9 / 310
第1章 魔の森編
第7話-2 誤解してない?
しおりを挟むまあ、古い壁だし、ずっと放置だからね。ヒビの一つや二つ入るかも。
ん?
「誠に申し上げにくいのですが」
「どうした。言え」
「現在、修復を急がせておりますが、少なくとも三箇所は、オーククラスの体当たりを想定すると強度が不足しております」
「なるほど」
オークどころか、大型の魔物は近寄らせないけど、それは言ってないもんね。かと言って「ドラゴン型ドローンが守ってるから気にすんなよ」と言うわけにもいかないし。
どうしたものかと、顎に手を当てて考えていると、スミスの声が上ずった。どうやら、怒りの仕草と受け止めたっぽい。
「もうしわけありません。ご不興を買うのは承知しておりますが、何分、到着早々のため資材を用意するところから始めておりまして」
そりゃそうだよね。
「お怒りは、このスミスめにお与えください」
あ~ マルスの記憶にある「お仕置きファイアー」ってやつだ。戦闘力のある騎士なんかがミスをすると、容赦なく極小サイズで「ファイヤー」の魔法を尻に当てるんだよね。
だから、騎士達のパンツはたいてい、尻に焦げ目が付いて繕った跡があるんだ。
でも、壁が自然現象で劣化したことも、修理用の資材がないことも、さすがにこの人達の責任ではないからね。
「スミス」
「はいっ」
「現場に案内せよ」
「は、はい!」
青ざめた護衛隊長に案内されて、最初の現場に行った。なるほど、少しヒビが入っている。それにしても、表面的には微かだ。
「このレベルを良く見つけたな」
「はっ。厳重に確認させました」
むしろ、これを見つけたことを誉めたいよ。後でご褒美をあげなくちゃだ。
それはさておき、今はこっち。
「土魔法、ウォール!」
ホントは言葉を出す必要なんてないけど、魔力のない人の前だから演出が必要だもんね。
壁を薄らと黄色っぽく光らせて(演出です)ナノマシン達にヒビの部分を分子結合させるのに、何秒もかからない。ついでに周りの壁自体も補強しちゃおう。こっちは光らせなくても良いよね。
「魔法で壁を補修していただけるなんて。しかも土魔法。さすが若殿。火だけはなく土までも使いこなすのですか……」
「あぁ、この程度、大した話ではないぞ。メイド達が茶を持って来てくれるらしいからな。それまでにすませておこうか」
そこから二箇所の修理をして、オレは午後の紅茶を楽しんだんだ。
専属メイドのシアは、オレの部屋の片付けに専念しているから、お茶を持って来てくれたのは、さっきのメイドさんの一人だった。
テーブルに用意した後で、壁の側に行って背中を向けた。
「あの、先ほどのご無礼。私が打たれますので、お許しを」
スルスルとスカートを上げていく。
「ちょ、ちょっと待った! 何をする! 下ろして! スカート」
全く、オレがヘンタイ貴族みたいじゃん。
「あの、打擲をなさるのでは?」
「別に怒ってないし。それに、そんなお仕置きしないよ!」
「そ、そうなのですか。こ、これは大変失礼いたしました」
逃げるように出ていったよ。
そこに聞こえたのはシアの声。
「やれやれ」
え? と思って振り向くと、ちょっと不機嫌そうなシアだ。
おそらく、オレにも聞こえてるとは思ってない小さな声。
「油断も隙も無い。まったく、マルス様をユーワクだなんて」
えっと振り向いてシアと目があった。
「私に」
あ、これ、翻訳するとヤバいヤツだ。
「(スカートを上げたお尻が良いなら)私に(どうぞ鞭を振るってください)」
だから、そんなの趣味じゃないからね!
「普通の主人」までの道のりは遠そうだなぁ。
※ハイティー:貴族達が午後、ちょっとお腹が減ったところに楽しむ、お菓子とお茶。スコーンやケーキなど、ちょっと多めのおやつになります。この習慣は、貴族が「夜会」などで夕食を遅く食べることが多いからできたようです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
とりあえず、居心地を良くしないとですよね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
29
あなたにおすすめの小説
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい
えながゆうき
ファンタジー
停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。
どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。
だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。
もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。
後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる