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第2章 帝国学園 1年生編
第21話-1 摘発
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ふぅ~
何とも可愛らしい声を上げて、大きく息を吸う美少年。胸を押さえるチョッキが、あまり役に立ってない気がしてしまうが、ジッと見るのはもちろん御法度だ。
「こういう所初めてでs、んっ、初めてだぜ!」
「わりと雰囲気は良いだろ?」
「なんか空気が清々しい気がする……ぜ」
無理に「ぜ」を語尾に付けても、そもそも、可愛らしい少年の姿に全く似合わないのが微笑ましかった。
原作の設定だと「古くに作られた神殿や神社には人々の願いが少しずつ集まっていて、それが何十年も続くうちに、血筋ではないけどナノマシンが少しずつ反応するようになった」ということになってる。
だから、気のせいではなくて、本当に、この場所の空気は身体に良いんだよ。超微量ながら空気にヒール効果すらあるほどだ。
『でも、あの店は違うよね』
神社の中は参拝する人々も外の喧噪を一切持ちこまずに顔付きまでもが違って見える。それに、何も自分の子宝を願う人ばかりではなく、友人の、あるいは孫を願い、お礼参りに、と様々な人がいる。
奉納された幅五メートルもある絵馬を見ながら、おしゃべりし、子宝神社にありがちな石造りの巨大なご神体を拝見しながら、あれこれ……は言わずに、顔を赤らめて通過した。
二人の美少年は神社デートをゆったりと、心ゆくまで楽しんだのだ。
「さて、そろそろさっきのお店に戻ろうか」
「はい!」
もはや待ちきれないといった風情のサマンサは食い気味に答えた。
『ちょっと、キャラ変してないか? それじゃ、美少女に声をかけてるオッサンの役になっちまうぞ?』
マルスは、腹黒第二王女の設定はどうなっているんだよ、と密かに思ってしまう。これでは下心見え見えのマルス大好き少女……すなわちエリザベスとキャラが被ってしまうではないか。
『いや、むしろ、現実のエリザベスの方が抑え気味の反応だぞ』
少し考えた方が良いんだろうかと内心で首を捻るマルスである。
それはさておき、境内にいたのは小一時間ほどだったろう。
二人が鳥居をくぐって出る前に、建ち並ぶ店のあたりに騎馬姿が一ダースほど到着したのが見えた。他にも制服姿の男達が大量にいる。
「あら? あれは?」
来たか、と思ったマルスは「ゴメン」と謝った。
「え?」
「先に謝っておく。デートはここで中断になる。民のためだ。許してくれ」
「民のため? マルス様、一体何事を?」
到着したのは帝都の治安を守る警邏隊であった。隊長とおぼしき人物が下馬するとマルスの前にやってきた。
「君が担当者か? メディチ家の方はどこにいらっしゃる?」
「あぁ、それがオレだ。分かるか?」
パッとハンチングを脱ぐと、すぐに金髪がこぼれ出る。粗末な平民のジャケットを着ていても、その気品は光り輝くかのようだ。
実際、チカが気を利かせて、背後で金色の微発光もさせているのだが、それはマルスのせいではない。気付いたサマンサは目をパチクリしていたが、何も言わない。
「あ。あなた様は! メディチ家の、いえ、皇帝の騎士を賜ったマーウォルス様」
パッと片膝をつこうとするところを制止し「あの店で、出されている飲み物と食べ物を最初に押さえよ。厨房の人間も、その場で何も触らせるな。そして地下室を完全武装で探れ」と低い声で指示した。
隊長は緊張した面持ちで答える。
「何か、問題が?」
「あの店で出されている茶と饅頭のどちらか、あるいは両方に催淫性の薬物が使われている。魔物が出す麻薬のようなものだ。直ちに押さえよ。なあに、魔物を押さえてしまえば証拠は後からいくらでも出る。何だったら、客に出していた茶と饅頭を支配人に飲ませろ。すぐに吐くだろう」
驚愕しつつも、隊長はすぐに従った。
このあたりが貴族制の良い点である。多少、いや、かなりムチャでも、メディチ家の名前を出すとたいていのことは通ってしまう。平民の営む茶店の一軒や二軒、仮に公爵家の機嫌を損ねたと言う理由であっても、捜索するくらい簡単なことであった。
しかもマルスは「皇帝の騎士」の称号を賜っていて「魔物」と「麻薬」というパワーワード付きだ。
