで僕が這いつくばっていた低いテーブルがあり、正面にテレビ。

 テレビセットの右横には茶器の並んだ棚が、右側には三段組みの本箱がある。

 中に詰まっているのはハードカバーや文庫本など、雑多なサイズの本だ。

 おそらくこの家の主人の著作に違いない。

 だとすれば、みんなおぞましいエロ小説ということになる。

 それにしても、あの親子はどうしたのだろう。

 テレビでも見て、ここで待っていろということか。

 リモコンを探してもう一度周囲を見回した時だった。

 本箱の一番下の段に、ひと際大判の本が挟まっていることに、僕は気づいた。

 サイズからして、小説というより、写真集か何かのようだ。

 本はミルク色の背表紙で、見妙なタイトルが浮き彫りになっている。

 薄桃色の飾り文字は、『薔薇少年』と読めた。

 それを目にした途端、僕を襲ったのは、ぞわりと背筋の産毛の逆立つあの予感だった。

 背徳的なモノに近づいた時の、あの禁忌を犯す寸前のような、無視できない性衝動に似た感じ・・・。

 本箱に近寄り、かがんで本を抜き出した。

 薄いがずっしりと重いそれは、やはり豪華な装丁の写真集だ。
 
 表紙には、おびただしい薔薇の花びらに埋もれた全裸の少年の姿・・・。

 乳首と陰部だけを花弁で隠し、薔薇の花の敷き詰められた棺桶の中に仰臥して、人形みたいに目を開いている。

 その赤い目と白い肌。

 そして天使と見紛うばかりに美しい顏。

 僕は息を飲んだ。

 間違いない。

 これは、あの、比良坂夜見の写真集なのだ・・・。
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