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第一章
英雄、目覚める-05-
俺との約束もすっかり忘れてしまったのか、『ご主人様』と連呼しているし……。
花蓮さんは鈴羽さんのこの様子を見てどう思っているのだろうか。
「鈴羽……先ほども言いましたわ。あなただけの責ではありませんわ。わたくしも麻耶さんを招くことに賛同したのですから。ですから……わたくしも敬三様に謝罪しなければなりませんわ」
と、花蓮さんまで頭を下げる。
「あ、あの……二人とも頭を上げてください。二人が悪い訳じゃ——」
「花蓮様! ご主人様! 違うのです! 今回のことは全てわたしの誤解が原因で——」
と、鈴羽さんがまたヒートアップしそうだったので、鈴羽さんには悪いが、俺はとりあえず話しをにごすことにした。
せっかく花蓮さんもこの事態に気を取られて、鈴羽さんのおかしな様子に気づいていないようだし。
「えっと……鈴羽さん。もう大丈夫ですから。とりあえず現状の把握をしましょう」
「は、はい……」
なおも言いたりなさそうな鈴羽さんを横目にして俺は話しを強引に変える。
「二人とも……先ほどの異常について何かご存知ですか?」
「いえ……わたくしたちが部屋から出た後に異常が起きたので……」
「最初に連れて来られた時と比べて大分警備が手薄にはなっていました。何かが協会内で起きていることは間違いないでしょう」
麻耶さんたちと二人の話しから察するに、囚人とモンスターが逃亡して、騒ぎを起こしているといったところか。
囚人とモンスターの関係は不明だが……。
さて……問題はこれから俺等がどう行動するかだが。
このまま混乱に乗じて逃げる。
それが一番容易ではあるが、長期的に見れば得策ではないか……。
このまま逃げれば、お尋ね者のままだし、俺だけならまだしも、花蓮さんたちの名誉にも傷がついてしまう。
打算的ではあるが、麻耶さんたちに協力して、事態を収拾すれば、俺への疑いが完全に晴れなくとも今より悪いようにはならないだろう。
後は二人の安全を確保すれば……。
「花蓮さん、鈴羽さん、わがままを言って申し訳ないんですが、自分は建物内の様子を調べに行こうと思います。お二人は危険ですので、ここにとどまって——」
「敬三様!」
「ご主人様!」
と、突然ほぼ同時に俺は二人から強い剣幕で話しを遮られる。
「な、なにか問題が……」
「敬三様の殿方としての矜持はわかりますわ。ですが、女でもあっても、愛する……い、いえ大切な恩人のためならば危険もいといませんわ」
「ご主人様……わたしはご主人様の命ならば、どんなことでもする覚悟です……ですがご主人様を危険な目にあわせて、残るのは耐えられません。どうか鈴羽を連れて行ってください」
二人とも真剣な顔でじっと俺を見つめてくる。
彼女たちの美しさに目を曇らせてしまっていたが、考えてみれば二人とも腕に覚えのある冒険者なのだ。
こちらが勝手に足手まとい扱いすれば憤るのも無理からぬところか。
それに俺の近くにいてくれた方が、『クロニクルガード』の効果も高いし、不測の事態にも対応しやすいかもしれない。
麻耶さんたちとの協力も俺一人よりははるかにスムーズにいくだろうしな。
何より彼女たちが納得しないだろう。
俺だって仲間を一人だけ危険な場所に行かせて、自分は呑気に安全な場所にいるなんて我慢できない。
「……わかりました。自分としても二人がいてくれた方が心強いです」
俺がそう言うと、
「敬三様の期待を裏切らないようにいたしますわ」
「ご主人様……ありがとうございます」
二人は、どこか安心したようにその顔をほころばせる。
さて……となればいつまでもここにしてもしかたがない。
「それじゃあ……行きますか」
俺はそう言って扉を開けて、廊下へと出る。
すぐ後ろには二人が続いている。
警報音は先ほどから鳴り止まないが、少なくとも視界の範囲には人はいない。
冒険者パーティーでの行動か。
まさかこの世界でもまたこういうことをするとは思わなかったな。
いつ以来だろうか。
20年ぶりくらいか。
結局、俺が異世界で普通の冒険者でいられたのは、せいぜい最初の数年間だけだったしな。
その後はずっと戦場での闘い——。
脳裏に嫌な光景が浮かんでしまった。
そして、一瞬また『彼女』の顔が頭をかすめる。
……違う。
ここは戦場ではない。
俺は兵士ではない、単なる冒険者だ。
彼女たちだってそうだ。
俺はチラリと後ろを見て二人を確認する。
二人には悪いが、やはり俺は一人の方が気が楽だ。
守る対象がいると、どうしても動きに制約が出てしまう。
戦場にいる訳じゃないが……ここは安全をきして探知魔法を使うか。
常時発動となると神経も使うし、俺の能力では大した距離を探れる訳ではないが……。
俺は意識を集中させて、探知魔法——ソウルエコー——を発動する。
優れた術者ならば半径500メートルの一定の大きさの生命体を探ることも可能だが、俺はせいぜい40~50メートル程度が限界だ。
しかし、これでも仲間の一人、二人ならば十分に不意打ちから守れる。
そのためにもお二人には近くにいてもらわないとな。
「その……お二人のことを軽んじているわけではないですが……なるべく離れないでいてくれると助かります」
俺は、そう二人に声をかける。
「え……は、はい……」
「かしこまりました」
と、二人は俺の方へと来たのだが……。