隊長の顔は緊張と、そして嬉しさで一杯になったのであった。
何とも可愛らしい声を上げて、大きく息を吸う美少年。胸を押さえるチョッキが、あまり役に立ってない気がしてしまうが、ジッと見るのはもちろん御法度だ。
「こういう所初めてでs、んっ、初めてだぜ!」
「わりと雰囲気は良いだろ?」
「なんか空気が清々しい気がする……ぜ」
無理に「ぜ」を語尾に付けても、そもそも、可愛らしい少年の姿に全く似合わないのが微笑ましかった。
原作の設定だと「古くに作られた神殿や神社には人々の願いが少しずつ集まっていて、それが何十年も続くうちに、血筋ではないけどナノマシンが少しずつ反応するようになった」ということになってる。
だから、気のせいではなくて、本当に、この場所の空気は身体に良いんだよ。超微量ながら空気にヒール効果すらあるほどだ。
『でも、あの店は違うよね』
神社の中は参拝する人々も外の喧噪を一切持ちこまずに顔付きまでもが違って見える。それに、何も自分の子宝を願う人ばかりではなく、友人の、あるいは孫を願い、お礼参りに、と様々な人がいる。
奉納された幅五メートルもある絵馬を見ながら、おしゃべりし、子宝神社にありがちな石造りの巨大なご神体を拝見しながら、あれこれ……は言わずに、顔を赤らめて通過した。
二人の美少年は神社デートをゆったりと、心ゆくまで楽しんだのだ。
「さて、そろそろさっきのお店に戻ろうか」
「はい!」
もはや待ちきれないといった風情のサマンサは食い気味に答えた。
『ちょっと、キャラ変してないか? それじゃ、美少女に声をかけてるオッサンの役になっちまうぞ?』
マルスは、腹黒第二王女の設定はどうなっているんだよ、と密かに思ってしまう。これでは下心見え見えのマルス大好き少女……すなわちエリザベスとキャラが被ってしまうではないか。
『いや、むしろ、現実のエリザベスの方が抑え気味の反応だぞ』
少し考えた方が良いんだろうかと内心で首を捻るマルスである。
それはさておき、境内にいたのは小一時間ほどだったろう。
二人が鳥居をくぐって出る前に、建ち並ぶ店のあたりに騎馬姿が一ダースほど到着したのが見えた。他にも制服姿の男達が大量にいる。
「あら? あれは?」
来たか、と思ったマルスは「ゴメン」と謝った。
「え?」
「先に謝っておく。デートはここで中断になる。民のためだ。許してくれ」
「民のため? マルス様、一体何事を?」
到着したのは帝都の治安を守る警邏隊であった。隊長とおぼしき人物が下馬するとマルスの前にやってきた。
「君が担当者か? メディチ家の方はどこにいらっしゃる?」
「あぁ、それがオレだ。分かるか?」
パッとハンチングを脱ぐと、すぐに金髪がこぼれ出る。粗末な平民のジャケットを着ていても、その気品は光り輝くかのようだ。
実際、チカが気を利かせて、背後で金色の微発光もさせているのだが、それはマルスのせいではない。気付いたサマンサは目をパチクリしていたが、何も言わない。
「あ。あなた様は! メディチ家の、いえ、皇帝の騎士を賜ったマーウォルス様」
パッと片膝をつこうとするところを制止し「あの店で、出されている飲み物と食べ物を最初に押さえよ。厨房の人間も、その場で何も触らせるな。そして地下室を完全武装で探れ」と低い声で指示した。
隊長は緊張した面持ちで答える。
「何か、問題が?」
「あの店で出されている茶と饅頭のどちらか、あるいは両方に催淫性の薬物が使われている。魔物が出す麻薬のようなものだ。直ちに押さえよ。なあに、魔物を押さえてしまえば証拠は後からいくらでも出る。何だったら、客に出していた茶と饅頭を支配人に飲ませろ。すぐに吐くだろう」
驚愕しつつも、隊長はすぐに従った。
このあたりが貴族制の良い点である。多少、いや、かなりムチャでも、メディチ家の名前を出すとたいていのことは通ってしまう。平民の営む茶店の一軒や二軒、仮に公爵家の機嫌を損ねたと言う理由であっても、捜索するくらい簡単なことであった。
しかもマルスは「皇帝の騎士」の称号を賜っていて「魔物」と「麻薬」というパワーワード付きだ。
隊長の顔は緊張と、そして嬉しさで一杯になったのであった。
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