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第一章
束の間の遊戯-05-
結局、俺は本能と理性の間を行ったり来たりといった綱渡り状態を続けながら、なんとか魔力の痕跡を探ることができた。
そして、一度その痕跡の先を知れば、それはあまりにも奇妙なものであった。
麻耶さんの体に施された魔力……その痕跡は巧妙に隠蔽されてはいたが、一度気づいてしまえば後をたどるのはたやすい。
なぜかといえば、それはすぐ近く……何よりも麻耶さんの体からまっすぐ俺の体へと伸びている。
目の前に示された結果を見れば、麻耶さんの体に影響を及ぼしている魔法は間違いなく俺がかけたものである。
それは1+1=2、という答えの如く自明のものであった。
だが、麻耶さんの体……下腹部のヘソに施されたその紋様は明らかに異様なものであり、それが俺の思考を止めた。
いわゆる奴隷紋が施されている。
それはつまり、麻耶さんは自らの意思で俺に隷属することを選んだという訳で……。
「い、いつまで見ているのよ! その様子だと何かわかったんでしょ」
「え……あ……は、はあ……わかったのはわかったのですが……」
何と説明すればよいのか。
というよりも、俺は麻耶さんに従属魔法をかけて、麻耶さんはそれに合意したのか。
そんな無茶苦茶なことを俺はいつのまに……。
いや間違いなく記憶を失っている間だろう。
というより麻耶さんはそのことを知っているはずだ。
なぜあえて術者である俺にあえて尋ねているんだ。
疑問が脳裏に絶え間なく溢れては消えていく。
結局、俺は感情を廃してただ事実のみを淡々と麻耶さんに伝えることを選んだ。
そして、俺の説明を聞いた麻耶さんは一言で表すならば意外なものであった。
「うう……やっぱり……そんな忌まわしいことになっているの」
麻耶さんはそうは言うが、従属魔法が自身にかけられていることについてはそれほどに驚いていなかった。
この事実は率直に言って俺にとっては驚きであった。
麻耶さんが自ら望んだ……というのはにわかには信じられないが……いずれにせよ従属魔法が効果を及ぼすためには、相手の同意がいる。
だから、麻耶さんが自分が従属魔法にかけられていることを知っているのはある意味で当然なのだが……。
だがそれにしては、麻耶さんの態度はあまり深刻そうな素振りではない。
俺が必ず解除の意思を示すと信用しているのだろうか。
ついで、麻耶さんは俺の顔をうかがうように見た後で、
「でも、術者があなたなら、当然解除もできるのでしょ。さ、さあ……解除しなさい」
と、言う。
麻耶さんに言われるまでもなく、俺はこの魔法の解除を既に試みていた。
だが、しかしやはりというか解除はできなかった。
俺は戸惑い、ただ首をひねるしかできなかった。
文献には確かに従属魔法は「解除ができない」と書かれていた。
だが、解除ができない魔法など原則的に存在しないはずだ。
隷属魔法は術者と非術者——魔法をかけられる者——双方の同意でその効果が発動している。
だから、双方の同意があれば解除は可能なはずだ。
術者である俺が、解除をしようとしている以上、解除ができない理由は一つしかない。
術をかけられているとうの本人である麻耶さんが解除を拒否しているということである。
それは今の麻耶さんの態度を考えればありえないように思えるが……。
麻耶さんは俺が怪訝な顔をしているのを見てとり、
「ど、どうしたの? 二見、解除するためになにか問題があるの?」
と、不安げな表情を浮かべている。
「いえ……少し考え事を……」
人の言葉と感情は一致しないということはよくあることではある。
言葉で、「大好きです」と言っていても心の底では「大嫌いです」と思っていることなどよくあることだ。
裏表がない人間などいないし、むしろそんな人間がいたら逆にかなり病的だろう。
だから、麻耶さんが俺に嘘をついていても何らおかしなことではないのだが……。
麻耶さんが心の底では隷属魔法を解除してほしくない……なんて思っていることがありえるのか。
人の心の内は本当のところではわからない……わからないのだが、それにしても奇妙である。
それとも、やはり文献に書かれているとおり、隷属魔法には「解除ができない」理由が別にあるのだろうか。
俺はてっきり術者が隷属魔法を自発的に解除することなどほとんど想定できないから、「解除ができない」と書かれているだけだと思っていたが……。
もしかしたら、隷属魔法には相手の心を縛る……隷属を望むようになる効果もあるのだろうか。
それなら、麻耶さんが拒否をしていることも説明がつくが……。
俺は考えあぐねて、少しうめき声を漏らして、顔を俯ける。
それにしても麻耶さんになんと説明すればいいのか。
しばらく俺はそんな風に首をひねっていたのだが、麻耶さんは俺のその態度を別のことと解釈したらしい。
「ふ、二見……な、何を考えているの……ま、まさか……魔法を解除するのを渋っているんじゃないんでしょうね!」
と、麻耶さんは詰め寄ってくる。
