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第2章 帝国学園 1年生編
第58話-3 そして伝説になった
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確実に何かが起きていた。
「私が走りますが?」
男子が、先に探しに行くと言わんばかりだ。
「ならん。一般生徒が見ているぞ」
「あっ! 浅慮でした」
「ふんっ 付いてこい」
「「「はい!」」」
エリシアのチームが巡回する経路は覚えている。それを逆で辿ることにした。慌てふためいて走っても、こういう時はロスが大きいし「生徒会が走っている」という光景自体が、生徒に動揺を与えるからである。だからこそ走ってはいけないことを知っているのである。
仮面のトゲにチョコンと留まっていたチカが「微量の魔法を感知しております。水魔法です」と脳波通信。
ちなみに、今日のチカは、シアお手製の黒の縁取りをしたマスクと、首には黒い蝶ネクタイ型のリボンを付けてご満悦である。
「場所は?」
「2階、女子トイレです」
「ふむ」
正直微妙な場所だと思ったが、確かにエリシア達の巡回路ではある。
手がかりっぽいので行くしかない。
近づいただけで事態が分かった。水道の蛇口が割れて水が噴き出しているのだ。
「水よ、秘めた力を示せ。流れのごとく形を変え、我が意に沿え!」
エリシアの声である。
どうやら、噴き出した水をなんとかまとめようとして悪戦苦闘中らしい。そばには、ビショビショになった女子が3人ほどいた。
それを見た瞬間、噴き出す水をものともせずに、中に突入した。
同時に、チカを通じて「フローズン」を発動。
「と、とまったあ~」
誰かのホッとする声が響いた。
割れた蛇口から一メートルほど奥まで瞬間的に凍らせたのだ。凍らせた部分がこれだけ長ければ、立派な栓の役割を果たす。
自身も水を被りながら、懸命に水をまとめようとしていたエリシアは「ありがとう、マー君」と、ついつい、いつもの口調となってしまう。
「「「まーくん?」」」
「え? あの怖い仮面が、マー君?」
「「「マー君って、誰?」」」
呼び方のフレンドリーさが災いしたのか、マルスの「ま」と結びつけられる者がいなかったのである。
その時ふと、呟いた女子がいた。
「まーうぉるす様?」
全員から視線が集中した。
マルスは瞬間的に『やべっ、ここ女子トイレじゃん!』と、視線の意味を非難だと勘違いしたのである。
もちろん、周囲が見ていた理由は違う。
一瞬で水を止めた判断力と魔法のスゴさ、何よりも危機に際して真っ先に駆けつけて、あっと言う間に解決してくれた高位貴族に対しての感謝の視線だ。
そして良く見れば、何やら怖そうな仮装をしていることで、大注目してしまったわけだ。
マルスからしたら「女子トイレの中で視線を集めてしまう男子」と言う立場になるわけで、とてもでもではないが、いたたまれなくなるのは当然の結果であった。
「あ、えっと、お呼びでない? え~っと、月の灯りも出てないことないので、私は去るのである。わっはははは」
ついつい、さっきからの演出通りに、黒い霧を吹き出しながら窓から飛び出していくマルスである。
もちろん「人が空を飛ぶこと」を目の前で見た平民の女子達は大きな歓声をあげるに決まっている。
一斉に上がった大きな「キャー」という声は、外を歩いてきた者達の注目を集めるのに十分であったのだ。
・・・・・・・・・・
その日、帝国学園には新たな伝説が誕生したのである。
文化祭の日に、黒尽くめの男が女子トイレの窓から笑い声を上げながら空を飛んで逃げていく、というヘンタイ伝説であった。
なお、戻ってきた後のマルス本人はエリシア達から大いに誉められたのであった。
「私が走りますが?」
男子が、先に探しに行くと言わんばかりだ。
「ならん。一般生徒が見ているぞ」
「あっ! 浅慮でした」
「ふんっ 付いてこい」
「「「はい!」」」
エリシアのチームが巡回する経路は覚えている。それを逆で辿ることにした。慌てふためいて走っても、こういう時はロスが大きいし「生徒会が走っている」という光景自体が、生徒に動揺を与えるからである。だからこそ走ってはいけないことを知っているのである。
仮面のトゲにチョコンと留まっていたチカが「微量の魔法を感知しております。水魔法です」と脳波通信。
ちなみに、今日のチカは、シアお手製の黒の縁取りをしたマスクと、首には黒い蝶ネクタイ型のリボンを付けてご満悦である。
「場所は?」
「2階、女子トイレです」
「ふむ」
正直微妙な場所だと思ったが、確かにエリシア達の巡回路ではある。
手がかりっぽいので行くしかない。
近づいただけで事態が分かった。水道の蛇口が割れて水が噴き出しているのだ。
「水よ、秘めた力を示せ。流れのごとく形を変え、我が意に沿え!」
エリシアの声である。
どうやら、噴き出した水をなんとかまとめようとして悪戦苦闘中らしい。そばには、ビショビショになった女子が3人ほどいた。
それを見た瞬間、噴き出す水をものともせずに、中に突入した。
同時に、チカを通じて「フローズン」を発動。
「と、とまったあ~」
誰かのホッとする声が響いた。
割れた蛇口から一メートルほど奥まで瞬間的に凍らせたのだ。凍らせた部分がこれだけ長ければ、立派な栓の役割を果たす。
自身も水を被りながら、懸命に水をまとめようとしていたエリシアは「ありがとう、マー君」と、ついつい、いつもの口調となってしまう。
「「「まーくん?」」」
「え? あの怖い仮面が、マー君?」
「「「マー君って、誰?」」」
呼び方のフレンドリーさが災いしたのか、マルスの「ま」と結びつけられる者がいなかったのである。
その時ふと、呟いた女子がいた。
「まーうぉるす様?」
全員から視線が集中した。
マルスは瞬間的に『やべっ、ここ女子トイレじゃん!』と、視線の意味を非難だと勘違いしたのである。
もちろん、周囲が見ていた理由は違う。
一瞬で水を止めた判断力と魔法のスゴさ、何よりも危機に際して真っ先に駆けつけて、あっと言う間に解決してくれた高位貴族に対しての感謝の視線だ。
そして良く見れば、何やら怖そうな仮装をしていることで、大注目してしまったわけだ。
マルスからしたら「女子トイレの中で視線を集めてしまう男子」と言う立場になるわけで、とてもでもではないが、いたたまれなくなるのは当然の結果であった。
「あ、えっと、お呼びでない? え~っと、月の灯りも出てないことないので、私は去るのである。わっはははは」
ついつい、さっきからの演出通りに、黒い霧を吹き出しながら窓から飛び出していくマルスである。
もちろん「人が空を飛ぶこと」を目の前で見た平民の女子達は大きな歓声をあげるに決まっている。
一斉に上がった大きな「キャー」という声は、外を歩いてきた者達の注目を集めるのに十分であったのだ。
・・・・・・・・・・
その日、帝国学園には新たな伝説が誕生したのである。
文化祭の日に、黒尽くめの男が女子トイレの窓から笑い声を上げながら空を飛んで逃げていく、というヘンタイ伝説であった。
なお、戻ってきた後のマルス本人はエリシア達から大いに誉められたのであった。
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