異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

英雄、目覚める-18-

 しかし、これは稀有な偶然だ。



 自分の命が天秤にかかる状態に陥ることは珍しい。



 しかも、その状況は術者——俺——が故意に作り出し、強制した訳ではないのならなおさらだ。



 俺自身が麻耶に瀕死の重症を負わせた訳ではないし、その原因となったデスナイトも俺がけしかけた訳ではない。



 麻耶は術者——俺——の意思とは無関係に命の危機に瀕した。



 そして、その命を救ってもらうかわりに俺に従属することを自らの意思で望んだ。



 これだけの条件が満たされることはあまりないだろう。



 まあ……もしかしたら、ダンジョン内をウロウロしていれば、瀕死の重体を負っている奴に運良く出くわすことはあるかもしれないが……。



 少なくとも異世界ではすでに事切れているケースがほとんどだったしな。



 そういう訳で、実際のところ俺自身、従属魔法を使ったことは今まで一度もない。



 とはいえ、今回のような機会は異世界でも多くはなかったが、それなりにはあった。



 だが、その当時の俺は愚かにもまだ甘さを捨てきれていなかった。



 だから、従属魔法よりも信頼できる仲間なんぞを求めていたが……。



 今の俺に必要なのはそんなすぐに変わる感情で縛られた奴らよりも、変更不可能な契約で縛られた人間が必要だ。



 俺は素っ裸で地面にひれ伏している無様な麻耶を見下ろす。



 麻耶は、先ほどから俺をずっと睨んでいる。



 この光景はそれなりに面白いが、そろそろ俺にも時間がない。



 時期に暗示は元に戻るだろう。



 それまでに出来る限りのことはやっておかなければな。



「いつまでそうして睨んでいるんだ。それがお前の命を助けてやった恩人に向ける顔か」



「…………」

 

 麻耶は押し黙ったまま俺を睨む。

 

 言葉を出して、また『旦那様』などと言ってしまうのが怖いのだろう。



「だんまりか。だが、俺はお前の娘の命も助けたのだぞ。娘から事情は聞いているのだろう? 納得できないのなら、娘を起こして聞いてみるか。今のお前を見れば、娘も一緒に土下座してくれるかもしれないしな」

 

 と、俺は倒れている美月の体を触る素振りをする。

 

 あるいは、この娘も母と同じように従属魔法で俺の奴隷にしてやりたかったところだが……。



 まあ……無理だろうな。



 たとえ、母の命を対価にしても、娘の真なる同意は得られなかっただろう。



 肉親の絆とやらがいかに脆いかというのを俺は異世界で散々に見てきた。



 大抵は助け合うどころか、王位を巡って殺し合う方が多かったくらいだ。



 この母娘たちも真に追い詰められれば、必ずその醜い本性をむき出しにするだろう。

 

 麻耶は、体をビクリと震わせて、



「ま、待って……くっ……待ってください……だ、旦那様……そ、それだけはやめて……ください」

 

 と、懇願してくる。



「お前みたいな女でも惨めな姿を娘に見られたくないというのはわかるが……娘以外の人間には見られてもいいのか?」



 ソウルエコーに反応があった。



 そして、クロニクルガードにも。



 随分前から先ほどの女たちがこちらに向かっているのには気づいていた。



 そして、彼女たちは俺のすぐ近くまで来ている。



 俺が後ろを見やると、50メートルほど先に女たち……花蓮、鈴羽、綾音……がいた。



 女たちも俺らに気付いたようだった。



 またあの女か……。



 俺は花蓮がいたことに思わず毒づいていたが、同時にあることを思いつき、ほくそ笑む。



 麻耶もまた花蓮たちに気づいたようで、顔を青ざめさせている。



 こんな女でもやはり羞恥心はあるのだろう。



 素っ裸で土下座しているところを他人に……ましてや知り合いには見られたくはないだろう。



 麻耶は立ち上がろうとしているのか、必死に手足をプルプルと震わせているが、一向に動かない。



 奴隷紋の影響で、今の麻耶は俺の命令なくしては、土下座をやめることはできない。



「く……ああ……な、なんで……動かせないの……」



 麻耶が絶望的な表情を浮かべている。



 やがて、懇願するように、俺を見る。



「お、お願い……します。だ、旦那様……ど、どうか……この格好だけは!」



 そうこうしている内に、花蓮たちは俺の方に駆け寄ってくる。



 そして、花蓮たちは、俺らから数メートルの距離まで来て……。



 麻耶と俺を視界に捉えてホッとしたような表情を浮かべる。



 が、その表情はすぐに戸惑いと驚愕の表情へと変わる。



 足元には既に全く動かくなった頭部がないデスナイトも転がっている。



 そちらもまあ目を引く光景だとは思うのだが、3人の女たちはそれらは一瞬だけしか見なかった。



 すぐに花蓮たちはその視線を麻耶の方に移し、3人とも口を大きく開けて、唖然とした表情を浮かべている。



「ま、麻耶さん……い、いったい何を……」
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