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第一章
新たな戦場へ-08-
美月さんの一言を合図にして、一同は立ち上がり、一応最低限の挨拶を交わすが、空気は変わらず悪いままであった。
クラーク氏一行は立ち上がり、そのまま広間を後にしようとする。
と、クラーク氏は何かを思い出したかのように最後に後ろを振り返り、俺の方を見ると、
「二見さん、あなたは叔父とは違うと……願っています」
そう言って、一礼をして、その場を後にする。
残された俺はただその場で呆然としている以外なかった。
やがて彼らが完全にその場からいなくなった後、麻耶さんが憤懣やるかたないといった様子で、叫ぶ。
「……なんて失礼な男なの!」
「わたくしも麻耶さんに同意しますわ。まさかクラーク氏があのような方だとは思いませんでしたわ。もっと高潔で話がわかる方と聞いていましたのに……。あんな盗撮まがいのことをして麻耶さんを……いえ女性を侮辱するなんて……——はっあの場が見られていたということはまさか敬三様とわたくしの接吻も——」
と、花蓮さんも麻耶さんと同じく憤っていたが、突如何かに気づいたらしく、声を止める。
隣では鈴羽さんが、冷静な表情で、
「わたしもそれには同意見ですが……花蓮様、どうも妙だとは思いませんか? クラーク氏と言えば、アメリカのダンジョン行政を長年取り仕切っている方で、内外を問わず評判もいい人物です。そんなクラーク氏が、このような場であんな挑発まがいの言動をするなんて、何か裏が——」
と、言っていたが、花蓮さんの様子を見て、はたと声を抑える。
「花蓮様? どうされましたか?」
花蓮さんは、鈴羽さんの話は全く耳に入っていないようで、ただ顔を赤らめて、顔をうつむかせて、ブツブツと何かを言っている。
「ああ……なんてことですの? あんな姿を撮られていただなんて……。それにしても、女性のプライベートを隠し撮りするなんてなんと卑劣な……許せませんわ!」
と、先程の麻耶さん以上の怒りを露わにしている。
どうも話が大分変わっているような気がするが、記憶がない俺としては花蓮さんが何に憤っているか検討がつかない。
もっとも、鈴羽さんはその花蓮さんの検討違いの怒りに戸惑いを感じたようで、
「か、花蓮様、落ち着いてください。別にあの時の様子まではさすがにいくら高画質とはいえ何をしているかなど判別できないかと……そ、それに麻耶さんに比べればあれくらいの——」
と、あわててなだめる。
麻耶さんは鈴羽さんのその言葉を聞いて、顔色を変えて、剣幕鋭い視線を鈴羽さんに向ける。
「ごほん、ま、まあ……あれはクラーク氏の単なる脅し……いえ挑発でしょう。あのような見え透いた陽動に乗せられることなく我々は一致団結してご主人様のことを——」
と、鈴羽さんは麻耶さんの視線を感じて、その場をとりつくろうとしたのだが、鈴羽さんの言はどうも麻耶さんの地雷に触れてしまうものだったらしい。
「……鈴羽、何か勘違いしているようだけれど、わたしはあなたたちと違って別に二見の女……ごほん……ち、違う……そ、その友人になった訳じゃないのよ。そ、そもそも今回の事態だって元を正せば全てこの男のせいなのだし……」
麻耶さんはそう未だに顔を赤らめながら、俺の方をきっと睨む。
クラーク氏一行がいなくなったので、落ち着きを取り戻したかと思ったが、どうやら鈴羽さんの言動でかえって機嫌を損ねてしまったらしい。
鈴羽さんには申し訳ないが、俺はこれ以上麻耶さんの怒りの矛先を自分に向けたくなかったので、わざとらしく顔を背けるしかなかった。
「まあ……いいわ。それに、鈴羽、あなたはまるで関係ないといった素振りだけれど、わたしはあなたの様子がおかしくなってから、色々とあなたのことを調べているのよ。例えばそう……二見とはじめて接触した時の件のホテルでの出来事とかね。もちろん、ホテルの監視カメラの映像も入手しているわ。こう言われて鈴羽、あなたはそんな冷静な顔をしていられるのかしら?」
ホテルでの一件については俺にも記憶がある。
確かにあの様子は俺もあまり人に見られたくはない。
俺がそう顔を青ざめさせていると、
「わたしは別になんとも思いませんが……あの出来事のおかげでわたしはご主人様の素晴らしさを知ることができたのですから、麻耶さんに……いえ花蓮様に見られても今なら問題ありません」
と、鈴羽さんは何故か非常に堂々とした物言いをしている。
「な!?……まったく……鈴羽、あなたは女としての恥じらいがないのかしら。いえわたしが言いたいのはそうではなくて——」
「えっと……みなさん、ちょっとよろしいですか?」
鈴羽さんと麻耶さんが喧々諤々の口論をしていると、美月さんがおもむろに片手を上げる。
クラーク氏一行は立ち上がり、そのまま広間を後にしようとする。
と、クラーク氏は何かを思い出したかのように最後に後ろを振り返り、俺の方を見ると、
「二見さん、あなたは叔父とは違うと……願っています」
そう言って、一礼をして、その場を後にする。
残された俺はただその場で呆然としている以外なかった。
やがて彼らが完全にその場からいなくなった後、麻耶さんが憤懣やるかたないといった様子で、叫ぶ。
「……なんて失礼な男なの!」
「わたくしも麻耶さんに同意しますわ。まさかクラーク氏があのような方だとは思いませんでしたわ。もっと高潔で話がわかる方と聞いていましたのに……。あんな盗撮まがいのことをして麻耶さんを……いえ女性を侮辱するなんて……——はっあの場が見られていたということはまさか敬三様とわたくしの接吻も——」
と、花蓮さんも麻耶さんと同じく憤っていたが、突如何かに気づいたらしく、声を止める。
隣では鈴羽さんが、冷静な表情で、
「わたしもそれには同意見ですが……花蓮様、どうも妙だとは思いませんか? クラーク氏と言えば、アメリカのダンジョン行政を長年取り仕切っている方で、内外を問わず評判もいい人物です。そんなクラーク氏が、このような場であんな挑発まがいの言動をするなんて、何か裏が——」
と、言っていたが、花蓮さんの様子を見て、はたと声を抑える。
「花蓮様? どうされましたか?」
花蓮さんは、鈴羽さんの話は全く耳に入っていないようで、ただ顔を赤らめて、顔をうつむかせて、ブツブツと何かを言っている。
「ああ……なんてことですの? あんな姿を撮られていただなんて……。それにしても、女性のプライベートを隠し撮りするなんてなんと卑劣な……許せませんわ!」
と、先程の麻耶さん以上の怒りを露わにしている。
どうも話が大分変わっているような気がするが、記憶がない俺としては花蓮さんが何に憤っているか検討がつかない。
もっとも、鈴羽さんはその花蓮さんの検討違いの怒りに戸惑いを感じたようで、
「か、花蓮様、落ち着いてください。別にあの時の様子まではさすがにいくら高画質とはいえ何をしているかなど判別できないかと……そ、それに麻耶さんに比べればあれくらいの——」
と、あわててなだめる。
麻耶さんは鈴羽さんのその言葉を聞いて、顔色を変えて、剣幕鋭い視線を鈴羽さんに向ける。
「ごほん、ま、まあ……あれはクラーク氏の単なる脅し……いえ挑発でしょう。あのような見え透いた陽動に乗せられることなく我々は一致団結してご主人様のことを——」
と、鈴羽さんは麻耶さんの視線を感じて、その場をとりつくろうとしたのだが、鈴羽さんの言はどうも麻耶さんの地雷に触れてしまうものだったらしい。
「……鈴羽、何か勘違いしているようだけれど、わたしはあなたたちと違って別に二見の女……ごほん……ち、違う……そ、その友人になった訳じゃないのよ。そ、そもそも今回の事態だって元を正せば全てこの男のせいなのだし……」
麻耶さんはそう未だに顔を赤らめながら、俺の方をきっと睨む。
クラーク氏一行がいなくなったので、落ち着きを取り戻したかと思ったが、どうやら鈴羽さんの言動でかえって機嫌を損ねてしまったらしい。
鈴羽さんには申し訳ないが、俺はこれ以上麻耶さんの怒りの矛先を自分に向けたくなかったので、わざとらしく顔を背けるしかなかった。
「まあ……いいわ。それに、鈴羽、あなたはまるで関係ないといった素振りだけれど、わたしはあなたの様子がおかしくなってから、色々とあなたのことを調べているのよ。例えばそう……二見とはじめて接触した時の件のホテルでの出来事とかね。もちろん、ホテルの監視カメラの映像も入手しているわ。こう言われて鈴羽、あなたはそんな冷静な顔をしていられるのかしら?」
ホテルでの一件については俺にも記憶がある。
確かにあの様子は俺もあまり人に見られたくはない。
俺がそう顔を青ざめさせていると、
「わたしは別になんとも思いませんが……あの出来事のおかげでわたしはご主人様の素晴らしさを知ることができたのですから、麻耶さんに……いえ花蓮様に見られても今なら問題ありません」
と、鈴羽さんは何故か非常に堂々とした物言いをしている。
「な!?……まったく……鈴羽、あなたは女としての恥じらいがないのかしら。いえわたしが言いたいのはそうではなくて——」
「えっと……みなさん、ちょっとよろしいですか?」
鈴羽さんと麻耶さんが喧々諤々の口論をしていると、美月さんがおもむろに片手を上げる。
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