「い、いえ、そんなことはただ今すぐ解除ができないだけで——」
そして、一度その痕跡の先を知れば、それはあまりにも奇妙なものであった。
麻耶さんの体に施された魔力……その痕跡は巧妙に隠蔽されてはいたが、一度気づいてしまえば後をたどるのはたやすい。
なぜかといえば、それはすぐ近く……何よりも麻耶さんの体からまっすぐ俺の体へと伸びている。
目の前に示された結果を見れば、麻耶さんの体に影響を及ぼしている魔法は間違いなく俺がかけたものである。
それは1+1=2、という答えの如く自明のものであった。
だが、麻耶さんの体……下腹部のヘソに施されたその紋様は明らかに異様なものであり、それが俺の思考を止めた。
いわゆる奴隷紋が施されている。
それはつまり、麻耶さんは自らの意思で俺に隷属することを選んだという訳で……。
「い、いつまで見ているのよ! その様子だと何かわかったんでしょ」
「え……あ……は、はあ……わかったのはわかったのですが……」
何と説明すればよいのか。
というよりも、俺は麻耶さんに従属魔法をかけて、麻耶さんはそれに合意したのか。
そんな無茶苦茶なことを俺はいつのまに……。
いや間違いなく記憶を失っている間だろう。
というより麻耶さんはそのことを知っているはずだ。
なぜあえて術者である俺にあえて尋ねているんだ。
疑問が脳裏に絶え間なく溢れては消えていく。
結局、俺は感情を廃してただ事実のみを淡々と麻耶さんに伝えることを選んだ。
そして、俺の説明を聞いた麻耶さんは一言で表すならば意外なものであった。
「うう……やっぱり……そんな忌まわしいことになっているの」
麻耶さんはそうは言うが、従属魔法が自身にかけられていることについてはそれほどに驚いていなかった。
この事実は率直に言って俺にとっては驚きであった。
麻耶さんが自ら望んだ……というのはにわかには信じられないが……いずれにせよ従属魔法が効果を及ぼすためには、相手の同意がいる。
だから、麻耶さんが自分が従属魔法にかけられていることを知っているのはある意味で当然なのだが……。
だがそれにしては、麻耶さんの態度はあまり深刻そうな素振りではない。
俺が必ず解除の意思を示すと信用しているのだろうか。
ついで、麻耶さんは俺の顔をうかがうように見た後で、
「でも、術者があなたなら、当然解除もできるのでしょ。さ、さあ……解除しなさい」
と、言う。
麻耶さんに言われるまでもなく、俺はこの魔法の解除を既に試みていた。
だが、しかしやはりというか解除はできなかった。
俺は戸惑い、ただ首をひねるしかできなかった。
文献には確かに従属魔法は「解除ができない」と書かれていた。
だが、解除ができない魔法など原則的に存在しないはずだ。
隷属魔法は術者と非術者——魔法をかけられる者——双方の同意でその効果が発動している。
だから、双方の同意があれば解除は可能なはずだ。
術者である俺が、解除をしようとしている以上、解除ができない理由は一つしかない。
術をかけられているとうの本人である麻耶さんが解除を拒否しているということである。
それは今の麻耶さんの態度を考えればありえないように思えるが……。
麻耶さんは俺が怪訝な顔をしているのを見てとり、
「ど、どうしたの? 二見、解除するためになにか問題があるの?」
と、不安げな表情を浮かべている。
「いえ……少し考え事を……」
人の言葉と感情は一致しないということはよくあることではある。
言葉で、「大好きです」と言っていても心の底では「大嫌いです」と思っていることなどよくあることだ。
裏表がない人間などいないし、むしろそんな人間がいたら逆にかなり病的だろう。
だから、麻耶さんが俺に嘘をついていても何らおかしなことではないのだが……。
麻耶さんが心の底では隷属魔法を解除してほしくない……なんて思っていることがありえるのか。
人の心の内は本当のところではわからない……わからないのだが、それにしても奇妙である。
それとも、やはり文献に書かれているとおり、隷属魔法には「解除ができない」理由が別にあるのだろうか。
俺はてっきり術者が隷属魔法を自発的に解除することなどほとんど想定できないから、「解除ができない」と書かれているだけだと思っていたが……。
もしかしたら、隷属魔法には相手の心を縛る……隷属を望むようになる効果もあるのだろうか。
それなら、麻耶さんが拒否をしていることも説明がつくが……。
俺は考えあぐねて、少しうめき声を漏らして、顔を俯ける。
それにしても麻耶さんになんと説明すればいいのか。
しばらく俺はそんな風に首をひねっていたのだが、麻耶さんは俺のその態度を別のことと解釈したらしい。
「ふ、二見……な、何を考えているの……ま、まさか……魔法を解除するのを渋っているんじゃないんでしょうね!」
と、麻耶さんは詰め寄ってくる。
「い、いえ、そんなことはただ今すぐ解除ができないだけで——」
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