44 / 153
第一章
オッサン vs 陸上自衛隊特殊作戦群——対異能即応部隊——
花蓮さんと鈴羽さんは到底承服しかねるといった顔をしているが、今のところ麻耶さんの言う通りにしていて、その場にじっとしている。
だが、この一瞬即発状態では何が起きてもおかしくはない。
人の生き死にが問われる場——戦場——というのはいつだって想定外のことが起きるのだから。
俺は異世界で嫌というほどそのことを味わってきた……。
既に俺は、部隊の突入と同時に、防護魔法を花蓮さんと鈴羽さん、それに自分自身に展開していた。
防護魔法を使うということは、すなわち敵対者に対する宣戦布告と同意義ではあるが、銃を向けられているこの状況下ではやむを得ない最低限の処置だろう。
彼らもそう思ってくれればよいが、この膠着状態が保たれているということは、少なくとも今のところは、彼らも戦闘に消極的だと信じたいが……。
彼らが装備している軍用銃の殺傷力がどの程度のものかは俺には皆目検討がつかない。
だが、異世界においても、物理特性上において銃と似ている構造を持つ——貫通特化型——魔法は存在していた。
人、モンスター、それに……魔族……、何にせよ生物である以上、急所——破壊されれば生体機能が停止する——は必ず存在する。
魔法はそもそも異世界において、殺傷の手段として、数百年にわたり進化してきた代物だ。
だから、『貫通特化型魔法』は、どの国においても、どの時代においても、魔法の中の花形であり続けた。
いかに効率的に対象を破壊、殺傷するかにおいて、『貫通特化型魔法』ほど優れたものはない。
そして、争いというのは異世界においても、この世界においても、決してなくなることはないのだから……。
いずれにせよ、『貫通特化型魔法』を使う者が多いということは、逆にそれを防ぐ魔法の需要も高くなる。
異世界で25年間生き延びてきた俺も、当然それらの魔法をいくつか習得している。
発動させた魔法は、俺がいま現在使える最大の防護魔法「クロニクルガード」である。
当然ながら三人同時に展開した場合は、一人の場合に比べて大分その効果は落ちてしまう。
それでも余程の威力を誇る『貫通特化型魔法』の直撃を受けない限りは致命傷にはならないはずだ……。
これで十分だと思いたいが……。
「さてと……二見。今後の展開はあなた次第なのだけれど……。無駄な抵抗はやめて大人しく投降しなさい。あなたがどこの国の工作員かは知らないけれど、あまりわたしたちを甘くみないことね。我が国においても、あなたのような異能を持つ諜報員に対しては、現場判断でいつでも『射撃許可』は出せるのよ」
答えなどとうに決まっている。
投降すれば戦闘を避けられるなんて、こんな有り難い話しはない。
「……抵抗するつもりはもとよりありません」
「意外と話しが通じる人間でよかったわ。異能者はたいていおかしな人ばかりだから……。まあ……人のことは言えないのだけれどね……」
俺は両手を高く上げて、抵抗の意思がないことを示す。
「拘束しなさい」
麻耶さんが静かにそう言うと、部隊の男たち数人が俺を囲む。
ついで、俺は地面に組み伏されて、両手を手錠にかけられ、両足も紐のようなものであっという間に拘束される。
ついで、猿ぐつわを押し込まれて、フードを被さられる。
俺はその対応に、ここまでやるのか……と、いくぶん不思議に思っていた。
いや……俺が知らないだけで、もしかしたらこの25年の間に日本の治安も悪化したののかもしれないな。
地下鉄で毒物が撒かれるなんて事件もあったことだし……。
まあ問答無用で殺されないだけ、異世界よりははるかにマシだし、誰にも被害が出ていないなら御の字である。
「敬三様!! 麻耶さん!! あなた……こんなことして許されると——」
「ご主人様!! 麻耶様! あなたは——」
花蓮さんと鈴羽さんの切実な声が聞こえる。
大丈夫です……と言いたいが、当然ながら猿ぐつわのせいで声は出せない。
「動かないでといったでしょう! 二見は精神操作魔法の使い手なのよ。魔法については未だに謎ばかりだけれど、精神系統の魔法の使い手は見ること、話すことで術を発動することはあなたたちも知っているでしょう? 目と口をふさぐのは当然の処置だわ」
なるほど……そういうことだったのか。
まあ……確かに精神操作魔法は視覚、聴覚に訴えるタイプが多い。
が……前述のようにその効果を及ぶすためには余程の力量差が必要だし、さらには制約をクリアする——数日、数週間といった長期にわたって術をかける——必要がある。
ここまでの措置はいささか過剰すぎる気がするが、上に立つものとはえてして心配性であるし、特に兵を動かす立場のものであればそれは悪いことではない。
しかし……それにしては、麻耶さんが、何も対策をせずに俺と正面きって話していたのはおかしな気がするが……。
彼女には精神操作魔法を防ぐ何らかの算段があるのだろうか。
「か、会長……。あの二人の拘束は……」
と、今まで無言を貫いていた部隊の人間の声がする。
