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第一章
鈴羽サイド-12-
「麻耶さんを……確かに先ほどの電話でも麻耶さんは、しきりに敬三様のことを知りたがっていましたし……」
実は鈴羽は、既に麻耶と連絡を取っていて、先日の動画については、何らかの疑義があることを彼女に伝えていた。
その際、麻耶の方も、鈴羽と同じように娘——美月——の証言にもかかわらず、動画の内容を疑問視しており、可能な限り早めに二見を聴取したい意向を話していた。
鈴羽は、麻耶の二見への深い懸念を感じ取り、麻耶が花蓮に連絡を取るよう促し、その間に二見を排除しようとしたのだが……。
だが……それは鈴羽が目覚める前までの話しである。
今の鈴羽は二見に対する懸念などまったく綺麗さっぱり消え失せている。
麻耶を屋敷に招くのも、二見のためであり、麻耶がもしも二見を害する行動を取るならば、たとえ相手が協会の会長であろうとも全力でそれを排する覚悟であった。
「わかりましたわ。鈴羽。確かに敬三様ほどの方が、麻耶さんとつながっていないのは日本の冒険者全体にとっても、不幸なことですわ。は! で、ですが……」
花蓮はそこまで言って、急に何かを思い出したかのように、顔色を変える。
「どうされました? 花蓮様。何かまだ懸念が……」
「い、いえ……鈴羽。わたくし大事なことを失念しておりましたわ。その……独り身の女であるわたくしが、殿方である敬三様を自宅に呼び寄せるなんて……そんなはしたないことをしてよろしいのかしら……」
と、花蓮は手を頬において、顔を朱に染めている。
「……花蓮様。おっしゃりたいことはよくわかります。ですが……時に男女関係というものは、強引さも必要ではないでしょうか?」
「ご、強引さ……ですか」
花蓮はゴクリと唾を飲み、鈴羽を見る。
「そうです。これが普通の男性ならばわたしもこんなことは言いません。ですが……相手はあの二見様です。あれほど強く、たくましく、優しく、慈愛に満ち満ちた……素晴らしい方——」
鈴羽は、そう言うと、話し途中で、一人うっとりとした顔をしている。
「えっと……鈴羽?」
花蓮が戸惑いの視線を向けているのを見て、鈴羽は慌てて現実世界に戻って来て、
「ごほん……で、ですので、花蓮様! つまり、二見様のような方は当然多くの女性から求められているはずです。そんな中でただ淑女として振る舞うことがはたして有効な戦略でしょうか」
「た、確かにそうですわね。敬三様を慕う女性はきっと大勢いらっしゃるでしょうし……」
「そうです! 花蓮様! すぐに行動するべきです。そして、わたしたちが二見様の——」
「わたしたち?」
「い、いえ……二見様が花蓮様の正式なご主人様となるためにも……」
「ご、ご主人様って……そ、そんなことは……い、いえ……鈴羽……。あなたに隠し事をしても仕方がありませんわね……」
花蓮は、顔を真っ赤にして、慌てて小首を振って否定する。
が……すぐに鈴羽の方をまっすぐ見て、目を潤ませながら、
「その……わたくし、敬三様ならば、わたくしの夫……いえ……西条家の当主にふさわしいと思いますの。す、鈴羽は……その……どう思いますの?」
と、少し緊張した面持ちで言う。
「もちろん大賛成です! 二見様のような偉大な方は今後絶対に現れないでしょう!」
鈴羽はそう力強く断言する。
「そ、そう。よ、よかったですわ。あなたが賛同してくれて。それにしても意外でしたわ。あなたのことだからきっと反対するものとばかりに……」
「反対などいたしません! いえ……わたしも実は大変恥ずべきことですが、闘う……いえお会いするまで、二見様のことを疑っていました。ですが……それは大変な過ちであったことに気づいたのです!」
花蓮は鈴羽の熱の入りようにいささか目を白黒させながら、
「と、とにかくあなたが同意してくれるのは心強いですわ。これで憂いはありませんわ。あとは——」
「はい! 花蓮様! 二見様を誘うのみです。ご安心ください! わたしが屋敷で誠心誠意、二見様にご奉仕して、二見様にご満足頂けるようにいたします!」
「な、何も、鈴羽自らがしなくとも——」
「いえ……この役目ばかりは花蓮様と言えどもお譲りする訳にはいきません」
「そ、そこまで言うなら……鈴羽、任せましたわ」
「はい! お任せください!」
と、鈴羽は声を張り上げる。
花蓮は、鈴羽の異常なまでの気の入れようにますます怪訝な顔を見せるが、ひとまずは二見への誘いが先とばかりにその場を離れるのであった。
ちなみに花蓮はすっかり失念しているのだが、鈴羽には男性経験は一切ない。
むろんそれは花蓮も同様である。
そんな二人が話し合い、練り上げた男性攻略法が的を射ているはずもなく……。
