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第2章 帝国学園 1年生編
第32話-1 初日の夜がやって来る
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部屋を抜け出すと、廊下には侍従が待ち構えていて立ち塞がった。
「若殿、どちらへ? 次の先生はもうお待ちですぞ」
「すまない。少々出かける」
「しかし、お館様より何も申し付けられておりませんので、それはなりませぬぞ」
「いや、なに、あ~ 事件が起きるんだよ。この間のは知っているだろう? オレが抜け出したからできたことだ。今回も、事件が起きるとオレの予感が告げている」
「そ、それは…… しかし、お館様は何もおっしゃっていませんぞ!」
「前回も事件の予感がして、ああなったんだ。今回も、きっと我が家にとって良いことが起きるんだ。な? 通してくれないか?」
例のインフェルノ事件での失敗以来、白眼視されがちだった家中の目だった。しかし、先日の「純喫茶・岡」事件で完全に元の信頼を取り戻している。
ガイウスが「頼む、見逃してくれ」と頼んでみせると明らかに侍従はひるんだ。
日常的に接してきた「穏やかで、気さくな良き主人」には、好意を持っているからだ。それは、このところ、努力を惜しまない生活で信頼を取り戻した結果でもあるのだろう。
「せめて、お館様のご許可を」
「今からだと間に合わないんだ」
スッと侍従の身体を避けて進めば、さすがに嫡男の身体に触れてまで止める事などできない。
横で、苦言を告げながら付いてきた侍従にガイウスは、もう一度「すまないな」と肩をポン。
「しかしですぞ。若殿にもしものことがあれば」
「安心しろ。このところずっと特訓を受け来たしな。たいていのことではやられないと思うぞ」
実際、メキメキと実力を付けている。ガイウスを担当している侍従だけに、そのことはちゃんと承知していた。
だから、侍従として「何が何でも」と無理やり引き留める気持ちになれないのも仕方ない。
厩に行けば「愛馬」がいるのが公爵家だ。馬番には鞍を付けさせてあった。
「若殿、お願いです。どうか、どうか、せめてお館様にひと言を」
無駄を承知で最後のお願いだ。この侍従は、普段そばにいるだけに、気さくな態度で接してくれるガイウスが大好きなのだ。
そのため、対応も腰が引けているのだ。
「問答無用。明日には戻る。そこをどいてくれ。怪我をするぞ」
慌てて飛び退く侍従を横目に、ガイウスは飛び出した。
後ろでは、騒ぎに気付いた家宰が慌てたように事情を聞いている。
「お館様に、大至急だ」とわめいている声が聞こえた。
しかしガイウスは、そんなことは気にしてられなかった。家庭教師に付きっきりにされ、空いている時間は特訓の日々に、さっきまですっかり忘れていたのだ。
このイベントを逃すわけにはいかない。
「若殿、どちらへ? 次の先生はもうお待ちですぞ」
「すまない。少々出かける」
「しかし、お館様より何も申し付けられておりませんので、それはなりませぬぞ」
「いや、なに、あ~ 事件が起きるんだよ。この間のは知っているだろう? オレが抜け出したからできたことだ。今回も、事件が起きるとオレの予感が告げている」
「そ、それは…… しかし、お館様は何もおっしゃっていませんぞ!」
「前回も事件の予感がして、ああなったんだ。今回も、きっと我が家にとって良いことが起きるんだ。な? 通してくれないか?」
例のインフェルノ事件での失敗以来、白眼視されがちだった家中の目だった。しかし、先日の「純喫茶・岡」事件で完全に元の信頼を取り戻している。
ガイウスが「頼む、見逃してくれ」と頼んでみせると明らかに侍従はひるんだ。
日常的に接してきた「穏やかで、気さくな良き主人」には、好意を持っているからだ。それは、このところ、努力を惜しまない生活で信頼を取り戻した結果でもあるのだろう。
「せめて、お館様のご許可を」
「今からだと間に合わないんだ」
スッと侍従の身体を避けて進めば、さすがに嫡男の身体に触れてまで止める事などできない。
横で、苦言を告げながら付いてきた侍従にガイウスは、もう一度「すまないな」と肩をポン。
「しかしですぞ。若殿にもしものことがあれば」
「安心しろ。このところずっと特訓を受け来たしな。たいていのことではやられないと思うぞ」
実際、メキメキと実力を付けている。ガイウスを担当している侍従だけに、そのことはちゃんと承知していた。
だから、侍従として「何が何でも」と無理やり引き留める気持ちになれないのも仕方ない。
厩に行けば「愛馬」がいるのが公爵家だ。馬番には鞍を付けさせてあった。
「若殿、お願いです。どうか、どうか、せめてお館様にひと言を」
無駄を承知で最後のお願いだ。この侍従は、普段そばにいるだけに、気さくな態度で接してくれるガイウスが大好きなのだ。
そのため、対応も腰が引けているのだ。
「問答無用。明日には戻る。そこをどいてくれ。怪我をするぞ」
慌てて飛び退く侍従を横目に、ガイウスは飛び出した。
後ろでは、騒ぎに気付いた家宰が慌てたように事情を聞いている。
「お館様に、大至急だ」とわめいている声が聞こえた。
しかしガイウスは、そんなことは気にしてられなかった。家庭教師に付きっきりにされ、空いている時間は特訓の日々に、さっきまですっかり忘れていたのだ。
このイベントを逃すわけにはいかない。
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