21 / 153
第一章
-05- オッサン、S級冒険者の美女から口説かれる
異世界でも、こういうことは多々あった。
特に英雄と呼ばれるようになってしまった後は、周りが妙な気を俺につかい、無関係の人間に迷惑をかけるということがよく起こった。
彼らからすれば英雄である俺に礼をしたいという純粋な思いからの行動なだけに余計に文句を言いづらい。
だが、巻き込まれた人間たちにとっては良い迷惑である。
結局のところこうした問題の原因は、俺の空気を読む八方美人的な態度にあるのだと気づき、それ以降は、何でも言葉に出してはっきり言うようになった。
おかげでそうした問題は異世界ではほとんど起きなくなった。
とはいえそれは英雄ともてはやされていた以降の話であるし、異世界での話である。
今の俺は単なるしがない無職……いやいや無職ではない……底辺配信者のオッサンである。
花蓮さんは俺のことを妙に感謝してくれているが、俺がやったことはそもそもまったく大したことではない。
運悪く酷く体調を崩していて、低ランクのダンジョンで危機に陥った花蓮さんたちを手助けしただけだ。
冒険者であるならば、同業者を助けるのは当然のことであるし、それはいちいち感謝されることではない。
自分が危機に陥ることもあるし、そうした際に今度は自分が同業者に助けてもらうのだから、いわばお互い様な関係である。
むろん人として最低限の礼はするが、「助かった。今度酒場で一杯おごるよ」といった程度のものである。
……もしかしたら花蓮さんにとってはコレが「最低限の礼」なのかもしれないな……。
そんな風に頭の中であれこれ考えていると、エレベータはいつのまにか最上階についていた。
鈴羽さんが先導し、俺らは通路を歩いていき、部屋に通される。
部屋の中は100平米ほどある広い空間であった。
やけに凝った調度品や絵画が壁際に置かれていて、中央に丸い大きな食卓が置かれている。
部屋の奥は全面窓になっていて、都内の景色を一望できるつくりになっていた。
俺は、部屋の豪奢なつくりと景色に息を呑む。
「どうぞ……席におすわりください」
鈴羽さんが椅子を引いてくれているので、俺はそのまま遠慮しながらも席にすわる。
「それでは……わたしは料理の準備をシェフに依頼してきますので」
そう言うと鈴羽さんは部屋を後にする。
と、その際、俺は背中から鈴羽さんの目線を嫌というほどに感じていた。
それは先程の冷たい視線よりさらに強烈なものであった。
どうやら、鈴羽さんは俺と花蓮さんを二人っきりにしたくないらしい……。
実のところ俺自身もあまり花蓮さんと二人だけで残されるのは不安だった。
花蓮さんと何を話してよいかわからないし、そもそも女性と二人っきりになるなんて異世界でもこの世界でもほとんど経験がない。
異世界では最後は英雄ともてはやされたけれど、ずっと数人のパーティーだけで冒険という名の放浪生活だったし、女性とは縁遠かった。
もしも、そういう女性がいたら、俺も異世界に残っていたかもなあ……。
まあ……パーティーメンバーは女性も多くて、仲も良かったが……。
でも彼女たちは、友達……というか仲間、同士だし、そもそも人じゃなくてエルフだったり、獣人だったしなあ……。
彼女たちは別れる時、大分悲しんで、俺なんかのために泣いてくれたけど……今ごろどうしているのだろうか……元気にやっていてくれればよいが……。
と、俺は多分かなりほうけた表情をしていたのだろう。
花蓮さんが不思議そうな顔をして、
「……敬三様。どうされましたか?」
「え? あ、ああ……いえ、この場所があまりにもその豪華で……景色も綺麗ですし」
「フフ。喜んでもらえてよかったですわ。それに……やっと静かなところで、二人っきりにもなれましたし……」
「え……は、はあ……」
花蓮さんはそう言うと、何故か意を決したように深呼吸をする。
そして、なんだか恥ずかしそうに顔を赤らめながら、
「そのう……敬三様。まだ会って間もない殿方にこんなプライベートなことを聞くのは非常に失礼だと思うのですけれど……」
と、花蓮さんはそこで顔をうつむかせて、やや間を開ける。
俺は花蓮さんの言いにくそうな様子を見て、脳裏にふと嫌な予感がした。
もしかして……俺今かなり臭っているのか……。
ダンジョンから帰って風呂に入ったし、着ている服も安物とはいえ洗濯はしている。
だが……俺は40代のオッサンだ。
加齢臭だけは……どうにもならない。
鈴羽さんが終始冷ややかだったのもこれで説明がつく。
俺はそう結論づけて絶望のあまり顔を青ざめさせていると
「……け、敬三様は……そ、その……今独身であらせられるのでしょうか……」
と、花蓮さんはまったく予想外の言葉をかけてくる。
「え……そ、それは………はいそうですが……」
「……そ、そうですか……。で、では……敬三様。今お付き合いされておられる女性はいらっしゃるのでしょうか?」
「い、いや……全くいませんが……」
「ほ、本当ですか?」
「ええ……は、はい」
俺は、花蓮さんの不可思議な質問に対して、ただ狐につつまれたような気持ちであった。
とはいえ、加齢臭はどうやらしていないらしいから……まあ……よかったか……。
花蓮さんは何故か顔を思いっきりほころばせて嬉しそうにしている。
