異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

新たな戦場へ-01-

 花蓮さんが心配そうな顔をして、



「敬三様……大丈夫ですか? どこか体調でも——」

 

と、覗き込んでくる。

 

 しかし、俺の視界には花蓮さんの顔は映っていなかった。

 

 そこに映っていたのは『彼女』の姿であった……。

 

 気づいたときには、俺は頭にこびりつく言葉を打ち消すように、思わず立ち上がり、



「俺はもう兵士ではないんだ」

 

 消えるような声でそう言っていた。

 

 場が静まり返ると同時に俺も我に返る。

 

 全員の当惑気味の視線が俺に注がれる。

 

 唯一、クラーク氏のみが先程と同じ冷静な視線で俺をただじっと観察していた。

 

 俺は何か適当な言葉をいくつか並べ立てて、その場から逃れるように、席を立つ。



 広間から繋がっている廊下を通り中庭に出て、あたりをふらつく。



 とにかく外の空気を吸いたかった。



 あいかわらず周りは静かで、ただ虫の音だけがあたりにこだましている。



 明かりも屋敷から出ている光を除けばほとんどない。



 静かで暗いこの空間は、俺の心を落ち着けるのには好都合であったが、同時に過去

の記憶を呼び起こす作用もあった。



 俺は大きく深呼吸をして、空を見上げる。



 空には曇はなかったが、星はほとんど見当たらず、真っ黒な空には月だけが光っていた。



 この屋敷が日本のどこに位置しているか定かではないが、郊外といってもまだ都市部なのだろう。



 星空が見えるほど、空はすんではいない。



 異世界では、どんな場所からでも大抵は星空が見えた。



 だが、その夜空にはこの世界でいう月は存在していなかった。



 やはりここは異世界ではない。



 この夜空は俺が元の世界に戻ってきたことを実感するのには十分過ぎるほどの圧倒的なリアリティがある。



 そのことは俺を安心させると同時にまた不安も生じさせる。



 俺はこの場に確かに存在して、この世界をこんなにも実感しているはずなのに、どうにもこの世界が嘘っぱちのように感じてしまう。



 まだこの世界に帰還して数カ月だ。



 いずれこの感覚もなくなる。



 そうなれば、逆に俺は異世界の出来事のことをまるで物語の世界のことのように感じることができるようになるのだろうか。



 ならば……きっと、あの感覚も忘れることができるはずだ。



 俺はしばらくただその場に佇んでいた。



 どれくらいの時間が過ぎたかわからないが、さすがにあまり中座をすると、花蓮さんたちに迷惑をかけてしまうかもしれない。



 俺が踵を返して、広間の方に戻ろうとすると、目の前に人影があった。



 薄暗い中、目を凝らすと、その人物はクラーク氏であった。



 俺は少し驚いたが、トイレにでもいった帰りだろうと思い、ただ無言で会釈する。



 クラーク氏も俺に気付き、それに返すように黙礼する。



 俺はそのまま横を通り抜けた。



 と、後ろからクラーク氏に声をかけられる。



「ここは本当に静かですな。ここに来る前に大使館がある場所に寄りましたが、同じ日本とは思えませんな」



 俺はクラーク氏の言葉を理解できていたが、首を傾げて何を言っているのかわからないという困り顔を作る。

 

 彼には申し訳ないが、今は見知らぬ他人と話す気分ではなかった。



 クラーク氏がなぜ言葉がわからないと思っている異国人に話しかけてきたのかは不明だが、これで話しは終わるだろう。

 

 が……俺の予想とは裏腹にクラーク氏はなおも話しを続ける。



「あなたを見て、わたしは久しぶりに自分の家族のことを思い出しました。わたしの家は軍人家系という訳ではないのですが、祖父と叔父はともに軍人……いや兵士だった。あなたの目は彼らにそっくりだ」

 

 クラーク氏はそういうと、暗闇の中で俺を見据えてくる。



 奇異や敵意といった感情をその表情から覚えることはなかった。

 

 ただ単純に何かを懐かしむ……クラーク氏の眼差しからはそんな印象を受けた。

 

 だが、俺はクラーク氏の唐突な話しにただ戸惑い、なんと返答してよいかわからずに無言のまま彼を見るしかできなかった。



 酒に酔って、しかも馴染みのない異国の地で、過去を思い出して少しばかり情緒的になっているのだろか。



 しかしそれにしてはとても冷静な物言いで、とても酔いが回っているようには見えない。
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