異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

-01- オッサン、S級冒険者の美女から自宅訪問を受ける

 ふああ……と大きなあくびをして起き上がる。

 見慣れた六条間の畳が視界に飛び込んでくる。



 窓から差し込む眩しい日差しに目を細めながら、時計を見る。

 いつの間にか昼を回っていた。



 随分と寝てしまったらしい。

 それにしても……このオンボロアパートで一人起きるとどうにもむなしくなる。

 

 まあ……激安家賃なので文句を言ったらバチがあたるが……。

 それにしても、昨日は本当に色々なことがあったな……。

 

 あのS級冒険者の超有名配信者の「ダンジョンの支配者たち」たちと出会って、それで何故か彼女たちがピンチになっていてそれを助けて——

 

 脳裏に美月や花蓮の華麗な姿が浮かぶ。 

 ふと視線を戻すと、そこには現実——色褪せた畳と散らかった室内——が広がっている。

 

 あの人たちは俺とは住む世界が違いすぎるよなあ……。

 もう会うこともないだろうな……。

 

 別れる時に「またぜひ会いましょう」と言ってくれたが、さすがにそんな社交辞令を真に受けるほど俺はガキではない。

 

 齢40を超えたオッサンである。

 25年間異世界にいたが、これでも最低限の常識はあるつもりだ。

 

 さてと……それじゃあまあ……俺の現実を確認するか。

 ちょっとは再生数伸びていればいいが……まあ甘くないだろうな……。

 

 俺はスマホで自分のチャンネルの管理画面を開く。

 

 目に飛び込んでくる再生数……1008回再生!

 

 俺は思わず部屋の中で一人叫び、ガッツポーツを上げる。



「よし! やったぞ! まさか1000回を超えるとは! 奇跡だ!」

 

 最高でも100回もいかなかったに、コツコツと動画を上げていたかいがあったのか……。

 

 やはり地道な努力が何事も大事だな……。

 

 どれどれ……それにしても何がバスった要因なんだ?

 

 俺はそう思って、コメントを見ようと目線を動かす。

 

 は?

 

 そう俺は思わず間抜けな声を出してしまう。

 

 1008『万』再生……。

 

 そう確かに表示されているのだ……。

 

 視界に飛び込んできたモノを解釈するのに、俺は30秒いや1分ちかくかかった。

 

 そして出した結論。

 いや……ちょっと待て……これバグだな。

 

 俺はアプリを閉じて、再び開く。

 

 1010万再生。

 

 やっぱり——って伸びている!?

 

 俺は再びアプリを開く。

 数字に間違いはない。

 

 そして、俺はスマホを再起動して、アプリを再度立ち上げるが、その再生数の表示は決して変わることはない。

 

 人はどうにも予想を超えた出来事が起こると、考えることを放棄する。

 

 機械でいうならフリーズ状態だ。

 俺はアプリを閉じて、スマホをゆっくりと地面に置く。

 

 腹……減ったなあ……。

 

 あまりにも意味不明な出来事を考えるのが、おっくうになり、俺は今見たものを意識の外へと追いやり、そんなことを思っていた。

 

 と、ピンポーンとチャイムがなる。

 また、新聞……いや宗教の勧誘か……。

 

 ボロアパートに住んでいると、何故か訳の分からない宗教の勧誘が頻繁にある。

 俺はそんなに救いを求めるほど、人生諦めている訳じゃないんだがな……。

 

 まあ40代でこんなボロアパートに一人住んで、定職にもつかずに昼日中家にいたら、そう思われても仕方がないか……。

 

 俺は、ため息をついて、



「あのねえ……いい加減迷惑なんだけど——」

 

 と、うんざりした口調で扉を開ける。



 そこにはいつものように妙な服装をしたオバさん——ではなく、鮮やかな和服をまとった美しい女性がいた——。



「え?」



 『癒やしの織姫』……西条花蓮が扉の前に立っていた。

 俺はそこで今日二度目の脳のフリーズを起こした。



「……も、申し訳ありません……敬三様。突然部屋に押しかけるなんて……こんなはしたない真似をしてしまって……ご迷惑ですよね」

 

 花蓮さんは顔を真っ赤にして、泣きそうな顔をしている。

 俺はこの事態に脳が反応できるまで数十秒を要してしまい、ただ馬鹿みたいに間抜けな顔をしてほうけていた。



「……あ、あの……ご迷惑なようなので、また日を改めさせて頂きますわ……」



 と、花蓮さんがそう言って背を向けようとしたところで、ようやく俺の脳は現実に追いつき、



「だ、大丈夫! です!」



「……よかった……ですわ。敬三様……その……中に入ってもよろしいですか?」



「え? この中に……し、しかし……」



 こんな汚いアパートの部屋に女性……いや花蓮さんのような人を入れる訳には……。

 

 と俺はためらうが、花蓮さんは「失礼しますわ」と、彼女らしからぬやや強引な感じで俺の横をスルリと通り抜けて、部屋の中に上がり込む。



「ち、ちょ——」

 

 俺が止めようとした時には花蓮さんは完全に部屋の中にいて、何かを調べるようにあたりを見回している。

 

 来客が皆無の俺の部屋は、まったく整理整頓が出来ていない。

 

 投げっぱなしの衣服がただでさえ狭い畳を埋めていて、食べかけの菓子パンやら飲みかけのペットボトルが置いてある始末だ。

 

 そんな有様の部屋をマジマジと花蓮さんに見られると、生きた心地がしない。

 

 が……花蓮さんは、やや経つと何故かほっとした顔を浮かべて、



「……女性の影はなさそうですわね……」

 

 と、聞こえないほどの声でボソリとつぶやく。



「か、花蓮さん……あのう……」

「は! も、申し訳ありません! ついつい考え事を……」

 

 と、今度は花蓮さんは慌てた素振りを見せる。

 俺は、その一連の振る舞いを不思議に思いながらも、とりあえずうらびれた座布団を慌てて畳に起き、座る場所を確保する。

 

 正直こんな汚いところに座るのは嫌だろうなと思うところもあったが、ずっと立たせたままにするのも流石に申し訳ない。

 

 花蓮さんは「ありがとうございますわ」と言い、幸い嫌な顔を見せずに、足を崩して畳に座る。

 

 たったそれだけの動作だったのだが、花蓮さんの立ち振る舞いがあまりにも見事であり、俺はその流れるような所作に思わず見とれてしまった。

 

 これが育ちの良さ……というものなのだろうか。
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