異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi

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第一章

束の間の遊戯-14-

 美月さんの足取りは慣れたもので、まるで何度も通い詰めている職場へ赴くような素振りである。

 

 まあ……美月さんは冒険者だから、ダンジョン関連の役所に行くのには慣れているのかもしれない。

 

 いやまてよ……俺も一応は冒険者だが、こんな官庁に来たことはまるでない。

 やはり美月さんはS級冒険者ということもあり、彼女が特別なだけか。

 

 現に冒険者と思われる者は周囲には全くいない。

 

 周りにはキッチリとビジネススーツを身にまとった男女が忙しそうに歩き回っている。

 

 俺はこういう様子を見るとどうにも肩身が狭くなってしまう。

 

 というのも、俺は無職……いや自由業のため、今もそうだが格好は常にラフな姿をしている。

 

 そのためか、こういったオフィス街では妙に浮いてしまう。

 

 いや実際のところオッサンの俺のことなど誰も気にしていないのだろうが、心理的にどうも負い目を感じてしまう。

 

 なんというか、いい年をして、働いていないのかと世間から責められているような感覚を抱いてしまう。

 

 忙しなく動く彼ら彼女たちに囲まれて、威風堂々と俺の前に立つ高層ビルはことさらにそうした俺の感情を刺激する。



 こういうところだけは未だに日本人としての感覚が抜けきれていないのか。

 

 いや異世界でも「働くもの食うべからず」という価値観が形を変えて存在していたからなのか……いずれにせよこの場は俺にとっては居心地が悪いのには変わりはない。

 

 ましてや俺はこれから自分が与えてしまった損害の弁明を彼ら彼女たちにしないといけない立場なのだから、余計に頭が痛くなるというものだ。



 そんな訳で、俺の足取りは重たかった。



 一方で、前を行く美月さんもまた俺とは違う意味で、この場の景色に溶け込んでいなかった。

 

 多くの男たち……いや女性も含めて、忙しなく歩いていたその足取りを緩めて、美月さんの方をチラチラと見ている。

 

 美月さんは有名人だが、普段の冒険者としての格好とは大分違うから、おそらく彼女のことを「流麗の剣姫」と気づいているものは少ないだろう。

 

 端に美月さんの美貌とその佇まいが醸し出す雰囲気からして、やはり目立ってしまっているだけだろう。

 

 美月さんは周りの視線に気づいていないのか、それとも日頃からそういう視線を向けられることに慣れきっているせいなのか、いずれにせよ特段の変化も見せずに颯爽とビルの中へと入っていく。

 

 俺も美月さんの後に続いてエントランスルームに入る。



 そこには受付とゲートがあり、ここの職員と思われる人々がIDカードのようなものをタッチし、ゲートを開けて、エレベータールームへと入っていた。

 

 美月さんは慣れた様子で、肩からかけているこぶりなバックからカードを取り出し、そのまま中へ入ろうとする。

 

 麻耶さんの秘書としての役割なのか、それともS級冒険者としてなのかは不明だが、やはり美月さんはここに何度も足を運んでいるのだろう。

 

 と、美月さんは何かに気づいたように、その足取りを止めて、俺の方を見る。



「そっか……今日は二見さんも一緒だから、入館手続きが必要なのか」

 

 と、独りつぶやくと、受付の方へと向かう。

 

 美月さんは何やら受付係の女性と話しをすると、女性は机の上にある固定電話でどこかに電話をしている。

 

 そして、美月さんは俺の方へと戻ってきて、



「ちょっと手続きに時間がかかるようなので、ここで待っていましょうか」

 

 と、そう言って俺の隣に立つ。

 

 俺と美月さんはエントランスルームの端っこの目立たない場所にいたのだが、どういう訳か先ほどよりも、人々の注目を集めているような気がする。

 

 考えてみれば、俺と美月さんはどうにもおかしな組み合わせである。

 

 20代のうら若き美女と40代のオッサン……しかもこれがスーツ姿だったらまだ上司、部下と見られていたかもしれないが、二人とも私服姿である。

 

 確かにこれではここにいる職員たちが俺等を訝しげに見るのも仕方がないのかもしれない。

 

 人から注目を浴びることが苦手な俺は早くどこかに移動したかったが、手続きに時間がかかっているのか、結局10分ほどそこで待ちぼうけを食う格好となった。

 

 と、不意にスーツ姿の男たち3、4人がエレベーターから飛び出して、受付の女性に詰め寄っている。

 

 年齢は20代から50代と幅があったが、いずれも慌てふためいているのには変わりはない。

 

 何があったのだろうと俺が不思議に思っていると、受付の女性が俺らの方を向き、ついでその男たちも血相を変えてこちらに駆け寄ってくる。
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