原作を書いたオレはラスボスになるのを全力で拒否してモフモフ達とのんびりします!

新川 さとし

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第3章 帝国学園 2年生編

第83話-3 追い詰められた

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 ガイウスは焦った。これはマジでヤバい。

「交代させようとする時期って分かる?」
「私には少しも。ただ」
「ただ?」
「我が家でも、メディチ家が嫡男交代を公にするなら最適な時期の推測はいたしました。帝国最強の武家に対して、辺境伯領とはよしみを通じるべきですので」

 要するに「嫡男が交代したお祝いを持っていくために予測した」ということ。

 しかも、予測した時期は「ドラゴンを吉兆とした祭に合わせて」ということ。もう2ヶ月もない。

 何重にもショックを受けたガイウスである。

 特に「シュールレアちゃんの家」の対応には驚くしか無い。自分が嫡男の立場を失い、もちろんシュールレアとは結婚できなくなると言うのに、お祝いを用意するのだという。

「高位貴族にとって婚姻は政治でございます。私の気持ちなど、誰も考えてくださらないのです」

 その時、つい先ほど渡した真珠のような涙をこぼすシュールレアを見て、別のショックを受けたガイア。

『そっか。やっぱりシュールレアちゃんはオレのことがホントは好きなんだ』

 そこで「私は、心の内を他人に明かしてはならないと育てられて参りました」とガイウスの袖口をそっと掴んで、そのまま、くくぅ~と悲痛な声を抑えかねたように漏らしたシュールレアである。
 
「私にできることは、せめてガイウス様がお立場をお考えになれるようにという賢しらなことしかできない愚かな女なのでございます」

 その言葉を聞いてようやくガイウスは気が付いたのだ。
 
「辺境伯領の政略結婚を考えると、オレが嫡男じゃ無いとダメだってことを言いたかったのか。だから、どうにかしろとシュールレアちゃんは言いたいに違いない』

 実は、この時の会話は魔道具によって全て録音されていた。聞き返したとしても、シュールレアは一切何も言ってないのである。

 かなり意図的に「言葉の裏」を読んだとしても、恋しい相手に対して何とか自分と結婚できるように方法を考えろ、というセリフにしか聞こえない。政略結婚を迫られる娘に思い人がいれば、この程度のセリフはあり得るであろうという言葉の数々だ。

 古来、女の涙が歴史を変えてきたと言われる。

 真珠の涙三粒で、ガイウスが「嫡男を交代させてはならない」というどす黒い決意をさせた午後のことであった。

 ともあれ、動機はなんであったとしてもガイウスが非常な決断をして家に帰ったのは確かである。

 そして、どす黒い決意の持って行き場を考える前に、やってきたのはガイア商会の番頭であった。

「先日のドラゴン騒動のため、今月は商品の搬入が全くなくなる見込みです」
「え? どういうこと?」
「現在の在庫を売ってしまえば、売りものはなく、少ない売り上げも、今までに仕入れた分の支払いに充てられますので、基本的に手持ち資金がわずかになってしまいます」
「そうか。仕方ない。ドラゴン騒動も少ししたら落ち着くだろう」

 落ち着かせるのがマルスであることは面白くないが、ともかく、金がなくなるのは困る。

 しかし、番頭は何か言いたげである。

「言って見ろ」
「恐れ入ります。先日のガイウス様がご購入になられた調度品の支払い期日が迫っておりまして」
「なんだと? そんなモノ商会の手持ち資き…… あっ、ないんだったな」

 番頭は、申し訳なさそうな顔で「万策尽きてまして、残る手は二つです」と静かに告げたのであった。


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