なぜかは不明だが、その声は震えていた……。
だが、この一瞬即発状態では何が起きてもおかしくはない。
人の生き死にが問われる場——戦場——というのはいつだって想定外のことが起きるのだから。
俺は異世界で嫌というほどそのことを味わってきた……。
既に俺は、部隊の突入と同時に、防護魔法を花蓮さんと鈴羽さん、それに自分自身に展開していた。
防護魔法を使うということは、すなわち敵対者に対する宣戦布告と同意義ではあるが、銃を向けられているこの状況下ではやむを得ない最低限の処置だろう。
彼らもそう思ってくれればよいが、この膠着状態が保たれているということは、少なくとも今のところは、彼らも戦闘に消極的だと信じたいが……。
彼らが装備している軍用銃の殺傷力がどの程度のものかは俺には皆目検討がつかない。
だが、異世界においても、物理特性上において銃と似ている構造を持つ——貫通特化型——魔法は存在していた。
人、モンスター、それに……魔族……、何にせよ生物である以上、急所——破壊されれば生体機能が停止する——は必ず存在する。
魔法はそもそも異世界において、殺傷の手段として、数百年にわたり進化してきた代物だ。
だから、『貫通特化型魔法』は、どの国においても、どの時代においても、魔法の中の花形であり続けた。
いかに効率的に対象を破壊、殺傷するかにおいて、『貫通特化型魔法』ほど優れたものはない。
そして、争いというのは異世界においても、この世界においても、決してなくなることはないのだから……。
いずれにせよ、『貫通特化型魔法』を使う者が多いということは、逆にそれを防ぐ魔法の需要も高くなる。
異世界で25年間生き延びてきた俺も、当然それらの魔法をいくつか習得している。
発動させた魔法は、俺がいま現在使える最大の防護魔法「クロニクルガード」である。
当然ながら三人同時に展開した場合は、一人の場合に比べて大分その効果は落ちてしまう。
それでも余程の威力を誇る『貫通特化型魔法』の直撃を受けない限りは致命傷にはならないはずだ……。
これで十分だと思いたいが……。
「さてと……二見。今後の展開はあなた次第なのだけれど……。無駄な抵抗はやめて大人しく投降しなさい。あなたがどこの国の工作員かは知らないけれど、あまりわたしたちを甘くみないことね。我が国においても、あなたのような異能を持つ諜報員に対しては、現場判断でいつでも『射撃許可』は出せるのよ」
答えなどとうに決まっている。
投降すれば戦闘を避けられるなんて、こんな有り難い話しはない。
「……抵抗するつもりはもとよりありません」
「意外と話しが通じる人間でよかったわ。異能者はたいていおかしな人ばかりだから……。まあ……人のことは言えないのだけれどね……」
俺は両手を高く上げて、抵抗の意思がないことを示す。
「拘束しなさい」
麻耶さんが静かにそう言うと、部隊の男たち数人が俺を囲む。
ついで、俺は地面に組み伏されて、両手を手錠にかけられ、両足も紐のようなものであっという間に拘束される。
ついで、猿ぐつわを押し込まれて、フードを被さられる。
俺はその対応に、ここまでやるのか……と、いくぶん不思議に思っていた。
いや……俺が知らないだけで、もしかしたらこの25年の間に日本の治安も悪化したののかもしれないな。
地下鉄で毒物が撒かれるなんて事件もあったことだし……。
まあ問答無用で殺されないだけ、異世界よりははるかにマシだし、誰にも被害が出ていないなら御の字である。
「敬三様!! 麻耶さん!! あなた……こんなことして許されると——」
「ご主人様!! 麻耶様! あなたは——」
花蓮さんと鈴羽さんの切実な声が聞こえる。
大丈夫です……と言いたいが、当然ながら猿ぐつわのせいで声は出せない。
「動かないでといったでしょう! 二見は精神操作魔法の使い手なのよ。魔法については未だに謎ばかりだけれど、精神系統の魔法の使い手は見ること、話すことで術を発動することはあなたたちも知っているでしょう? 目と口をふさぐのは当然の処置だわ」
なるほど……そういうことだったのか。
まあ……確かに精神操作魔法は視覚、聴覚に訴えるタイプが多い。
が……前述のようにその効果を及ぶすためには余程の力量差が必要だし、さらには制約をクリアする——数日、数週間といった長期にわたって術をかける——必要がある。
ここまでの措置はいささか過剰すぎる気がするが、上に立つものとはえてして心配性であるし、特に兵を動かす立場のものであればそれは悪いことではない。
しかし……それにしては、麻耶さんが、何も対策をせずに俺と正面きって話していたのはおかしな気がするが……。
彼女には精神操作魔法を防ぐ何らかの算段があるのだろうか。
「か、会長……。あの二人の拘束は……」
と、今まで無言を貫いていた部隊の人間の声がする。
なぜかは不明だが、その声は震えていた……。
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。