辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
137 / 141

第42話 自縛  ~天音~ 4

しおりを挟む
 悪い子だ。また汚れちゃったんだ。

 怖い。

 私はどんどん汚れていく。

 瞬とだったら、どんなことをされても、きっとステキな思い出になる。宝物だ。

 たとえ、瞬にとっては、トイレに出すようなつもりでいたとしても、私は瞬を気持ち良くしてあげられたんだって、嬉しくなれた。

 でも、もう無理なんだね。やっぱり汚れた女は瞬にふさわしくない。

 せめて瞬が欲望を吐き出す場所にしてくれたままなら、それでも良かった。何をされてもホントに嬉しいんだもん。ほんの少しでも喜んでもらえるなら、やり捨ての女でいいんだもん。

 こんなにバッチイ私にだって、ホンの少しだけでも幸せが欲しくなるときがある。瞬に気持ち良くなってもらえるなら、それでけでも幸せで居られたんだよ?
 
 最初はそれで上手くいくと思った。でも、だんだんと、それすらしてもらえなくなった。

 バッチイもんね。私なんかじゃ、嫌だよね?

 もう、世界は無意味。色も味もニオイもなくなった。ただ、何かが動いて、誰かが勝手に欲望を満たそうとするだけのこと。
 
 どうにもならない世界に生きてる、どうにもならないほどひどい女があたしだ。

 考えてみれば献血しようとする健を止めたのだって、本気じゃなかったかもしれない。

 パパから「健は、お前のお兄ちゃんなんだぞ。だからヤルなよ」と教えられていた。献血をすれば血液型がわかってしまう。

 私達の母親はO型だ。それは知ってた。健のパパはA型なのも。

 子どもの頃「オレが親父と似てないのは母さんの血を引いたんだ」と言ってたのを覚えてる。

 健は血液型を調べてはいけないんだって、それは直感したこと。いろいろあっても、やっぱりその部分では考えてしまう。それなのに、心の中で「血液型で出る確率は半分だから」って言い訳もしてる私がいた。

 極めつけは真実を知ってしまった健が飛び出したのを本気で追わなかったこと。脚を故障している健だ。その気になれば簡単に追いつけた。それなのに私は途中で追いかけなかった。

 健のことより「これだけショックを受けたら、今日は監視されないかも」って、瞬の帰りをこっそり見に行くことしか考えられなかった。
 
 ひどい女だ、私。

 でも、悪い子には、ちゃんと罰がある。

 それは子どもの頃からパパに言われてきたことだ。

 ホントだった。

 だって、駅に向かう道を歩いてきた瞬の横には、ちゃんと歩調を合わせて歩いてくれる、可愛いらしい子がいたんだもん。

 まぶしいほどの光の中を歩いていた陽菜ちゃんは「好きな人の横を歩く幸せで、可愛い彼女」の顔をしてた。純粋な好意だけが見えてたよ。

 陽菜ちゃんは瞬を照らしてくれる光、そのものだ。楽しそうな二人の笑顔。

 泣いちゃダメだよね。喜ばなきゃだよね。

 だって、好きな人が、あんなに素敵な笑顔を見せているんだもん。



 良かったね。



 しゅん

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...