92 / 153
第一章
晩餐会-15-
そして、いまあらためて会場となる広間を見る。
先程見た時は準備途中で雑然とした様子が拭いきれなかった。
まったく手伝っていない俺が言うのもどうかと思うが、後半日で間に合うのかという状況であった。
しかし、今の様子は一変していた。
広間の中央には、テーブルセッティングが施された長い食事用テーブルか並んでいる。
そして、その上には綺羅びやかな銀食器が配置されていて、中央には彩り豊かな生花が入った大きな花瓶が置かれている。
高い天井からはクリスタルのシャンデリアが吊り下げられ、柔らかな光を放つ一方で、大きな窓からは月明りが差し込んでいた。
これらの明るさが異なる光は壁に飾られた絵画や鏡といったアンティークを絶妙なパランスで照らし出していた。
シャンデリアやアンティーク等の設備は昼間の時分からあったのだろうが、照明や光加減、配置する場所によってこうも見る者の印象が変わるのかというくらいよい意味で異なっていた。
俺は王族や貴族といった上流階級が集まるこうした晩餐会に何度か参加をしたことがある。
が……広間の規模感は別として正直なところ今目の前の顕現している空間はそれらの異世界での会合と比較しても、かなり洗練されていた。
この半日でここまでの状況を手配し、セッティングした美月さんの手腕に俺は思わず感心した。
そして、美月さんは疲れている様子も見せることなく、自身も華麗な姿でドレスアップして、広間の中に颯爽と立っていた。
この場の雰囲気と正装という相乗効果により美月さんの見目麗しい容姿がさらに引き立てられているように俺には感じられた。
俺はその場と美月さんの豪華絢爛な雰囲気にいささか圧倒されて、思わず近づくのをためらってしまったほどだ。
と、そこに後ろからドレスアップした二人の美女が近づき、美月さんに話しかけていた。
ひとりの女性が麻耶さんということはわかったが、もう一人の女性は見たことがない人だった。
「美月も少しは成長したわね。これくらいの規模の会ならば一人で段取りできるようにはなったのね。まあいずれはわたしの後をついで二条院家の当主になってもらうのだからこの程度のことはできてもらわないと困るのだけれど——」
「……お母様はこの数日で少しは変わったと思ったのですが、どうやら気のせいだったようですね。前日に突然言われて手配をしたわたしのことを一言ねぎらうくらいはあってもよいと思うのですけれど……」
と、美月さんは呆れたように麻耶さんから顔を背けて、もう一人の美女の方に話しかける。
「間宮三尉……いえ……今は一応プライベートということだから綾音さんと呼んだ方がいいのかな……それにしても綾音さんがこういう会に出席するとは思いませんでした」
「うう……わたしはこんな会には出たくはなかった。それを麻耶さんが強引に……」
俺はその話しを聞いて、ようやくにその女性が誰かを特定するに至った。
とはいえ、俺がイメージしていた姿と視界に映っている女性とがあまりにも違いすぎていたために、色々脳内で齟齬が起きて混乱をきたしていた。
なにせ今の間宮氏……いや綾音さんというのか……は、控え目ではあったが背中と胸元を空けた淡い桜色をしたドレスを身にまとい、どう見ても女性……それもとびきり美しい女性にしか見えない。
元々美形とは思っていたが、メイクアップされて、恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむいているその姿は、俺の脳内の男としての間宮氏とあまりにも乖離していて、とても同一人物とは思えなかった。
「綾音、あなたはいずれもっと上の立場になるのだし、こういう場に出る機会も多くなるわ。今の内にこういうことを経験しておくことは大切よ」
「ですが……なんでこんな服装で……制服でよかったのに……」
と、綾音さんは納得しがたい顔を浮かべている。
「一応非公式の会合なのに、自衛隊に所属するあなたが制服姿で出る訳にはいかないでしょう。それにこういう時、女性はしっかりと着飾っていた方が何かと都合がよいのよ」
と、麻耶さんは、いつものようにどこか上から目線で諭すように綾音さんにかたりかけていた。
