異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

文字の大きさ
10 / 153
プロローグ

美月サイド-05-

「えっ……で、でも花蓮さん。今はその花蓮さんは服が……」



「そ、それは……そのそうですけれど……とにかくあの方としっかり話したいのですわ」



 花蓮は顔を少し紅潮させながらも、そう言う。

 花蓮の意思は固そうである。 

 

 美月はためらいながらも、遠くで後ろを向いている男に声をかける。



「花蓮さんが話したいことがあるそうです。そ、その……ま、前は向かないでくださいね!」

「え……あ、ああ! それはもちろん!」

 

 後ろ向きのまま歩いて、花蓮の前に来た男とそれを先導する美月。

 それは傍目から見ると大分奇妙な光景であった。



「このたびはわたくしたちを助けてくださって本当にありがとうございます」

 

 花蓮は両手で身体を隠さずに、深々と地面に頭を下げる。

 花蓮はさすが名家の令嬢なだけあり、その所作は美月が見ても惚れ惚れするほどに洗練されて優雅であった。

 

 ただ……今の花蓮が生まれたままの姿であることを除いて——



「あの……もしよろしければこちらを向いてください。いつまでも背を向けたままお話させるのは申し訳ありませんわ」



「えっ! か、花蓮さん! それは——」



「美月!」



「は、はい?」

 

 花蓮に突然、強い口調で言われて美月は思わず面食らってしまった。

 お淑やかな花蓮がここまで自分に対して声を荒げたことはほとんどなかった。

 

 それに……花蓮はどこか怒っているようにすら見えた。



「わたくしたちはこの方に命を救われたのですわ。この方は命の危険をかえりみずに、見ず知らずのわたくしたちを救ってくれたのですわ。そういう殿方に対して、人として最低限の礼儀というものがありますわ」

 

 花蓮の剣幕に圧倒されながら、美月は花蓮の言ったことを自身の頭の中で整理する。

 花蓮の言っていることは至極正論ではある。

 

 この男がいなければ、自分は間違いなく、あのモンスターに屠られていただろうし、それは花蓮だって同様だ。

 

 さらに、重体に陥っていた花蓮のことを魔法で——未だにその内容は不明だが——傷ひとつすら残さずに回復させてくれたのだ。

 

 まさに目の前の男は美月たちにとって命の恩人と言ってよい存在だ。

 

 そんな人間に対して、美月は確かに今の今までお礼の一つも述べていなかった。

 礼節を重んじるのは自分だって同じなのに、何故お礼の一言もまだ口に出せていないのか……。



 それには仕方がない事情があったのだと……美月は心の中で言い訳をする。

 あまりにもこの男の常識外の凄さに圧倒されて、美月の頭が大混乱状態であったこと。



 それに、この男があまりにもあっさりと何の苦もなく凄まじいことを実行して見せるものだから、まるで幻想を見ているようでいまいち現実感がなかったこと……



 だからついつい言いそびれてしまった。

 だが、それは美月の事情である。



 どんな事情があろうとも、花蓮が言うようにまずは人としてこの男に礼を尽くすべきだった。



 日々自省に努めていたつもりだったが、世間から『流麗の剣姫』などと言われて少し驕っていたのかもしれない。



 美月はしゅんとうなだれて、



「す、すいません……花蓮さん」

 

 と下を向く。



「美月。わかったのなら……いいわ。さあいつまでそこに立っているのです。わたしの隣に並んで、この方にお礼をするのですわ」

 

 美月は、膝をついて、花蓮の隣に座る。



「お待たせてしまって、申し訳ありませんでしたわ。さあ……どうぞこちらを向いてください」



「え……い、いや……し、しかし……」

 

 後姿のままなので、表情はわからないが、男が非常に戸惑っているのは声だけでも十分わかった。



「このようなはしたない姿をお見せするのは心苦しいのですが……。わたくしたちを救ってくださった方に顔も向けずにお礼をするなど……。どうか……こちらを向いてください」



「は、はあ……そ、そこまでおっしゃるのなら……」

 

 男はそう躊躇しながらも、ぎこちない動作で美月たちの方に向き直る。



「め、目はつぶっているので……あ、安心してください」

 

 男は、不自然なほどにギュッと目を閉じている。  



「フフ……わたくしなどにそこまで気を使って頂いて恐縮ですわ。あの……まずは自己紹介をさせて頂いてもよろしいでしょうか」



「え……は、はあ……」



「わたくしは冒険者パーティー『ダンジョンの支配者たち』の一員で、西条花蓮と申します。そして、隣にいるのが、同じくパーティーの一員である二条院美月です。その……差し支えなければわたくしたちを救ってくださったあなた様のお名前を聞いてもよろしいでしょうか」



「えっと……じ、自分は二見敬三という者です」



「敬三様……と申されるのですね……素敵なお名前ですわ……」



「え……」

 

 男が花蓮の言葉に呆然としている。

 隣にいる美月も花蓮の振る舞いにいささか戸惑っていた。

 

 花蓮の顔をチラリと伺うと、まるで熱に浮かされた少女のように頬を紅潮させて、その目は男……二見の方を見て、トロ~ンとしている。

 

 美月と男の空気を察したのか、花蓮はゴホンと咳払いをすると、



「あ、あの……敬三様。この度はわたくしたちを救ってくださって本当にありがとうございましたわ。このご恩はわたくしたち……いえ……わたくし花蓮決して忘れませんわ。生涯あなた様に忠誠を……いえ西条家総出で敬三様に——」

 

 花蓮の声のトーンは情熱的と言ってよいほどに激しくなり、その目も潤んでますます熱を帯びてきて——



「え、えっと! か、花蓮さん!? ひ、ひとまずわたしもお礼を——」

 

 このまま放っておくと何かとんでもないことになりそうだと無意識に感じ取った美月は慌てて話しを変える。
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think
ファンタジー
ざっくり紹介 バトル! いちゃいちゃラブコメ! ちょっとむふふ! 真面目に紹介 召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。 そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。 ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。 皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは リビングメイルだった。 薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが マモリタイ、コンドコソ、オネガイ という言葉が聞こえた。 カイは迷ったが契約をする。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。