死んでる場合じゃない 〜小学生とエリートスパイとの奇妙な共同作戦〜

ぱるゆう

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出会い

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小学校からの下校中、知らない大人の男から声をかけられた。
「すいません。私は総務省の肉体有効利用促進課の者です」と身分証明らしき物を僕に見せた。

「本物ですか?」僕は、すぐに走り出せるように、重心を少し低くした。

「えぇ。まぁ、知らない人と話すな、と教えられてきた皆さんには仕方のないことですが、ご両親には事前に了承を得ています」と言いながら、ある紙を出した。そこ
 確かに、画像は両親のものだったが、
「これが本物かどうか分かりません」

「いいですね。ちゃんと教わったことを理解できている。まぁ、今日は顔を見せたかっただけです。これを」と男の人は名刺というのか、白い小さな紙を出した。

 確かに、総務省と書かれていた。

「はるなつふゆさん?」

「それは、アキナシと読みます」

「アキナシ?秋は書いてないけど」

「そう。春夏冬だけで秋がないから、アキナシなんです。人の名字で遊ぶなって話ですけど、空にある月という漢字に見るという漢字と里という漢字を合わせた名字を見たことがありませんか?」

「月に見るに里?ツキミサトさん?」

「いえ、月が見えるということは、高い山がない。だから、ヤマナシという名字なんです」

「へぇ~、ヤマナシだから、月が見えるんだ」僕は緊張が解けて、感心した。

「イチイチ説明しなくていい、普通の名字が良かったと、小さい頃から思ってます」

「ちょっと待ってください。下の名前は?」

「アキですよ。見たまんま、四季の秋の漢字です。本当にフザケた親ですよ」

「アキナシ アキさん」

「そうです。星野青龍《ホシノセイリュウ》さん」

 僕の名前、青龍。その文字の通り、中国の天之四霊《テンノシレイ》の一つの青龍から、名付けたそうだ。

本当に意味がわからない。
お前達の子供だぞ!青龍という名前が相応しい子供なんて産まれてくる訳がないだろ!これまでも何度も心の中で叫んだ。

「どうしたのですか?」春夏冬さんは不思議そうな顔をした。

「いえ、何でもないです。それで、僕に何の用ですか?」

「あぁ、肝心なことを忘れていました。あなた自殺しようとしてませんか?」春夏冬さんは無表情で言った。

「えっ?」僕は聞き間違いかと思った。

「自殺、考えてませんか?」春夏冬さんは繰り返した。

何なんだ?もしかして、自殺を止めようとしに来たのか?

「もしそうだったら?」

「もしそうなら、お手伝いしようかと思いまして」春夏冬さんは変わらず無表情のまま言った。

「手伝い!」僕は目を見開いた。
「こういう場合、止めようとするんじゃないんですか!」

「う~ん、残念ながら、それは私の仕事ではありません。実際、止めようとしたら嬉しいですか?」

どうだろう?何も知らないくせにって思うのだろうか?と僕は思った。

「君には明るい未来が待っているって言って欲しいですか?」

あぁ、そういう事言うんだろうな、と思った。

「どうですか?明るい未来、想像できそうですか?」

「いや、それはないかな」僕は言った。

「あら?けっこうあっさりと言いますね。私がこの話をすると、逆に意地になる人も結構いるんですよ。そんなこと言われたくないとか、余計なお世話だとか」

「へぇ~、そうなんですね。それより、僕が自殺したとして、春夏冬さんに何の得があるんですか?自殺を止めて、いい気分になるのとは逆なんですよね?」

「あらら?随分とひねくれてますね。自殺を止めた人は、自分のためにやっていると?」

「他に何がありますか?そんなことはいいんですよ。春夏冬さんは、何をするんですか?」

「あぁ、失礼しました。話を逸らせてしまいましたね。話が長くなりそうなので、座りませんが?」とすぐそばの公園のベンチを指さした。

「本当は何処かの店に入ってもいいのですが、誘拐だと思われても面倒なので」

「家来ますか?もう知ってるんですよね?」

「えぇ、ご両親と話しましたので。でも、いいんですか?怪しい人を入れても?」

「いいですよ。金目のものなんて何もないですから」




僕は春夏冬さんと家に入った。

「ペットボトルですけど、コーヒーかお茶、どっちがいいですか?」

「じゃあ、コーヒーをいただきます」

テーブルにコーヒーの入ったコップを2つ置いた。

「随分とちゃんとしてるのに、自殺なんて勿体ない」

「また話が逸れるから、止めましよう。それで、春夏冬さんの仕事は、何なんですか?」

「私の仕事は、魂が無くなった肉体を回収することです」

「あっ!聞いたことある。死体で解剖する練習をやるんですよね?死体と写真を撮って叩かれた医者のニュースを見ました」

「あぁ、そんなことありましたね。でも、私が回収した肉体は違う目的に使われます」

「まさか食用とか?」

「そこまで日本では食糧難になってませんよ。それなら、自殺した肉体に拘る必要はありません。交通事故でも良くなります」

「でも、自殺って、飛び降りとか、首吊りとかって多いんじゃ?」

「私の仕事は、できるだけ肉体に傷を付けずに回収することなんです。だから、飛び降りとかは一番困ります。先ほど手伝うと言ったのは、自殺する手段についてのことです」

「例えば?」

「一番は薬物ですね。睡眠薬なんか特にいいですね」

「それを準備してくれるってこと?」

「いやぁ~、そうできればいいんですが、自殺幇助という罪もありまして、直接は何もできないんです。あくまでも、飛び降りとかは止めてくださいとお願いするだけなんです」

「全然手伝ってないじゃん」

「知識を与えるって所でしょうか?」

「あっ!でも両親に話って、何をしたの?」

「あら?けっこう賢いですね。何で自殺なんて考えてるんですか?」

「人とコミュニケーションが取れないんです。背も低いし、運動神経も悪いし、勉強もそこまでいい訳じゃないし。それこそ春夏冬さんが言った明るい未来が見えないんです」

「明るい未来なんて、ごく一部の人しか見れないですよ。ほとんどの人がなんとなく生きてるんです」

「それって生きてる意味ありますか?」

「随分と哲学的なことを言うんですね?」

「あぁ、また話が逸れてますよ!」

「申し訳ありません」と春夏冬さんは頭を下げてから言った。
「青龍さんと話してるのが楽しくて、つい」

「大人なのに、こんなガキの話をまともに聞くんですか?」

「話に大人もガキもありませんよ。大人なのに、それこそガキみたいなことを言っている人もたくさんいます。あぁ、また話が逸れそうですね」

「ハッハッハッ、そうですね」
僕は笑った。

「私達が回収した肉体には、新しい魂が入れられます」

「えっ!」僕は目を見開いた。
「そんなこと聞いたことない!」

「まぁ、そうですね。ごく一部の人間しか知りませんから」

「本当に総務省の人なの?変な宗教の人とか?」

「宗教は、私が一番嫌いなものです。全ての宗教は人を操る戯言です」春夏冬さんの顔が初めて無表情から、ムッとした顔になった。

「ごめんなさい」

「いえいえ、謝る必要なんてありません。あなたには関係ない私の個人的な考えですから」

「でも、そんなこと本当にできるの?」

「えぇ。信じられないと思いますが。簡単に言うと、人間の脳や神経は、微弱な電気信号を使っているのは、知っていますか?」

「あぁ、義手や義足なんかを動かすことができるようになるかもって、ネットの記事で読んだことあります」

「あぁ良かった。実はもう実用化されてるんです」

「えぇっ!」

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