251 / 310
第3章 帝国学園 2年生編
第83話-3 追い詰められた
しおりを挟む
ガイウスは焦った。これはマジでヤバい。
「交代させようとする時期って分かる?」
「私には少しも。ただ」
「ただ?」
「我が家でも、メディチ家が嫡男交代を公にするなら最適な時期の推測はいたしました。帝国最強の武家に対して、辺境伯領とはよしみを通じるべきですので」
要するに「嫡男が交代したお祝いを持っていくために予測した」ということ。
しかも、予測した時期は「ドラゴンを吉兆とした祭に合わせて」ということ。もう2ヶ月もない。
何重にもショックを受けたガイウスである。
特に「シュールレアちゃんの家」の対応には驚くしか無い。自分が嫡男の立場を失い、もちろんシュールレアとは結婚できなくなると言うのに、お祝いを用意するのだという。
「高位貴族にとって婚姻は政治でございます。私の気持ちなど、誰も考えてくださらないのです」
その時、つい先ほど渡した真珠のような涙をこぼすシュールレアを見て、別のショックを受けたガイア。
『そっか。やっぱりシュールレアちゃんはオレのことがホントは好きなんだ』
そこで「私は、心の内を他人に明かしてはならないと育てられて参りました」とガイウスの袖口をそっと掴んで、そのまま、くくぅ~と悲痛な声を抑えかねたように漏らしたシュールレアである。
「私にできることは、せめてガイウス様がお立場をお考えになれるようにという賢しらなことしかできない愚かな女なのでございます」
その言葉を聞いてようやくガイウスは気が付いたのだ。
「辺境伯領の政略結婚を考えると、オレが嫡男じゃ無いとダメだってことを言いたかったのか。だから、どうにかしろとシュールレアちゃんは言いたいに違いない』
実は、この時の会話は魔道具によって全て録音されていた。聞き返したとしても、シュールレアは一切何も言ってないのである。
かなり意図的に「言葉の裏」を読んだとしても、恋しい相手に対して何とか自分と結婚できるように方法を考えろ、というセリフにしか聞こえない。政略結婚を迫られる娘に思い人がいれば、この程度のセリフはあり得るであろうという言葉の数々だ。
古来、女の涙が歴史を変えてきたと言われる。
真珠の涙三粒で、ガイウスが「嫡男を交代させてはならない」というどす黒い決意をさせた午後のことであった。
ともあれ、動機はなんであったとしてもガイウスが非常な決断をして家に帰ったのは確かである。
そして、どす黒い決意の持って行き場を考える前に、やってきたのはガイア商会の番頭であった。
「先日のドラゴン騒動のため、今月は商品の搬入が全くなくなる見込みです」
「え? どういうこと?」
「現在の在庫を売ってしまえば、売りものはなく、少ない売り上げも、今までに仕入れた分の支払いに充てられますので、基本的に手持ち資金がわずかになってしまいます」
「そうか。仕方ない。ドラゴン騒動も少ししたら落ち着くだろう」
落ち着かせるのがマルスであることは面白くないが、ともかく、金がなくなるのは困る。
しかし、番頭は何か言いたげである。
「言って見ろ」
「恐れ入ります。先日のガイウス様がご購入になられた調度品の支払い期日が迫っておりまして」
「なんだと? そんなモノ商会の手持ち資き…… あっ、ないんだったな」
番頭は、申し訳なさそうな顔で「万策尽きてまして、残る手は二つです」と静かに告げたのであった。
「交代させようとする時期って分かる?」
「私には少しも。ただ」
「ただ?」
「我が家でも、メディチ家が嫡男交代を公にするなら最適な時期の推測はいたしました。帝国最強の武家に対して、辺境伯領とはよしみを通じるべきですので」
要するに「嫡男が交代したお祝いを持っていくために予測した」ということ。
しかも、予測した時期は「ドラゴンを吉兆とした祭に合わせて」ということ。もう2ヶ月もない。
何重にもショックを受けたガイウスである。
特に「シュールレアちゃんの家」の対応には驚くしか無い。自分が嫡男の立場を失い、もちろんシュールレアとは結婚できなくなると言うのに、お祝いを用意するのだという。
「高位貴族にとって婚姻は政治でございます。私の気持ちなど、誰も考えてくださらないのです」
その時、つい先ほど渡した真珠のような涙をこぼすシュールレアを見て、別のショックを受けたガイア。
『そっか。やっぱりシュールレアちゃんはオレのことがホントは好きなんだ』
そこで「私は、心の内を他人に明かしてはならないと育てられて参りました」とガイウスの袖口をそっと掴んで、そのまま、くくぅ~と悲痛な声を抑えかねたように漏らしたシュールレアである。
「私にできることは、せめてガイウス様がお立場をお考えになれるようにという賢しらなことしかできない愚かな女なのでございます」
その言葉を聞いてようやくガイウスは気が付いたのだ。
「辺境伯領の政略結婚を考えると、オレが嫡男じゃ無いとダメだってことを言いたかったのか。だから、どうにかしろとシュールレアちゃんは言いたいに違いない』
実は、この時の会話は魔道具によって全て録音されていた。聞き返したとしても、シュールレアは一切何も言ってないのである。
かなり意図的に「言葉の裏」を読んだとしても、恋しい相手に対して何とか自分と結婚できるように方法を考えろ、というセリフにしか聞こえない。政略結婚を迫られる娘に思い人がいれば、この程度のセリフはあり得るであろうという言葉の数々だ。
古来、女の涙が歴史を変えてきたと言われる。
真珠の涙三粒で、ガイウスが「嫡男を交代させてはならない」というどす黒い決意をさせた午後のことであった。
ともあれ、動機はなんであったとしてもガイウスが非常な決断をして家に帰ったのは確かである。
そして、どす黒い決意の持って行き場を考える前に、やってきたのはガイア商会の番頭であった。
「先日のドラゴン騒動のため、今月は商品の搬入が全くなくなる見込みです」
「え? どういうこと?」
「現在の在庫を売ってしまえば、売りものはなく、少ない売り上げも、今までに仕入れた分の支払いに充てられますので、基本的に手持ち資金がわずかになってしまいます」
「そうか。仕方ない。ドラゴン騒動も少ししたら落ち着くだろう」
落ち着かせるのがマルスであることは面白くないが、ともかく、金がなくなるのは困る。
しかし、番頭は何か言いたげである。
「言って見ろ」
「恐れ入ります。先日のガイウス様がご購入になられた調度品の支払い期日が迫っておりまして」
「なんだと? そんなモノ商会の手持ち資き…… あっ、ないんだったな」
番頭は、申し訳なさそうな顔で「万策尽きてまして、残る手は二つです」と静かに告げたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~
うみ
ファンタジー
馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。
錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。
スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。
冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。
俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。
ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。
居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。
爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!
一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。
でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。
そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる