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第一章
束の間の遊戯-02-
俺は麻耶さんに壁際に追いやられて、呆気にとらわれる。
「え? い、いや……と、突然何を……」
しかし、俺は驚くと同時に別のことも急速に脳裏を締め出していた。
というのも、麻耶さんは非常に前傾姿勢になっていて、俺の文字通り目の前にいる。
麻耶さんの眼光鋭い視線からたまらず俺が顔をそらすと、そこには元々ドレス姿で強調されていた彼女のたわわに実った胸が否が応でも目に飛び込んでくる。
俺が目を泳がせながらも、努めて冷静なフリをしていたのだが……。
やはり俺は相当に挙動不審だったのだろう。
すぐに麻耶さんに見咎められ、
「あなた……ど、どこを見ているの!」
と、彼女は声を荒げて、その自身の体をますます俺に寄せてくる。
いや……麻耶さんが怒る理由はわかる。
女性の胸を不躾な目で見るのなんて許されないことだ。
しかし、この状況下だと……俺に……いや大抵の男なら選択肢はなくないか。
ほとんど不可抗力……いや生理的反応じゃないか。
しかも、麻耶さんは俺にますます接近してくるから、余計に俺の理性の選択肢の幅は少なくなってしまう。
これで見るなという方が無理があるんじゃないのか。
麻耶さんは自身のその蠱惑的な体にもっと自覚を持ってもらいたい。
と、俺がそんな自分でも勝手だと思う言い訳を脳裏にぶちまけていると、突然麻耶さんは何かに耐えるようにギュッと眉間にしわをよせて、
「ああ! ま、またなの!? うう……」
とうめき声を上げて、その場で不意にがっくりと膝を落とし、倒れそうになる。
俺は慌てて麻耶さんの体を支えようと両手を差し向ける。
「や、やめなさい……さ、触らないで! あ、あなたに触れられるとまたあの変な感覚が……ああ!」
麻耶さんはそう言って俺の手を乱暴に振り払うと、そのままよろけるようにして床に座りこんでしまう。
その明らかにおかしい様子に俺もさすがに心配になり、
「あの……大丈夫ですか? どこか調子でも——」
と、声をかけると、麻耶さんは、
「し、しらばっくれるつもりなの……あなたの……だ、旦那様の仕業で……ああ……また!」
と、再び気色ばんで、一瞬俺を睨む。
が、すぐに何かに気づいたかのように顔を真っ赤にして顔をそむけて、押し黙ってしまう。
今まで静観していた綾音さんもさすがにこの事態に驚いたのか、
「ま、麻耶さん!? いったいどうされたのですか? 先日もかなり変でしたけれど、やはりこの男に何かされているのですか?」
と、麻耶さんに駆け寄る。
「さ、三尉! だ、旦那様を……ああ!! ふ、二見を拘束しなさい!」
と、麻耶さんがかなり取り乱した様子で、そう叫ぶ。
「え? い、いや……そ、それはわたしもそうしたいですが、どんな人間でも無理かと——い、いえ、しかし……だ、旦那様というのはやっぱり……」
綾音さんは麻耶さんの突然の要求にただ戸惑っていた。
むろんそれは俺も同様である。
先程までは一応普通に話せていたのに、いったい麻耶さんに何があったのか。
俺がそう不審に思っていると、麻耶さんは足元をふらつかせながらも立ち上がり、
「も、もういいわ! こ、こうなったらわたしが直接……か、覚悟なさい!」
麻耶さんは声を振り絞るようにそう言う。
そして、片手を上にあげて、何やら魔法を発動する素振りを見せる。
また……魔法——麻耶さん……いくらなんでも直情過ぎやしないか。
と、俺は少しばかり呆れながらも、麻耶さんの魔法詠唱を止めようと動こうとしたのだが……。
いやしかし……先程みたいにあまり強く手を掴むとまた麻耶さんの体調が悪くなってしまうかもしれない。
どれくらい手加減すればいいのか。
と、そんな感じで俺がかなり長く逡巡している間に、さすがに魔法詠唱が終わってしまったらしい。
俺があっと思った直後に麻耶さんの手にサンダーボルトが発現しかけたが、
「あんっ!! だ、ダメ!! うう!! ああ!! こんなのって!!」
と、麻耶さんは今まで見たこともないくらい、大声をあげて、その場にへたり込んでしまう。
俺と綾音さんはしばし唖然としながら、麻耶さんのその様子を黙って見ているしかなかった。
麻耶さんは顔を上気させて、口をやや半開きにして、目を潤ませて虚空を見つめている。
