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第一章
西条花蓮邸——強行突入3分前——
「麻耶様! お待ち下さい! いくらダンジョン協会の会長といえども……このような振る舞いは許されません!」
「あら? 鈴羽、あなたが招いてくれたのでしょう? わたしはただ招きに応じて来ただけですよ」
「招いたのは麻耶様……だけです。何故……部隊を引き連れているのですか……」
「鈴羽、わたしはダンジョン協会の日本支部の会長なのですよ。好き勝手に動ける立場ではないのです。会合に部下を連れて行くのは当然ではありませんか?」
「なら……何故彼らは武装しているのですか? それにあの姿……あの部隊はまさか陸自の——」
「……鈴羽、それはあなたが一番よくわかっているのでは? そもそも……先ほどの電話ではあなたもそのことを懸念していたはず……。それなのにたった数時間でいったい何があったのかしら? まるであなたまで心が変わってしまったようですね……。そう……まるで魔法にかかったみたいに……」
「そ、それは……」
俺は、10メートルほど遠くにいる二人の様子を眺めていた。
事情は不明だが、どうやら二人の間にはかなり険悪なムードが漂っているようである。
いや……実のところ俺はその「事情」にうすうす気づきつつあった。
というのも、客の女性……麻耶さんというのか……が現れてから、外から痛いほどの視線を感じているからである。
正確な人数は不明だが、どうやら十数名が俺に対して敵意を持って、こちらを見ている……。
話しから推測するように、それは麻耶さんたちの部下のようだが……ここまで俺が警戒される「事情」はまるで心当たりがない……。
俺がそう戸惑っていると、麻耶さんが俺の方に気づき……いや元々気づいていたはずだ……こちらへ向かってくる。
「あら鈴羽、どうやらあちらも準備万端のようですね。話しが早くて助かりますわ」
「ま、麻耶様! お、お待ちください!」
麻耶さんはそう言うと、俺の前までスタスタと来て、にこやかに挨拶をする。
「はじめまして二見敬三……さん。お噂は娘……美月からよく伺っていますわ。わたしは二条院麻耶、ダンジョン協会日本支部の会長を務めさせていただいております」
娘……って。
麻耶さんは美月さんのお母さんなのか!?
近くであらためて見ると、麻耶さんの年齢はせいぜい30代といったところで、非常に若々しく、失礼だがとても美月さんくらいの子供がいる母親には見えない。
麻耶さんの美貌と服装が、彼女の若々しさを際立出せているのかもしれない。
上下ともに体にフィットした黒のスーツをまとい、それは麻耶さんのしなやかな体のラインを引き立てていて、とても洗練されているように見えた。
髪は黒髪のミディアムヘアで、内巻きにカールされていて、とても知的で優雅な印象を受ける。
とまあ……麻耶さんがとても美しい女性なのは間違いなく、こんな状況でないならば、彼女の笑顔を見て、俺はただ嬉しがっているだけでよかったのだが……。
そうも言っていられない……。
なにせ麻耶さんが俺の近くに来た途端、外にいるであろう人間たちの視線の圧はますます高まりを見せているのだから……
だいたい麻耶さんだって、表情こそは笑顔だが、目は全く笑っていない。
俺のことを敵視して、警戒しているのは明らかであった。
俺と麻耶さんが微妙な空気の中で対峙していると、後ろから花蓮さんが俺等のやり取りを聞きつけたのか、こちらにやってくる。
「麻耶さん、何やら騒がしいようですけど、これはどういうことですの? 本日は麻耶さん一人がいらっしゃるとお聞きしておりましたわ。大変申し訳ないのですが、外にいらっしゃる方たちの分までご準備をしておりませんから、おもてなしはできませんわ」
と、花蓮さんは落ち着き払った口調ながらも、毅然とした物言いで麻耶さんに話しかける。
花蓮さんも外にいる連中に気づいたようだ。
まあ……あれだけあからさまに敵意を向けられていれば当然と言えば当然か……。
「花蓮……こうして顔を会わせて話すのは久しぶりだから、ゆっくりと談笑といきたいのだけれど……残念ながらそうも言ってはいられないのよね……」
麻耶さんはそう微笑しながらも、相変わらず鋭い視線を維持したまま花蓮さんを見据えている。
「あら? わたくしは麻耶さんとたっぷりお話するつもりでしたのに」
「フフ……あなたのそういう性格は好きなのだけれどね……。そうねえ……あなた相手に下手な小細工をしてもしかたがないし……。花蓮、単刀直入に言うわ。わたしと一緒に協会本部まで来てもらえないかしら? もちろん二見……さんもご同行願うわ」
「それは……強制ということですの?」
二人の間の空気はさらに張り詰める。
そして、後ろにいる鈴羽さんの視線も……外からの視線も否が応にもますますその圧が高まる。
麻耶さんはやや間を空けた後で、
「……花蓮、あなたとは友人……だと思っているわ。だから……出来る限り穏便にすませたいの。わかってもらえるかしら?」
「わたくしだけなら喜んで出頭いたしますわ……ですが、敬三様も……というのは承服できませんわ。敬三様はわたくしが……西条家がお招きいたしました賓客ですわ。それに何よりも敬三様はわたくしの命の恩人……ですわ。そんな方にこんな無礼な振る舞いをするのは……麻耶さん、たとえあなたであってもわたくし……いえ西条の名誉にかけて決して許しませんわ」
その話し方はいつものように泰然としたものであったが、花蓮さんは今まで見たことがないほどに険しい顔をしていた。