この後、彼女たちは、二見の反応でそれを嫌というほど実感……いや実感することもなく、より角度を上げた斜め上の攻略法を何度も二見に対して、実践していくのであった……。
実は鈴羽は、既に麻耶と連絡を取っていて、先日の動画については、何らかの疑義があることを彼女に伝えていた。
その際、麻耶の方も、鈴羽と同じように娘——美月——の証言にもかかわらず、動画の内容を疑問視しており、可能な限り早めに二見を聴取したい意向を話していた。
鈴羽は、麻耶の二見への深い懸念を感じ取り、麻耶が花蓮に連絡を取るよう促し、その間に二見を排除しようとしたのだが……。
だが……それは鈴羽が目覚める前までの話しである。
今の鈴羽は二見に対する懸念などまったく綺麗さっぱり消え失せている。
麻耶を屋敷に招くのも、二見のためであり、麻耶がもしも二見を害する行動を取るならば、たとえ相手が協会の会長であろうとも全力でそれを排する覚悟であった。
「わかりましたわ。鈴羽。確かに敬三様ほどの方が、麻耶さんとつながっていないのは日本の冒険者全体にとっても、不幸なことですわ。は! で、ですが……」
花蓮はそこまで言って、急に何かを思い出したかのように、顔色を変える。
「どうされました? 花蓮様。何かまだ懸念が……」
「い、いえ……鈴羽。わたくし大事なことを失念しておりましたわ。その……独り身の女であるわたくしが、殿方である敬三様を自宅に呼び寄せるなんて……そんなはしたないことをしてよろしいのかしら……」
と、花蓮は手を頬において、顔を朱に染めている。
「……花蓮様。おっしゃりたいことはよくわかります。ですが……時に男女関係というものは、強引さも必要ではないでしょうか?」
「ご、強引さ……ですか」
花蓮はゴクリと唾を飲み、鈴羽を見る。
「そうです。これが普通の男性ならばわたしもこんなことは言いません。ですが……相手はあの二見様です。あれほど強く、たくましく、優しく、慈愛に満ち満ちた……素晴らしい方——」
鈴羽は、そう言うと、話し途中で、一人うっとりとした顔をしている。
「えっと……鈴羽?」
花蓮が戸惑いの視線を向けているのを見て、鈴羽は慌てて現実世界に戻って来て、
「ごほん……で、ですので、花蓮様! つまり、二見様のような方は当然多くの女性から求められているはずです。そんな中でただ淑女として振る舞うことがはたして有効な戦略でしょうか」
「た、確かにそうですわね。敬三様を慕う女性はきっと大勢いらっしゃるでしょうし……」
「そうです! 花蓮様! すぐに行動するべきです。そして、わたしたちが二見様の——」
「わたしたち?」
「い、いえ……二見様が花蓮様の正式なご主人様となるためにも……」
「ご、ご主人様って……そ、そんなことは……い、いえ……鈴羽……。あなたに隠し事をしても仕方がありませんわね……」
花蓮は、顔を真っ赤にして、慌てて小首を振って否定する。
が……すぐに鈴羽の方をまっすぐ見て、目を潤ませながら、
「その……わたくし、敬三様ならば、わたくしの夫……いえ……西条家の当主にふさわしいと思いますの。す、鈴羽は……その……どう思いますの?」
と、少し緊張した面持ちで言う。
「もちろん大賛成です! 二見様のような偉大な方は今後絶対に現れないでしょう!」
鈴羽はそう力強く断言する。
「そ、そう。よ、よかったですわ。あなたが賛同してくれて。それにしても意外でしたわ。あなたのことだからきっと反対するものとばかりに……」
「反対などいたしません! いえ……わたしも実は大変恥ずべきことですが、闘う……いえお会いするまで、二見様のことを疑っていました。ですが……それは大変な過ちであったことに気づいたのです!」
花蓮は鈴羽の熱の入りようにいささか目を白黒させながら、
「と、とにかくあなたが同意してくれるのは心強いですわ。これで憂いはありませんわ。あとは——」
「はい! 花蓮様! 二見様を誘うのみです。ご安心ください! わたしが屋敷で誠心誠意、二見様にご奉仕して、二見様にご満足頂けるようにいたします!」
「な、何も、鈴羽自らがしなくとも——」
「いえ……この役目ばかりは花蓮様と言えどもお譲りする訳にはいきません」
「そ、そこまで言うなら……鈴羽、任せましたわ」
「はい! お任せください!」
と、鈴羽は声を張り上げる。
花蓮は、鈴羽の異常なまでの気の入れようにますます怪訝な顔を見せるが、ひとまずは二見への誘いが先とばかりにその場を離れるのであった。
ちなみに花蓮はすっかり失念しているのだが、鈴羽には男性経験は一切ない。
むろんそれは花蓮も同様である。
そんな二人が話し合い、練り上げた男性攻略法が的を射ているはずもなく……。
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