その様子はどこか放心状態のように見えた。
「え? い、いや……と、突然何を……」
しかし、俺は驚くと同時に別のことも急速に脳裏を締め出していた。
というのも、麻耶さんは非常に前傾姿勢になっていて、俺の文字通り目の前にいる。
麻耶さんの眼光鋭い視線からたまらず俺が顔をそらすと、そこには元々ドレス姿で強調されていた彼女のたわわに実った胸が否が応でも目に飛び込んでくる。
俺が目を泳がせながらも、努めて冷静なフリをしていたのだが……。
やはり俺は相当に挙動不審だったのだろう。
すぐに麻耶さんに見咎められ、
「あなた……ど、どこを見ているの!」
と、彼女は声を荒げて、その自身の体をますます俺に寄せてくる。
いや……麻耶さんが怒る理由はわかる。
女性の胸を不躾な目で見るのなんて許されないことだ。
しかし、この状況下だと……俺に……いや大抵の男なら選択肢はなくないか。
ほとんど不可抗力……いや生理的反応じゃないか。
しかも、麻耶さんは俺にますます接近してくるから、余計に俺の理性の選択肢の幅は少なくなってしまう。
これで見るなという方が無理があるんじゃないのか。
麻耶さんは自身のその蠱惑的な体にもっと自覚を持ってもらいたい。
と、俺がそんな自分でも勝手だと思う言い訳を脳裏にぶちまけていると、突然麻耶さんは何かに耐えるようにギュッと眉間にしわをよせて、
「ああ! ま、またなの!? うう……」
とうめき声を上げて、その場で不意にがっくりと膝を落とし、倒れそうになる。
俺は慌てて麻耶さんの体を支えようと両手を差し向ける。
「や、やめなさい……さ、触らないで! あ、あなたに触れられるとまたあの変な感覚が……ああ!」
麻耶さんはそう言って俺の手を乱暴に振り払うと、そのままよろけるようにして床に座りこんでしまう。
その明らかにおかしい様子に俺もさすがに心配になり、
「あの……大丈夫ですか? どこか調子でも——」
と、声をかけると、麻耶さんは、
「し、しらばっくれるつもりなの……あなたの……だ、旦那様の仕業で……ああ……また!」
と、再び気色ばんで、一瞬俺を睨む。
が、すぐに何かに気づいたかのように顔を真っ赤にして顔をそむけて、押し黙ってしまう。
今まで静観していた綾音さんもさすがにこの事態に驚いたのか、
「ま、麻耶さん!? いったいどうされたのですか? 先日もかなり変でしたけれど、やはりこの男に何かされているのですか?」
と、麻耶さんに駆け寄る。
「さ、三尉! だ、旦那様を……ああ!! ふ、二見を拘束しなさい!」
と、麻耶さんがかなり取り乱した様子で、そう叫ぶ。
「え? い、いや……そ、それはわたしもそうしたいですが、どんな人間でも無理かと——い、いえ、しかし……だ、旦那様というのはやっぱり……」
綾音さんは麻耶さんの突然の要求にただ戸惑っていた。
むろんそれは俺も同様である。
先程までは一応普通に話せていたのに、いったい麻耶さんに何があったのか。
俺がそう不審に思っていると、麻耶さんは足元をふらつかせながらも立ち上がり、
「も、もういいわ! こ、こうなったらわたしが直接……か、覚悟なさい!」
麻耶さんは声を振り絞るようにそう言う。
そして、片手を上にあげて、何やら魔法を発動する素振りを見せる。
また……魔法——麻耶さん……いくらなんでも直情過ぎやしないか。
と、俺は少しばかり呆れながらも、麻耶さんの魔法詠唱を止めようと動こうとしたのだが……。
いやしかし……先程みたいにあまり強く手を掴むとまた麻耶さんの体調が悪くなってしまうかもしれない。
どれくらい手加減すればいいのか。
と、そんな感じで俺がかなり長く逡巡している間に、さすがに魔法詠唱が終わってしまったらしい。
俺があっと思った直後に麻耶さんの手にサンダーボルトが発現しかけたが、
「あんっ!! だ、ダメ!! うう!! ああ!! こんなのって!!」
と、麻耶さんは今まで見たこともないくらい、大声をあげて、その場にへたり込んでしまう。
俺と綾音さんはしばし唖然としながら、麻耶さんのその様子を黙って見ているしかなかった。
麻耶さんは顔を上気させて、口をやや半開きにして、目を潤ませて虚空を見つめている。
その様子はどこか放心状態のように見えた。
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