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第一章
-04- オッサン、最高級ホテルをざわつかせる
「そ、それで……花蓮様。今日はどのようなご用向でございますか? 何か重要な人物との会食があるというお話でしたが……」
「ええ。今日はわたくしの命の恩人である敬三様に最高級の食事を提供するため、このホテルを使わさせて頂きます」
「か、花蓮様の命の恩人……。か、かしこまりました。我がホテルはその方に全身全霊を持って、最高の食事とおもてなしを提供させて頂きます!」
「ええ。期待していますわ」
「は、ははあ! 花蓮様にご期待頂き、恐縮でございます! そ、それで……その方はどちらにいらっしゃるのでしょうか? 後から来られるのでしょうか?」
花蓮さんは一瞬沈黙した後に、支配人に冷ややかな視線を送った後で、目線を俺の方に向ける。
「……すでにこちらにおります。この方が敬三様ですわ」
支配人は俺の方を見て、こいつが!と、驚きの表情を浮かべた後、
「こ、この方が……そ、それは……た、大変失礼いたしました!」
と、慌ててお辞儀をする。
俺は、支配人のその様子に大変申し訳ない気持ちになってしまった。
自分の格好をあらためて見ると、つい先日大特価で勝った安物のチノパンに、ヨレヨレのTシャツ姿なのである。
こんなオッサンの俺を見て、「重要人物」と思う方が無理がある。
TPOをわきまえていない俺の方に非があるのは明らかである。
支配人は、終始平身低頭のままで、彼が先導する形で、鈴羽さんと花蓮さん、俺をホテルの中へと案内する。
ホテル内のフロントとその近くのラウンジは客で賑わっていた。
俺はチラリとその客たちの姿を見る。
やはりというか彼ら彼女たちは俺とは似ても似つかわしくない雰囲気を全身から醸し出していた。
彼らがまとう雰囲気は……まさに富裕層といった感じである。
かたや俺は無職……いや底辺配信者の薄汚れた格好をしたオッサンである。
明らかな場違い感を俺は抱いていたし、彼らも俺と同じように感じたのだろう。
なんだこいつ?という視線で半ば軽蔑するように俺のことを見る。
もっとも、俺は先程の支配人と同じようにそりゃそうだよな程度にしか思わなかった。
むしろ場を乱して申し訳ないとすら思っていた。
とはいえ、彼らが俺を見ていたのは一瞬のことで、すぐにその視線は花蓮さんの方へと向けられる。
支配人の花蓮さんに対する過剰な振る舞いのせいか、はたまた俺が悪い意味で目を引いてしまったためなのか、何人かが花蓮さんに気づいたようであった。
「あの人って……まさかあの西条家の!?」
「花蓮様……じゃないか?」
「え? で、でも……花蓮様ってダンジョンの最下層にいるはずでは……」
「昨日の動画見ていないのか? 花蓮様はもう地上に帰還しているって話しだぞ」
「……って隣のあのオッサンの横顔……どこかで、いやよくある顔過ぎてイマイチ思い出せないな……」
あたりが妙にざわつき始める。
俺は、こういう人たちもダンジョンの配信動画を見るものなのかと、妙なところに感心してなんともなしにその様子を見ていた。
とはいえ、騒ぎは徐々に大きくなりはじめており、支配人はあわてて俺等をエレベーターまで案内する。
「も、申し訳ありません。ひ、人目を引いてしまいまして。最上階に個室をご用意しておりますので、そちらに——」
支配人はそう言って、エレベーターに乗り込み、エスコートしようとすると、
「鈴羽もおりますし、ここまででけっこうですわ」
と、花蓮さんがやや冷たい口調で言う。
支配人も花蓮さんのそうした態度を察したのか、さらに過剰にへりくだり、
「か、かしこまりました!」
と、そそくさと退散する。
エレベーターが閉まり、俺らだけになると、
「ふう……申し訳ありませんでしたわ。敬三様。あの者もここにいる人達も、あのような失礼な態度を取ってしまって……」
花蓮さんが俺の方を見て、頭を下げる。
「え……いや全然そんなことは——」
と、俺が慌ててそう言おうとすると、
「それにしてもこのホテルの質も残念ながら大分落ちてしまったようですわね。鈴羽。見た目だけで人を判断するなんて——」
と、花蓮さんが、ため息まじりに言う。
「……そう……ですね。申し訳ありません」
「いえ……あなたのせいではありませんわ。時間の制約もあったのですし」
エレベーターの中は、どうにも居心地の悪さだけが残ってしまった。
俺は心の中で大変な後悔と申し訳なさをあの支配人と鈴羽さんに感じていた。
なにせこんな格好でノコノコとこんな超高級ホテルにやって来た俺に全面的に非があるだけなのだ。
まあ……俺はせいぜいそこらの店に行くとしか思っていなかったのだが……。
まさかここまでの大事になるとは夢にも思わなかった。
とはいえ、俺のせいであの支配人や鈴羽さんの今後に禍根を残しては申し訳なさすぎる。
