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行方

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 ピンポーン—―



 ドアベルが鳴る



「届いたみたいだ受け取ってくる」



「うぅ……すんっ、……はい」



 数十分経っても白はすすり泣き続けている



 俺は注文したピザを受け取りに行く



「ありがとうございました」




 俺たちはピザをテブールの中心に置いて再び向かい合う形で席についた



「暗くなってきたし、作る元気もないだろうからさっき頼んでおいた」



「……」



「食べたくなったらでいい」



「……ありがとうございます」



「これくらい別に感謝されることでもない」



「そんなことはありません、こんな見た目の私にここまで優しくしてくれるのなんて……」



「見た目は関係ないだろ」



「ありますよ!髪が白くて、目が赤くて、それでっ、ずっと避けられて、いじめられて、親にも捨てられて……私は普通じゃないんですよ!」



 普通じゃない……か、




「それでもっ、彰がいたからっ、私は……」



「やっぱり、彰に何かあったのか?」



「今日……久しぶりにあいつが、きたんです」



「あいつ?」



「親です……邪魔だからって私と彰を捨てたのにっ、今更……息子が必要になったって言って今朝、彰を連れていきました……」




 俺が来る前にそんなことがあったのか……



 詳しくは知らないが親権を持つ白の親のその行動は俺が現場に居合わせていたとして止められたものでは無かったのだろう



 だが……



「彰を育ててきたのは白だろっ、今まで散々ないがしろにしてきたのに、都合のいい時だけ利用する為に連れていく?そんなこと絶対に――」



 いやっ、違うだろ俺!なに感情的になってんだ……



 今、一番つらいのは、一番理不尽を感じているのは、家族に家族を奪われた白だろ!




「すまん……熱くなった」



「先輩は優しいですね……人の為にそんなに一所懸命になれるなんて……やっぱり、先輩と私じゃ釣り合わないですね、先輩……私と別れ」



「別れないぞ、お前が俺を嫌いじゃないならな」



「そもそもっ、私は無理やり脅して恋人になったようなヤバい奴ですよ!」



 あっ、その自覚あったんだ……




「それでも俺は好きになった」



「すっ、きって……言葉だけじゃ信じられません」



 言葉じゃ分かってくれないなら



「俺はどうすればいいんだよ」



「私のこと……強く抱きしめてください」



 俺は白を強めに抱きしめる



 華奢な白の体は触れただけで壊れそうな儚さがあった




「こうか?」



「ぅ……もっと強く……して……」



 もっと!?今も結構力入れてるけど……もう少しだけ強めるか




「う、ぁ……っ……もっと、ですっ、……死んじゃうくらい強く……しっ、……て」



「……我慢できなくなったらいつでも言えよ」



 さらに抱きしめる力を強める――



「ぐ、ぅ……う、……っ……」



 これ以上は流石にまずいな




「……ぶはぁっ!……はあっ、はあっ、……はぁ」



「やり過ぎたか?」



「心配いりませんよ先輩からの愛、いっぱい受け取りました!」



 そんなセリフを言えるなら少しは心に余裕ができたみたいだな




「そうか、もう大丈夫みたいだな」



「先輩は……私から離れませんよね……」



「ああ、次何かあったら俺を呼べ必ず力になる」



「本当にありがとうございました、先輩が来てくれなかったら私、死んでました」



 この死んでましたが比喩表現じゃなくてガチなのが本当に心臓に悪いが、とにかく彰も無事ではあるだろうし一応白の精神もある程度は回復した




「そろそろ帰る、またな」



「はい、また」


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