特に英雄と呼ばれるようになってしまった後は、周りが妙な気を俺につかい、無関係の人間に迷惑をかけるということがよく起こった。
彼らからすれば英雄である俺に礼をしたいという純粋な思いからの行動なだけに余計に文句を言いづらい。
だが、巻き込まれた人間たちにとっては良い迷惑である。
結局のところこうした問題の原因は、俺の空気を読む八方美人的な態度にあるのだと気づき、それ以降は、何でも言葉に出してはっきり言うようになった。
おかげでそうした問題は異世界ではほとんど起きなくなった。
とはいえそれは英雄ともてはやされていた以降の話であるし、異世界での話である。
今の俺は単なるしがない無職……いやいや無職ではない……底辺配信者のオッサンである。
花蓮さんは俺のことを妙に感謝してくれているが、俺がやったことはそもそもまったく大したことではない。
運悪く酷く体調を崩していて、低ランクのダンジョンで危機に陥った花蓮さんたちを手助けしただけだ。
冒険者であるならば、同業者を助けるのは当然のことであるし、それはいちいち感謝されることではない。
自分が危機に陥ることもあるし、そうした際に今度は自分が同業者に助けてもらうのだから、いわばお互い様な関係である。
むろん人として最低限の礼はするが、「助かった。今度酒場で一杯おごるよ」といった程度のものである。
……もしかしたら花蓮さんにとってはコレが「最低限の礼」なのかもしれないな……。
そんな風に頭の中であれこれ考えていると、エレベータはいつのまにか最上階についていた。
鈴羽さんが先導し、俺らは通路を歩いていき、部屋に通される。
部屋の中は100平米ほどある広い空間であった。
やけに凝った調度品や絵画が壁際に置かれていて、中央に丸い大きな食卓が置かれている。
部屋の奥は全面窓になっていて、都内の景色を一望できるつくりになっていた。
俺は、部屋の豪奢なつくりと景色に息を呑む。
「どうぞ……席におすわりください」
鈴羽さんが椅子を引いてくれているので、俺はそのまま遠慮しながらも席にすわる。
「それでは……わたしは料理の準備をシェフに依頼してきますので」
そう言うと鈴羽さんは部屋を後にする。
と、その際、俺は背中から鈴羽さんの目線を嫌というほどに感じていた。
それは先程の冷たい視線よりさらに強烈なものであった。
どうやら、鈴羽さんは俺と花蓮さんを二人っきりにしたくないらしい……。
実のところ俺自身もあまり花蓮さんと二人だけで残されるのは不安だった。
花蓮さんと何を話してよいかわからないし、そもそも女性と二人っきりになるなんて異世界でもこの世界でもほとんど経験がない。
異世界では最後は英雄ともてはやされたけれど、ずっと数人のパーティーだけで冒険という名の放浪生活だったし、女性とは縁遠かった。
もしも、そういう女性がいたら、俺も異世界に残っていたかもなあ……。
まあ……パーティーメンバーは女性も多くて、仲も良かったが……。
でも彼女たちは、友達……というか仲間、同士だし、そもそも人じゃなくてエルフだったり、獣人だったしなあ……。
彼女たちは別れる時、大分悲しんで、俺なんかのために泣いてくれたけど……今ごろどうしているのだろうか……元気にやっていてくれればよいが……。
と、俺は多分かなりほうけた表情をしていたのだろう。
花蓮さんが不思議そうな顔をして、
「……敬三様。どうされましたか?」
「え? あ、ああ……いえ、この場所があまりにもその豪華で……景色も綺麗ですし」
「フフ。喜んでもらえてよかったですわ。それに……やっと静かなところで、二人っきりにもなれましたし……」
「え……は、はあ……」
花蓮さんはそう言うと、何故か意を決したように深呼吸をする。
そして、なんだか恥ずかしそうに顔を赤らめながら、
「そのう……敬三様。まだ会って間もない殿方にこんなプライベートなことを聞くのは非常に失礼だと思うのですけれど……」
と、花蓮さんはそこで顔をうつむかせて、やや間を開ける。
俺は花蓮さんの言いにくそうな様子を見て、脳裏にふと嫌な予感がした。
もしかして……俺今かなり臭っているのか……。
ダンジョンから帰って風呂に入ったし、着ている服も安物とはいえ洗濯はしている。
だが……俺は40代のオッサンだ。
加齢臭だけは……どうにもならない。
鈴羽さんが終始冷ややかだったのもこれで説明がつく。
俺はそう結論づけて絶望のあまり顔を青ざめさせていると
「……け、敬三様は……そ、その……今独身であらせられるのでしょうか……」
と、花蓮さんはまったく予想外の言葉をかけてくる。
「え……そ、それは………はいそうですが……」
「……そ、そうですか……。で、では……敬三様。今お付き合いされておられる女性はいらっしゃるのでしょうか?」
「い、いや……全くいませんが……」
「ほ、本当ですか?」
「ええ……は、はい」
俺は、花蓮さんの不可思議な質問に対して、ただ狐につつまれたような気持ちであった。
とはいえ、加齢臭はどうやらしていないらしいから……まあ……よかったか……。
花蓮さんは何故か顔を思いっきりほころばせて嬉しそうにしている。
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。