異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

鈴羽サイド-08-

 二見の力が何であれ正攻法の闘いでは歯が立たない。

 

 それならば……外法に頼る以外勝機を見出す手はない。

 

 鈴羽は、二見をじっと見据えて、悲壮な面持ちで言う。



「あなたの力がなんであれ……わたしは花蓮様のためにも引くわけにはいかないのです!」

 

 ついで、鈴羽はアイテムボックスを発動し、あるマジックアイテムを取り出す。



 鈴羽が異空間から取り出したのは、一見すればどこにでもあるブレスレットである。

 

 鈴羽は、そのブレスレットを見つめて、一瞬間をおいた後で、覚悟を決めたかのように自身の腕に装着する。



「う……く……」

 

 途端に鈴羽の表情は一変し、何かに耐えるような苦悶の表情を浮かべる。

 

 鈴羽が身につけたブレスレットはA級マジックアイテムの一つとされている『炎龍のブレスレット』である。

 

 その効果は、『攻撃に炎系統の魔法を付与する』というものである。

 

 スキルを使える者は稀——レア(R)であり、さらにスキル保持者の内で、魔法を使えるものはさらに稀——スーパーレア(SR)——であり、ついで有効な攻撃系統の魔法の使い手となると殊更に稀——ダブルスーパーレア(SSR)——である。

 

 そんなSSRの能力を身につけるだけで使えるブレスレット……。



 それが貴重なのは言うまでもない。



 が……『炎龍のブレスレット』はS級ではなくA級マジックアイテムとして分類されている。

 

 何故か……。



 その理由は、いま鈴羽が苦しんでいる点にある。



 『炎龍のブレスレット』は装着時に、装備者に対して、常時、炎系統の魔法ダメージを与え続けるという致命的な欠陥がある。

 

 そのため、実戦には到底使用できないとされ、その絶大な効果にも関わらずA級扱いとされているのだ。

 

 が……装備者が自身の肉体が焼け焦がれてもかまわないというある種の異常な決意を持っていて、かつごく短時間であれば『炎龍のブレスレット』を使用し、本来の絶大な効果を発揮することができる。

 

 そんな通常ではありえない状況……。



 鈴羽が、今していることがまさにそれである。



 ブレスレットを身に着けた途端に、鈴羽の体内は沸騰したかのように……いや現に沸騰しているのだろう……熱くなり息をするのすら辛くなっていた。

 

 いくら鈴羽が強靭な意思の力で、ブレスレットが放つ炎の魔法に抗おうともおのずと限界がある。

 

 もって……数分が限度ね……。

 

 既に意思をしっかり持っていなければその場で倒れ込みそうな常時焼かれる激痛に耐えながら、鈴羽は一点を見据える。



「か、覚悟……しなさい……」

 

 そう震える声でなんとか言葉を絞り出し、鈴羽は最後の一撃に備える。

 

 一拍間を置いて、鈴羽は、意識を極限までに集中させる。

 

 ついで、鈴羽は持てる力の全てを込めて、足を蹴り出す。

 

 異常な熱を帯びた鈴羽の肉体の影響のせいで、靴は溶けだし変形していた。



 が……その状態でも鈴羽はなんとか脚力を維持しつつ、『未来の幻影』を発動。



 二見の姿をその目に捕らえる。



 激しい痛みで集中力を維持するのが非常に困難であったが、鈴羽はそれを意思の力で強引にねじ伏せて、なんとか二見の数秒後の軌道を予測する。



 たとえ、必中しなくとも『炎龍のブレスレット』の効果で、今の鈴羽の攻撃には全て炎魔法のバフがある。



 いくら二見が素早く逃げようとも……どんな異常な防御力があろうとも……この広範囲の魔法攻撃は防げないはずだ。



 ましてや二見は鈴羽が攻撃魔法を使うなどとはまったく予期できていないはずだ。



 視界は歪み、意識は遠のいていく中で、鈴羽は自身の全てを込めて、二見に拳を突き立てる。



 瞬間、爆炎があたりを包む。



 閉じられた室内で、炎魔法を使用したため、燃焼による熱が一点に集中したのか、室内の温度は急速に上昇した。



 鈴羽は既に、自身の肉体が放つ熱と外から受ける熱との区別もつかず、ただ朦朧とした意識の中で、ゆらぐ炎を見る。



 耳にけたたましくなる火災報知器の音。



 ついで、天井に設置されているスプリンクラーから勢いよく水が放出される。



 それでも炎はおさまらず鈴羽の体を包み込む。



 花蓮……お姉様……お許しください。

 ですが……これでお姉様の洗脳は解けたはず……。



 二見を排除できた……が自身ももはや無事ではすまされないだろう……。



 鈴羽は、薄れゆく意識の中で、ただ花蓮のことだけを思っていた。



 鈴羽が目を覚ました時、彼女の視界は天井に向けられていた。



 顔を濡らす水滴……。



 どうやら、スプリンクラーから落ちる水滴で彼女は意識を取り戻したようだった。



 う……ぐあ……。



 鈴羽は、同時に全身を蝕む激しい痛みに悲鳴を上げる。



 『炎龍のブレスレット』の効果は今も鈴羽の肉体を焦がし続けている。



 目的を果たしたのだから、ブレスレットを今すぐにでも外したかった。



 が……異常な熱によって、ブレスレット自体変形してしまったのか、はたまた鈴羽にもはや力がほとんど残っていないためか、ブレスレットを外すことはできなかった。



 ふ……楽には逝かせてくれないようね……。



 鈴羽は、心の中で、そう毒づく。



 今ごろ花蓮様はどうされているのだろか……。



 術者である二見を排除したのだから、きっと花蓮様も正気を取り戻して——



 鈴羽が、目線を動かした時、信じられない光景が目に飛び込んできた。



 戸惑いの表情を浮かべる一人の男……二見敬三……が、立っていたのだ。



 それも一見して怪我一つもしている様子はない……。



 ば、馬鹿な……あ、ありえない……あの攻撃を受けて……。
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