花蓮さんと鈴羽さんは俺の半径5センチの距離まで近づいてきた。
花蓮さんは鈴羽さんのこの様子を見てどう思っているのだろうか。
「鈴羽……先ほども言いましたわ。あなただけの責ではありませんわ。わたくしも麻耶さんを招くことに賛同したのですから。ですから……わたくしも敬三様に謝罪しなければなりませんわ」
と、花蓮さんまで頭を下げる。
「あ、あの……二人とも頭を上げてください。二人が悪い訳じゃ——」
「花蓮様! ご主人様! 違うのです! 今回のことは全てわたしの誤解が原因で——」
と、鈴羽さんがまたヒートアップしそうだったので、鈴羽さんには悪いが、俺はとりあえず話しをにごすことにした。
せっかく花蓮さんもこの事態に気を取られて、鈴羽さんのおかしな様子に気づいていないようだし。
「えっと……鈴羽さん。もう大丈夫ですから。とりあえず現状の把握をしましょう」
「は、はい……」
なおも言いたりなさそうな鈴羽さんを横目にして俺は話しを強引に変える。
「二人とも……先ほどの異常について何かご存知ですか?」
「いえ……わたくしたちが部屋から出た後に異常が起きたので……」
「最初に連れて来られた時と比べて大分警備が手薄にはなっていました。何かが協会内で起きていることは間違いないでしょう」
麻耶さんたちと二人の話しから察するに、囚人とモンスターが逃亡して、騒ぎを起こしているといったところか。
囚人とモンスターの関係は不明だが……。
さて……問題はこれから俺等がどう行動するかだが。
このまま混乱に乗じて逃げる。
それが一番容易ではあるが、長期的に見れば得策ではないか……。
このまま逃げれば、お尋ね者のままだし、俺だけならまだしも、花蓮さんたちの名誉にも傷がついてしまう。
打算的ではあるが、麻耶さんたちに協力して、事態を収拾すれば、俺への疑いが完全に晴れなくとも今より悪いようにはならないだろう。
後は二人の安全を確保すれば……。
「花蓮さん、鈴羽さん、わがままを言って申し訳ないんですが、自分は建物内の様子を調べに行こうと思います。お二人は危険ですので、ここにとどまって——」
「敬三様!」
「ご主人様!」
と、突然ほぼ同時に俺は二人から強い剣幕で話しを遮られる。
「な、なにか問題が……」
「敬三様の殿方としての矜持はわかりますわ。ですが、女でもあっても、愛する……い、いえ大切な恩人のためならば危険もいといませんわ」
「ご主人様……わたしはご主人様の命ならば、どんなことでもする覚悟です……ですがご主人様を危険な目にあわせて、残るのは耐えられません。どうか鈴羽を連れて行ってください」
二人とも真剣な顔でじっと俺を見つめてくる。
彼女たちの美しさに目を曇らせてしまっていたが、考えてみれば二人とも腕に覚えのある冒険者なのだ。
こちらが勝手に足手まとい扱いすれば憤るのも無理からぬところか。
それに俺の近くにいてくれた方が、『クロニクルガード』の効果も高いし、不測の事態にも対応しやすいかもしれない。
麻耶さんたちとの協力も俺一人よりははるかにスムーズにいくだろうしな。
何より彼女たちが納得しないだろう。
俺だって仲間を一人だけ危険な場所に行かせて、自分は呑気に安全な場所にいるなんて我慢できない。
「……わかりました。自分としても二人がいてくれた方が心強いです」
俺がそう言うと、
「敬三様の期待を裏切らないようにいたしますわ」
「ご主人様……ありがとうございます」
二人は、どこか安心したようにその顔をほころばせる。
さて……となればいつまでもここにしてもしかたがない。
「それじゃあ……行きますか」
俺はそう言って扉を開けて、廊下へと出る。
すぐ後ろには二人が続いている。
警報音は先ほどから鳴り止まないが、少なくとも視界の範囲には人はいない。
冒険者パーティーでの行動か。
まさかこの世界でもまたこういうことをするとは思わなかったな。
いつ以来だろうか。
20年ぶりくらいか。
結局、俺が異世界で普通の冒険者でいられたのは、せいぜい最初の数年間だけだったしな。
その後はずっと戦場での闘い——。
脳裏に嫌な光景が浮かんでしまった。
そして、一瞬また『彼女』の顔が頭をかすめる。
……違う。
ここは戦場ではない。
俺は兵士ではない、単なる冒険者だ。
彼女たちだってそうだ。
俺はチラリと後ろを見て二人を確認する。
二人には悪いが、やはり俺は一人の方が気が楽だ。
守る対象がいると、どうしても動きに制約が出てしまう。
戦場にいる訳じゃないが……ここは安全をきして探知魔法を使うか。
常時発動となると神経も使うし、俺の能力では大した距離を探れる訳ではないが……。
俺は意識を集中させて、探知魔法——ソウルエコー——を発動する。
優れた術者ならば半径500メートルの一定の大きさの生命体を探ることも可能だが、俺はせいぜい40~50メートル程度が限界だ。
しかし、これでも仲間の一人、二人ならば十分に不意打ちから守れる。
そのためにもお二人には近くにいてもらわないとな。
「その……お二人のことを軽んじているわけではないですが……なるべく離れないでいてくれると助かります」
俺は、そう二人に声をかける。
「え……は、はい……」
「かしこまりました」
と、二人は俺の方へと来たのだが……。
花蓮さんと鈴羽さんは俺の半径5センチの距離まで近づいてきた。
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