後で花蓮さんにもあらためてそう言おう……と、俺は固い決意をしていた。
「ええ。今日はわたくしの命の恩人である敬三様に最高級の食事を提供するため、このホテルを使わさせて頂きます」
「か、花蓮様の命の恩人……。か、かしこまりました。我がホテルはその方に全身全霊を持って、最高の食事とおもてなしを提供させて頂きます!」
「ええ。期待していますわ」
「は、ははあ! 花蓮様にご期待頂き、恐縮でございます! そ、それで……その方はどちらにいらっしゃるのでしょうか? 後から来られるのでしょうか?」
花蓮さんは一瞬沈黙した後に、支配人に冷ややかな視線を送った後で、目線を俺の方に向ける。
「……すでにこちらにおります。この方が敬三様ですわ」
支配人は俺の方を見て、こいつが!と、驚きの表情を浮かべた後、
「こ、この方が……そ、それは……た、大変失礼いたしました!」
と、慌ててお辞儀をする。
俺は、支配人のその様子に大変申し訳ない気持ちになってしまった。
自分の格好をあらためて見ると、つい先日大特価で勝った安物のチノパンに、ヨレヨレのTシャツ姿なのである。
こんなオッサンの俺を見て、「重要人物」と思う方が無理がある。
TPOをわきまえていない俺の方に非があるのは明らかである。
支配人は、終始平身低頭のままで、彼が先導する形で、鈴羽さんと花蓮さん、俺をホテルの中へと案内する。
ホテル内のフロントとその近くのラウンジは客で賑わっていた。
俺はチラリとその客たちの姿を見る。
やはりというか彼ら彼女たちは俺とは似ても似つかわしくない雰囲気を全身から醸し出していた。
彼らがまとう雰囲気は……まさに富裕層といった感じである。
かたや俺は無職……いや底辺配信者の薄汚れた格好をしたオッサンである。
明らかな場違い感を俺は抱いていたし、彼らも俺と同じように感じたのだろう。
なんだこいつ?という視線で半ば軽蔑するように俺のことを見る。
もっとも、俺は先程の支配人と同じようにそりゃそうだよな程度にしか思わなかった。
むしろ場を乱して申し訳ないとすら思っていた。
とはいえ、彼らが俺を見ていたのは一瞬のことで、すぐにその視線は花蓮さんの方へと向けられる。
支配人の花蓮さんに対する過剰な振る舞いのせいか、はたまた俺が悪い意味で目を引いてしまったためなのか、何人かが花蓮さんに気づいたようであった。
「あの人って……まさかあの西条家の!?」
「花蓮様……じゃないか?」
「え? で、でも……花蓮様ってダンジョンの最下層にいるはずでは……」
「昨日の動画見ていないのか? 花蓮様はもう地上に帰還しているって話しだぞ」
「……って隣のあのオッサンの横顔……どこかで、いやよくある顔過ぎてイマイチ思い出せないな……」
あたりが妙にざわつき始める。
俺は、こういう人たちもダンジョンの配信動画を見るものなのかと、妙なところに感心してなんともなしにその様子を見ていた。
とはいえ、騒ぎは徐々に大きくなりはじめており、支配人はあわてて俺等をエレベーターまで案内する。
「も、申し訳ありません。ひ、人目を引いてしまいまして。最上階に個室をご用意しておりますので、そちらに——」
支配人はそう言って、エレベーターに乗り込み、エスコートしようとすると、
「鈴羽もおりますし、ここまででけっこうですわ」
と、花蓮さんがやや冷たい口調で言う。
支配人も花蓮さんのそうした態度を察したのか、さらに過剰にへりくだり、
「か、かしこまりました!」
と、そそくさと退散する。
エレベーターが閉まり、俺らだけになると、
「ふう……申し訳ありませんでしたわ。敬三様。あの者もここにいる人達も、あのような失礼な態度を取ってしまって……」
花蓮さんが俺の方を見て、頭を下げる。
「え……いや全然そんなことは——」
と、俺が慌ててそう言おうとすると、
「それにしてもこのホテルの質も残念ながら大分落ちてしまったようですわね。鈴羽。見た目だけで人を判断するなんて——」
と、花蓮さんが、ため息まじりに言う。
「……そう……ですね。申し訳ありません」
「いえ……あなたのせいではありませんわ。時間の制約もあったのですし」
エレベーターの中は、どうにも居心地の悪さだけが残ってしまった。
俺は心の中で大変な後悔と申し訳なさをあの支配人と鈴羽さんに感じていた。
なにせこんな格好でノコノコとこんな超高級ホテルにやって来た俺に全面的に非があるだけなのだ。
まあ……俺はせいぜいそこらの店に行くとしか思っていなかったのだが……。
まさかここまでの大事になるとは夢にも思わなかった。
とはいえ、俺のせいであの支配人や鈴羽さんの今後に禍根を残しては申し訳なさすぎる。
後で花蓮さんにもあらためてそう言おう……と、俺は固い決意をしていた。
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