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診察結果は甘くない
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水曜日の朝、病院から電話がきた。
「元気になったので、迎えに来てください」
よかった、よくなったんだと、ケージを抱えて病院へ向かった。受付を済ませて待合室にいると、とんでもないボリュームで叫ぶ猫の声がする。
受付の隣が診察室で、その奥が入院用のケージがあるのだが。えらいでかい声で鳴いている。猫、もしや……。
診察室に呼ばれると、入院ケージで檻につかまり後足で立って大声でなきわめいている、もふちゃん。
やはりもふちゃんだった。まだ300グラムほどしかないその体のどこから、そんな声が出るんだ。
まずは、お腹が緩いので整腸剤を飲むようにと粉薬を処方される。朝晩にミルクに混ぜて飲ませてください、と説明された。
それから、もふちゃんは離乳食にも興味があるようだから、ふやかしたフードとかちょっとずつ試してみるといいですよ、と。カリカリの試供品も頂いた(子猫用)。それから、やっぱりこの子は女の子でした、と先生。
※実は、保健所から引き取ったとき、もふちゃんだけ雌であとは雄だと思うと言われたのだ。最初の健康診断の時に先生は「みんな雄」と判断したが、もふちゃんが何度も診察に通ううちに雌と分かったらしい。
さて、ケージにもふちゃんを収めて車で出発。五分もたたないうちに、車内に独特の香りが漂った。
「……これは」
路肩に車を止めてケージのふたを開けてみるとそこには、大をしてあまつさえそれを後足で踏んでしまったもふちゃんが。「どうしてくれるの!?」と踏んでしまった後足を片方上げて変な格好でいた。
可愛そうなので、汚れた足をティッシュで拭き、とりあえず家まではそれで我慢してもらう。
家に帰って、しまちゃんと再会。やっぱり二匹でいるのがいいみたい。みうみさんへも退院の旨を伝えた。
しかし、日中元気だったもふちゃんは、夜に三度ぐったりとしてしまった。時間外に無茶をいって診察してもらい、そのまま入院となってしまった。
「この子は、生命力が弱いんじゃないかな。脳に先天的な障害があるかも知れませんよ」
言葉の重さにショックを受ける。夫に子猫がまた病院へ行ったことを話すと、
「ハズレだな」と言われる。
ハズレってなんだよ、ハズレって。でも、このまま病弱な子猫をみうみさんへ渡すのは無責任なことではないだろうか。しまちゃんとふたり、さびしい夜をまた迎えてしまった。
木曜日の朝、病院から電話が来た。
「二週間の入院」と。
みうみさんと電話で話す。入院のことと、もふちゃんに先天的な脳疾患があるかも知れないと伝えた。
みうみさんは、とても冷静だった。今年、亡くなった猫さんの看病を長くされていたからかも知れない。低血糖のこと、点滴のことなどを話した。驚くことに、点滴はご自宅でも猫さんにされていたということで、道具もあるから大丈夫とのことだった。
すごい、みうみさん。
それから「しまちゃんの里親さんは決まりましたか?」と尋ねられ、実ははっきりした返答がまだ来ていないことを話した。
「もし、よかったらしまちゃんも引き取りたい。きょうだいで引き取った方がさびしくないし。ちょっと待って、お父さんに聞いてみる」
と、電話が切れて十分するかしないうちに、電話が来た。
「お父さんからOKもらった!!」
早い、仕事が早い。わたしの答えはもちろん、ありがとうございます、だった。いつも一緒の二匹が、これから先もずっと一緒にいられたなら、これ以上の喜びはない。
しまちゃんの行き先、ついに決まる。
「それで、今度の土曜日、たびーさんちに行きたいです」
と、いきなりみうみさんの訪問がきまったのだった。
「元気になったので、迎えに来てください」
よかった、よくなったんだと、ケージを抱えて病院へ向かった。受付を済ませて待合室にいると、とんでもないボリュームで叫ぶ猫の声がする。
受付の隣が診察室で、その奥が入院用のケージがあるのだが。えらいでかい声で鳴いている。猫、もしや……。
診察室に呼ばれると、入院ケージで檻につかまり後足で立って大声でなきわめいている、もふちゃん。
やはりもふちゃんだった。まだ300グラムほどしかないその体のどこから、そんな声が出るんだ。
まずは、お腹が緩いので整腸剤を飲むようにと粉薬を処方される。朝晩にミルクに混ぜて飲ませてください、と説明された。
それから、もふちゃんは離乳食にも興味があるようだから、ふやかしたフードとかちょっとずつ試してみるといいですよ、と。カリカリの試供品も頂いた(子猫用)。それから、やっぱりこの子は女の子でした、と先生。
※実は、保健所から引き取ったとき、もふちゃんだけ雌であとは雄だと思うと言われたのだ。最初の健康診断の時に先生は「みんな雄」と判断したが、もふちゃんが何度も診察に通ううちに雌と分かったらしい。
さて、ケージにもふちゃんを収めて車で出発。五分もたたないうちに、車内に独特の香りが漂った。
「……これは」
路肩に車を止めてケージのふたを開けてみるとそこには、大をしてあまつさえそれを後足で踏んでしまったもふちゃんが。「どうしてくれるの!?」と踏んでしまった後足を片方上げて変な格好でいた。
可愛そうなので、汚れた足をティッシュで拭き、とりあえず家まではそれで我慢してもらう。
家に帰って、しまちゃんと再会。やっぱり二匹でいるのがいいみたい。みうみさんへも退院の旨を伝えた。
しかし、日中元気だったもふちゃんは、夜に三度ぐったりとしてしまった。時間外に無茶をいって診察してもらい、そのまま入院となってしまった。
「この子は、生命力が弱いんじゃないかな。脳に先天的な障害があるかも知れませんよ」
言葉の重さにショックを受ける。夫に子猫がまた病院へ行ったことを話すと、
「ハズレだな」と言われる。
ハズレってなんだよ、ハズレって。でも、このまま病弱な子猫をみうみさんへ渡すのは無責任なことではないだろうか。しまちゃんとふたり、さびしい夜をまた迎えてしまった。
木曜日の朝、病院から電話が来た。
「二週間の入院」と。
みうみさんと電話で話す。入院のことと、もふちゃんに先天的な脳疾患があるかも知れないと伝えた。
みうみさんは、とても冷静だった。今年、亡くなった猫さんの看病を長くされていたからかも知れない。低血糖のこと、点滴のことなどを話した。驚くことに、点滴はご自宅でも猫さんにされていたということで、道具もあるから大丈夫とのことだった。
すごい、みうみさん。
それから「しまちゃんの里親さんは決まりましたか?」と尋ねられ、実ははっきりした返答がまだ来ていないことを話した。
「もし、よかったらしまちゃんも引き取りたい。きょうだいで引き取った方がさびしくないし。ちょっと待って、お父さんに聞いてみる」
と、電話が切れて十分するかしないうちに、電話が来た。
「お父さんからOKもらった!!」
早い、仕事が早い。わたしの答えはもちろん、ありがとうございます、だった。いつも一緒の二匹が、これから先もずっと一緒にいられたなら、これ以上の喜びはない。
しまちゃんの行き先、ついに決まる。
「それで、今度の土曜日、たびーさんちに行きたいです」
と、いきなりみうみさんの訪問がきまったのだった。
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