場の緊張は最高潮に達していた。
「あら? 鈴羽、あなたが招いてくれたのでしょう? わたしはただ招きに応じて来ただけですよ」
「招いたのは麻耶様……だけです。何故……部隊を引き連れているのですか……」
「鈴羽、わたしはダンジョン協会の日本支部の会長なのですよ。好き勝手に動ける立場ではないのです。会合に部下を連れて行くのは当然ではありませんか?」
「なら……何故彼らは武装しているのですか? それにあの姿……あの部隊はまさか陸自の——」
「……鈴羽、それはあなたが一番よくわかっているのでは? そもそも……先ほどの電話ではあなたもそのことを懸念していたはず……。それなのにたった数時間でいったい何があったのかしら? まるであなたまで心が変わってしまったようですね……。そう……まるで魔法にかかったみたいに……」
「そ、それは……」
俺は、10メートルほど遠くにいる二人の様子を眺めていた。
事情は不明だが、どうやら二人の間にはかなり険悪なムードが漂っているようである。
いや……実のところ俺はその「事情」にうすうす気づきつつあった。
というのも、客の女性……麻耶さんというのか……が現れてから、外から痛いほどの視線を感じているからである。
正確な人数は不明だが、どうやら十数名が俺に対して敵意を持って、こちらを見ている……。
話しから推測するように、それは麻耶さんたちの部下のようだが……ここまで俺が警戒される「事情」はまるで心当たりがない……。
俺がそう戸惑っていると、麻耶さんが俺の方に気づき……いや元々気づいていたはずだ……こちらへ向かってくる。
「あら鈴羽、どうやらあちらも準備万端のようですね。話しが早くて助かりますわ」
「ま、麻耶様! お、お待ちください!」
麻耶さんはそう言うと、俺の前までスタスタと来て、にこやかに挨拶をする。
「はじめまして二見敬三……さん。お噂は娘……美月からよく伺っていますわ。わたしは二条院麻耶、ダンジョン協会日本支部の会長を務めさせていただいております」
娘……って。
麻耶さんは美月さんのお母さんなのか!?
近くであらためて見ると、麻耶さんの年齢はせいぜい30代といったところで、非常に若々しく、失礼だがとても美月さんくらいの子供がいる母親には見えない。
麻耶さんの美貌と服装が、彼女の若々しさを際立出せているのかもしれない。
上下ともに体にフィットした黒のスーツをまとい、それは麻耶さんのしなやかな体のラインを引き立てていて、とても洗練されているように見えた。
髪は黒髪のミディアムヘアで、内巻きにカールされていて、とても知的で優雅な印象を受ける。
とまあ……麻耶さんがとても美しい女性なのは間違いなく、こんな状況でないならば、彼女の笑顔を見て、俺はただ嬉しがっているだけでよかったのだが……。
そうも言っていられない……。
なにせ麻耶さんが俺の近くに来た途端、外にいるであろう人間たちの視線の圧はますます高まりを見せているのだから……
だいたい麻耶さんだって、表情こそは笑顔だが、目は全く笑っていない。
俺のことを敵視して、警戒しているのは明らかであった。
俺と麻耶さんが微妙な空気の中で対峙していると、後ろから花蓮さんが俺等のやり取りを聞きつけたのか、こちらにやってくる。
「麻耶さん、何やら騒がしいようですけど、これはどういうことですの? 本日は麻耶さん一人がいらっしゃるとお聞きしておりましたわ。大変申し訳ないのですが、外にいらっしゃる方たちの分までご準備をしておりませんから、おもてなしはできませんわ」
と、花蓮さんは落ち着き払った口調ながらも、毅然とした物言いで麻耶さんに話しかける。
花蓮さんも外にいる連中に気づいたようだ。
まあ……あれだけあからさまに敵意を向けられていれば当然と言えば当然か……。
「花蓮……こうして顔を会わせて話すのは久しぶりだから、ゆっくりと談笑といきたいのだけれど……残念ながらそうも言ってはいられないのよね……」
麻耶さんはそう微笑しながらも、相変わらず鋭い視線を維持したまま花蓮さんを見据えている。
「あら? わたくしは麻耶さんとたっぷりお話するつもりでしたのに」
「フフ……あなたのそういう性格は好きなのだけれどね……。そうねえ……あなた相手に下手な小細工をしてもしかたがないし……。花蓮、単刀直入に言うわ。わたしと一緒に協会本部まで来てもらえないかしら? もちろん二見……さんもご同行願うわ」
「それは……強制ということですの?」
二人の間の空気はさらに張り詰める。
そして、後ろにいる鈴羽さんの視線も……外からの視線も否が応にもますますその圧が高まる。
麻耶さんはやや間を空けた後で、
「……花蓮、あなたとは友人……だと思っているわ。だから……出来る限り穏便にすませたいの。わかってもらえるかしら?」
「わたくしだけなら喜んで出頭いたしますわ……ですが、敬三様も……というのは承服できませんわ。敬三様はわたくしが……西条家がお招きいたしました賓客ですわ。それに何よりも敬三様はわたくしの命の恩人……ですわ。そんな方にこんな無礼な振る舞いをするのは……麻耶さん、たとえあなたであってもわたくし……いえ西条の名誉にかけて決して許しませんわ」
その話し方はいつものように泰然としたものであったが、花蓮さんは今まで見たことがないほどに険しい顔をしていた。
場の緊張は最高潮に達していた。
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