先程見た時は準備途中で雑然とした様子が拭いきれなかった。
まったく手伝っていない俺が言うのもどうかと思うが、後半日で間に合うのかという状況であった。
しかし、今の様子は一変していた。
広間の中央には、テーブルセッティングが施された長い食事用テーブルか並んでいる。
そして、その上には綺羅びやかな銀食器が配置されていて、中央には彩り豊かな生花が入った大きな花瓶が置かれている。
高い天井からはクリスタルのシャンデリアが吊り下げられ、柔らかな光を放つ一方で、大きな窓からは月明りが差し込んでいた。
これらの明るさが異なる光は壁に飾られた絵画や鏡といったアンティークを絶妙なパランスで照らし出していた。
シャンデリアやアンティーク等の設備は昼間の時分からあったのだろうが、照明や光加減、配置する場所によってこうも見る者の印象が変わるのかというくらいよい意味で異なっていた。
俺は王族や貴族といった上流階級が集まるこうした晩餐会に何度か参加をしたことがある。
が……広間の規模感は別として正直なところ今目の前の顕現している空間はそれらの異世界での会合と比較しても、かなり洗練されていた。
この半日でここまでの状況を手配し、セッティングした美月さんの手腕に俺は思わず感心した。
そして、美月さんは疲れている様子も見せることなく、自身も華麗な姿でドレスアップして、広間の中に颯爽と立っていた。
この場の雰囲気と正装という相乗効果により美月さんの見目麗しい容姿がさらに引き立てられているように俺には感じられた。
俺はその場と美月さんの豪華絢爛な雰囲気にいささか圧倒されて、思わず近づくのをためらってしまったほどだ。
と、そこに後ろからドレスアップした二人の美女が近づき、美月さんに話しかけていた。
ひとりの女性が麻耶さんということはわかったが、もう一人の女性は見たことがない人だった。
「美月も少しは成長したわね。これくらいの規模の会ならば一人で段取りできるようにはなったのね。まあいずれはわたしの後をついで二条院家の当主になってもらうのだからこの程度のことはできてもらわないと困るのだけれど——」
「……お母様はこの数日で少しは変わったと思ったのですが、どうやら気のせいだったようですね。前日に突然言われて手配をしたわたしのことを一言ねぎらうくらいはあってもよいと思うのですけれど……」
と、美月さんは呆れたように麻耶さんから顔を背けて、もう一人の美女の方に話しかける。
「間宮三尉……いえ……今は一応プライベートということだから綾音さんと呼んだ方がいいのかな……それにしても綾音さんがこういう会に出席するとは思いませんでした」
「うう……わたしはこんな会には出たくはなかった。それを麻耶さんが強引に……」
俺はその話しを聞いて、ようやくにその女性が誰かを特定するに至った。
とはいえ、俺がイメージしていた姿と視界に映っている女性とがあまりにも違いすぎていたために、色々脳内で齟齬が起きて混乱をきたしていた。
なにせ今の間宮氏……いや綾音さんというのか……は、控え目ではあったが背中と胸元を空けた淡い桜色をしたドレスを身にまとい、どう見ても女性……それもとびきり美しい女性にしか見えない。
元々美形とは思っていたが、メイクアップされて、恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむいているその姿は、俺の脳内の男としての間宮氏とあまりにも乖離していて、とても同一人物とは思えなかった。
「綾音、あなたはいずれもっと上の立場になるのだし、こういう場に出る機会も多くなるわ。今の内にこういうことを経験しておくことは大切よ」
「ですが……なんでこんな服装で……制服でよかったのに……」
と、綾音さんは納得しがたい顔を浮かべている。
「一応非公式の会合なのに、自衛隊に所属するあなたが制服姿で出る訳にはいかないでしょう。それにこういう時、女性はしっかりと着飾っていた方が何かと都合がよいのよ」
と、麻耶さんは、いつものようにどこか上から目線で諭すように綾音さんにかたりかけていた。
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。