異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

陸上自衛隊特殊作戦群サイド-01-

西条花蓮邸——強行突入6時間前——



 陸上自衛隊、習志野駐屯地。

 陸上総隊特殊作戦群第五中隊所属。

 通称……対異能即応部隊の営舎にて。



「はい。了解しました」



 間宮は、上官からの電話——出動命令——を淡々と受けていた。



 近くには間宮の部下——中里曹長——がいる。



 中里は、間宮より一回り以上離れた年齢で、体つきもまた間宮と違い、かなりの大柄だ。



 何も知らない者が近くで間宮と中里を見たならば、間宮のことを小隊長と考えるものはいないだろう。



「任務ですか?」



「ああ。そうだ」



「また……例の会長さん案件ですかな?」



「さてね……いずれにせよ我々は命令に従うのみだ。みなを召集してくれ」



「了解しました」



 中里はそう言うと、その大きな体をさっと動かして、営舎内を出る。



 部屋に一人残された間宮は、集合場所——ブリーフィングに使う小会議室——へと向かう。



 歩きながら、間宮は一人考えを巡らせる。



 間宮の頭の中にあったのは、ダンジョン協会の会長——二条院麻耶——が自分たちを呼んだ理由についてであった。



 上官はむろん「麻耶からの要請」などとは言明していない。



 が……国連軍経由ということは間違いなく、その背後には麻耶がいる。



 麻耶がダンジョン協会の会長になってから、間宮の部隊の出動回数は明らかに増えている。



 その多くがダンジョン内の対モンスターの調査——という名目の駆除、素材獲得——が主となる任務である。



 もっとも公式には日本においてはダンジョン内での自衛隊の活動は認められていない。



 麻耶はこの制約を回避するために、ダンジョン協会が国連所属であることを最大限利用している。



 やや複雑だが、麻耶は国連からの要請として、間宮の部隊を動かしている。



 間宮の部隊は一時的に国連所属の軍——国連軍——となり、あくまでダンジョン内で活動しているのは自衛隊ではなく、国連軍……ということになる訳だ。



 2001年の米国本土内で起きたスタンピード事件に対処するため、当時の国連は、安全保障理事会を緊急収集し、全会一致で国連軍を組織することを決議した。



 この際の安保理決議——国際連合安全保障理事会決議1368——に基づき、国連軍が創設され、いまなおその機能自体は継続している。



むろんそれはあくまで形上のものである。



 現在では、各国は自国に存在するダンジョンを「脅威」であると同時に「天然資源」とみなしている。



 それゆえに、他国の軍が自国のダンジョンに立ち入ることはおおむね禁止されている。



 当然、国連軍は結局のところ一度もダンジョン内に派遣されていない。



 ともあれ、その制度のおかげで、間宮の部隊はダンジョン内での活動が一応認められているのだ……。



 間宮はそこまで考えて、思わず苦笑いをする。



 麻耶からひと通りの説明を受けた時も理解に苦しんだが、それは今も同様だ。



 まったくなんともめんどくさいことだな。



 いちいちこんなことをしなければ、我々はダンジョン内に入ることすらできない。



 そして、「冒険者」などという聞こえのよい名前を作り上げて、素人の民間人たちに危険を押し付けている。



 いや……我が国らしいというところか。



 間宮はふと基地内を見る。



 間宮の視界に映るだけで数十人の隊員たちがせわしなく訓練に励んでいる。



 おそらく幼稚園児に「この人たちは誰?」と聞いたら、「兵隊さん!」と無邪気に答えるだろう。



 だが、この国では公式には78年間、「兵隊」は存在していないことになっている……。



 そして、その「建前」を守るために、頭の良い学者連中が、その知恵を振り絞って、この78年間ひたすら奇妙な論理を作り上げている。



 歪んだ論理はどこかにひずみを生じさせる……。



 それは、たいてい学者連中とは遠い世界……現場で任務を行う者たちの身に起きるのだ。



 間宮の脳裏に22年前の自身の幼い少女の時の光景が蘇る。



 お父様……。



 わたしはもう二度とあんな想いを誰にもさせません。



「間宮三尉」

 

 後ろから中里の声がして、間宮は現実に引き戻される。



「みなそろいました」



「そうか」

 

 間宮と中里が駐屯地内の小会議室に入ると、そこには既に部隊員たちが集まっていた。



 間宮の部隊は小隊であり、その人数は14名である。



 その人数はかなり少ない。



 小隊というよりは、むしろ分隊に近い人数構成である。



 その理由は部隊の役割となによりも隊長である間宮の能力に由来するのだが……。



 間宮は、集まった部下たちを前にして、すぐに作戦の概要を説明する。



 間宮がひと通りの話を終え、その後、発言を許可すると、部下の一人が言う。



「隊長。別に侮る訳ではないのですが、たかたが一人相手に我々がでばるとは、また随分と大袈裟……というか心配性ですね……あの女史は」

 

 それは間宮も思っていたことだ。



 いくら異能者とはいえたった一人のために間宮の部隊が動くのは前例がない。



 しかも、そのために一民間人の私邸を急襲するというのは、いくら麻耶とはいえかなり強引である。



 事前に伝えられた情報では、対象は既にS級冒険者をその精神支配下においていて、さらにはA級冒険者もその疑いがあるということらしい。



 対象が危険な存在であることは確かではあるが……いくらS級冒険者とはいえ二、三人程度では、間宮たちの相手ではない。
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